これからのこの世界で私がやりたいこと──「すべての人の存在意義が最大化された社会」を目指して #3|鮎澤直希
POOLOの卒業制作第3弾です。
テーマは、#これからのこの世界で私がやりたいこと。これまで3回にわたって記事を公開してきました。今回はついに後半戦です。
▼卒業制作あらすじ
#0【生い立ち】
#1【ビジョン】理想の社会とか問題意識
#2【ミッション】自分の実体験・果たしたい役割
#3【課題特定と仮説】自分が変えたいものは何か?
#4【ソリューション】私はこれから何をするのか#5【私のロードマップ】これからのこの世界で自分がやりたいこと
#1、#2と、自分の理想とする社会や問題意識に焦点を当てて、「抽象的な理想論」「ワクワクする瞬間」「なんとかしたい」みたいな想いを書いてきたつもりです。
そして、今回は、「何を変えるべきなのか?」と題して、自分がアプローチすべき課題の特定と、仮説の紹介。
抽象的かもしれません。でも、めちゃくちゃ重要な話だと思っています。ここを考えないと、自分何したらいいか見えてこないなと思っています。それほど、この課題について伝えたいので、多少読みづらくなろうとも、やります。
# 3 何を変えるべきなのか?
さて今回は、これから自分がアプローチする課題の対象を具体的に絞り込んでいきたいと思います。
「日本人て、意識低くない?なんで?」
的な問題です。多分、#1を読んでないと前提がわからないかも。
(#2は飛ばしてもいけるかと思いますが)
# 3-1 なぜ「存在意義」を損失するのか?
#1でも述べたように、経済的格差は大きな問題にならなくなった世界においておそらく問題になると思うのは「存在意義の喪失」です。
※ここでは「存在価値」や「可能性」も同義としたいと思います。
その原因は、以下二つによって起こるのではと思っています。
1) 偏見による排除(自己中心的な思考・言動・行動)
2) 個人の価値観の確立・実践の不足
そして、この2つは相互に連動し、悪循環を生み出している。
存在意義は「自己」と「他者」の二軸によって形成されるはずです。
自分で自分の存在意義を認識しており、かつ他者からも存在意義が評価されている状態。
また、実際に意義のある存在であることと、その意義を認識できる/されることの二軸も重要です。
簡単に言えば「自己実現が達成された人」を増やし、そうした人々が他者や社会に働きかける中で、同じような人がどんどん増えていくということです。
※詳しくは#1、#2に記載
データによる裏付けではないですが、前提となっている考え方がいくつかあるので、貼っておきます。
参考理論:
(a) Leadership skills – the missing piece for youth employment?
(b) マズローの欲求段階説は、実は5段階ではなく6段階まである – それは「奉仕」の実践
(c) 成人発達理論とは
こうした話は個人単位で見ると「リーダーシップ」をどう磨くかという話でもあり、アイセック(学生団体)時代に常々考えてきたことでもあります。※参考理論(a)を参照:リーダーシップを構成する4つの要素について
また、成人発達理論における「水平的成長」と「垂直的成長」の相互作用であり、
マズローの欲求段階説における自己実現欲求の社会的な循環(自己超越欲求の発生)などにも関連します。
▲参考理論(b)『マズローの欲求段階説は、実は5段階ではなく6段階まである – それは「奉仕」の実践』
僕がやりたいのは、こうした「社会に対するリーダーシップ」が連鎖的に発生していない今の状況を変えたいということです。
その上で、こうした理論などを参考にして考えると、
1) そもそも自分(やその帰属する社会)のことしか見えていなくて、もっと広い範囲の他者や社会に対する当事者意識を持てないのでは?
→要因1:他者に対する偏見(当事者意識の不足)
2) 自己を肯定できる(他者から認められ、自己実現していく)プロセスを踏んでいないのでは?
