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「女生徒 太宰治」 【5/12執筆】

↑青空文庫なので0円で読めます、オススメ


弱冠14歳の女生徒が、起床から就寝までに過ごしたありふれた日常のわずか1日を、丁寧に叙述している点に心惹かれる。

また、太宰治の女性の心理描写の巧さに驚きながら、女生徒が1日で経験する出来事に対する喜怒哀楽の心の変化に、こちらも心を動かされる。

そして、女生徒は、時折「自己嫌悪」に陥る。電車で見かけたおばさんに対する嫌悪感、来客のご機嫌を取る母に対する嫌気を抱かずにはいられないが、自らも同じ女性であること、また母と同じことをしてしまう自分の弱さに気付き、「自己嫌悪」を抱く。

こういった、ごくありふれた日常の中で、ましてや1日という短い期間の中で、女生徒が「自己嫌悪」を抱いてしまうことに、私は強く共感する。

太宰治の作品は、太宰治自身と切っても切り離せない関係にあると考えてきたし、なによりそういった読み方が「正解」であると信じ込んできた。その読み方から見える太宰治の幻想が、私の心の拠り所にすらなっている節がある。

だからこそ、主観から離れ、客観的かつ冷徹に「物語」を分析できるようになりたいと考え、執筆を決意した。

余談だが、「女生徒」を読み始めた契機は、川端康成から認められたというエピソードを知ったからである。ここでは、出来る限り先入観を取り除くため、あえて「人間失格」や「斜陽」を取り上げなかった。

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