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「逆行 太宰治」【5/29執筆】

↑青空文庫なので0円で読めます、オススメ


太宰治の「逆行」を読んだ。タイトルが謎である。

「逆行」とは、ものの順序や流れにさからう方向に進むこと。なるほど、この小説は四遍が逆行して進むのではないか。仮説を立てて読み進めた。

蝶蝶は死ぬ間際、盗賊は大学時代、決闘は高校時代、くろんぼは少年時代、時代が逆行しているのだろうか。

だがしかし、ここでまた疑問が浮かび上がる。「逆行」は、四遍を繋げて読むのか、別々に読むのか。四遍に明確な関連性が認められず、盗賊は帝国大学新聞に、そのほか三編は文藝にしたためられたものらしい。

どうやら、別々に読むのかもしれない。すると、タイトルの「逆行」は何を意味するのか。

とすると、四遍が逆行して進んでいるのではなく、四遍全てが人生や世間に逆行して生きているという示唆だろうか。

またもや太宰治と切り離す作業が必要になる解釈だが、四遍全ての主人公は、周囲への反発から、自らの内に虚無感を抱いており、これが共通のテーマであるように思える。

だから、「逆行」なのか。

どちらにしても、疑問はすっきり解消されていない。

なんとなくこちらまで読後の虚無感が残る、そんな作品であった。


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