→要因2:個人の価値観や能力確立の不足
※この2つは相互に連動し、悪循環を生み出している。
という問題があるのではないかという仮説に至りました。
これまでも少し触れたように、これは世の中の問題の根源なのでは?と思っていて、僕はこうした人間の意識構造の変化にアプローチしてみたいな、と思っているわけです。
<補足(蛇足?)>
このnoteをリリースする直前に出会った本が、全く同じ問題意識をベースに、興味深い内容が書かれていたので、シェアします。(専門的×終章のため意味不明だと思いますが)
「問題の発生を完全に防止することを可能にするのは我々人間が自己の存在価値確保への欲望を超越することである。」
「存在価値の確保に苦しんでいない人々は、存在価値に依る存在構成とは何かという問題を距離を置いて考え直し、存在理由に生きることで存在価値を超越する道に踏み出せる可能性はある。存在価値への執着を超越し、存在理由に生きる人々が増加すれば、その人達が存在価値の席を他者に譲ることになるから、存在価値の確保に苦しむ人々は自己の存在価値の確保が容易になり、彼らの苦悩は減少する。そして、存在価値の確保に苦しまなくなった彼らが更に存在価値を超越すれば、社会問題や争いは減少し、世界は変わるであろう。」
—『存在価値の論理』鎌田秀雄著
https://a.co/8qLpeif
# 3-2 「日本の若者」の現在
僕がまずアプローチすべき対象は、日本の学童期・青年期の世代(特に10代)だと思っています。
まず、若年層(10~20代)は、これからの未来を創り担っていく世代であり、人間の価値観が形成される時期だと思います。
特にエリクソンの発達段階における学童期(5-12歳)と青年期(12-18歳)がカギではないかと思っています。知識やスキルは後付けできますが、基本的な考え方や物事・他者への向き合い方は、この時期に形成されるでしょう。
空間的な範囲としては、理想は世界中です。でも、もう少し絞らないと現実的な施作には移行できないと思い「とりあえず日本」にしました。
※背景は割と単純で、①個人的な背景、②アプローチのしやすさ、③スケールのしやすさ、の最大公約数です。
そこで、「日本の若者の主観的存在意義」に関する質的調査ですが、非常に興味深い統計データが見つかりました。
▼ 日本を含めた7カ国の満13~29歳の若者を対象とした意識調査(内閣府)
諸外国の若者と比較して、
1) 自己を肯定的に捉えている者の割合が低い。
2) うまくいくかわからないことに対し意欲的に取り組むという意識が低く,つまらない,やる気が出ないと感じる若者が多い。
3) 悲しい,ゆううつだと感じている者の割合が高い。
4) 同程度かそれ以上に,規範意識を持っている。
5) 社会問題への関与や自身の社会参加について,相対的に低い。
6) 自分の将来に明るい希望を持っていない。
上記6項目に関する統計調査で、日本は見事に、すべて「ワースト」な成績を納めているのです。
これだけでも、日本の若者の主観的存在意義が「BAD」な状況にあることがわかります。国家間比較のみで時系列比較はできていないですが、少なくとも日本の若者の主観的存在意義が「よくなっている」ということはないでしょう。
これこそ、僕が「ビジョン」「ミッション」で述べたワクワクするような世界観と、現状の大きな溝(ギャップ)です。
対象課題として取り組む意義が大いにあると思っています。
# 3-3 「日本の教育」の問題
安宅和人さんによる「シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成」では、AI時代における日本社会の課題が論理的に書かれています。その中でも、「教育」に対する課題の深堀りが圧倒的に多い。
今の日本社会にとっては、明らかに教育の改革が追いついていない状況なわけです。
本著によれば、日本には今まさに「明治維新から150年続いてきた、工業社会に適応する人材育成」から「AI×データ時代に必要な能力を持った人材と、それらをつなぎ合わせ、課題を解決する人材育成」への転換が求められているわけです。
その中でも、国家のリソース配分の調整(教育予算への投資)と、それによる自律循環的な資金・人材エコシステムの構築による価値の指数関数的成長が必要だというのが、最たる主張。
ただ、本著の教育論の中で、僕個人が思う課題を解くにあたって最も重要だと思ったのは、
「夢を描く力・妄想力」「ビジネス課題とサイエンス、エンジニアリングをつなぐアーキテクト的な人材」を育む仕組み
です。
国家レベル課題に対して客観的に書かれた本著の中でも、この部分に関しては、これまで僕が「必要だ」「足りていない」と思う要素に合致していたわけです。
徐々に自分の課題意識や仮説が、特定できるものに変わってきた気がしています。
それをこれまでのビジョン、ミッション、特定課題と照らし合わせて、
自分の言葉でまとめると、
個人としてのビジョンと、世の中(身近な他者や地球の裏側で暮らす人々まで)に対する当事者意識を学童期から青年期にかけて育てるような、新たなEducationの仕組み・循環を生み出さなければいけない
ということになると思っています。
※「教育」には、教育者が被教育者を一方的に育て上げるという意味合いが含まれ、若者の主体性を欠くイメージが強調されることもあるため「Education」を使います。
※またそれに伴い、国全体のバランスとしては、AI・データサイエンス特化型人材、領域を越境してテクノロジーを活用できる人材、2点を育む高等教育機関のリソース配分など、時代に即した能力を相乗的に高めることも重要だと思っています。
そして個人的に、不足している「具体的な機会」として、
(a) 社会(マクロ:地球社会からミクロ:隣人心理まで)を知る機会
(b) 自己経験の深堀・内省機会(自分の哲学や思想を築く機会)
(c) 自分はできる、変えられると思える機会
(d) ビジョン、多様性、当事者意識を持つことによる成功体験
あたりが挙げられるかなと思います。
自分がこの要素の育成が必要だと考える背景として、個人的なバックグラウンドが絡んでいることはもちろんですが、人間にとって普遍的に必要な能力であり、最もレバレッジが効く能力だと信じていることがあります。
自分がほしい力でもあります(笑)。
これが次章「ソリューション」に接続していきます。
次回予告
自分のやりたいことがクリアになってきた気がします。
一方抽象的な話すぎて「具体的にどんな手法」が取り得るのか?という点がわかりづらいと思うので、その点を#4でクリアにし、#5では自分の今後のロードマップを明確にしたいと思います。
次章では、どのようなビジネスモデル(仕組み)でこの問題を解決するのかを考えたいと思います。
色んな事業やプロジェクトをベンチマークとして参考にしながら、やるべきことをもっともっとシャープにし、「今の自分」「今の会社」のアクションまで接続できるレベルにしたいと思います。
そして#5まで、一気に1記事で完成せたいと思っています。
つまり、次が最終回です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。
▼続きはこちら▼