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障がい児の親は、子どもの失敗の活かし方を整理する


家事に追われている最中、テーブルに置いてあるコップを子どもが倒して床を濡らしてしまう。

その途端、どうしようもなく怒りの感情やイライラが込み上げてくる。

このようなシチュエーションは、育児をしていれば誰もが一度は経験することなのだと思います。



知的障がいがある子どもは、行動するときに周囲の状況を確認しないことが多く、幼い頃には動くたびに何かを倒したり、危ないことをして怪我をしたり、散らかしたりします。

そして親は、その後片付けをすることになります。


子どもの自立を促すためには、自分のことを自分でする機会をなるべく増やしていきたい。

でもそうすると失敗が増えるので、親の仕事も増えてしまう。



子どもの失敗の後始末は親の負担になるのですが、子どもの成長とも切り離すことができません。

そしてその失敗の活かし方こそが、その後の子どもの成長に大きく影響するのです。






子どもが失敗したとき、その直後の親の対応によって失敗が活きるかどうかが決まってきます。



言うまでもありませんが、
「なにをしてるの?」
「ちゃんとしなさい」
という声かけにはほとんど意味がありません。

具体的にどうすればいいのかということが伝わらないからです。



もし子どもに少しの考える力や学習する力があるのなら、まずは失敗した直後に失敗したことへの対応方法をシンプルに伝えてみます。

子どもの記憶は情動やエピソードをともなう方が残りやすいため、「やってしまった…」と動揺している時こそ学習のチャンス。


コップの水をこぼしたタオルで拭きとる。

ものを壊してしまったら、持ち主に「ごめんなさい」と伝える。

適切なタイミングでシンプルに伝えることで、子どもの中に入りやすくなります。





次に、失敗の原因や同じ失敗をしないための対策を一緒に考えてみます。

これらを子どもが独力で考えることは難しいかもしれませんが、親がサポートすることで答えが導き出せる可能性が高くなります。


「なぜうまくいかなかったのか」「どうすればよかったのか」を子どもに尋ねてみます。

もし答えるのが難しいようなら、こちらから選択肢を提示して選んでもらったり、答え自体をシンプルに提示してもいいです。

失敗の原因や対策を少しでも子どもと共有できれば、今後の失敗を減らして行動の精度を上げることにつながります。







では、そもそも学習すること自体が難しかったり、学習が難しい失敗に対してはどうするのか。

その失敗は子どものトリセツ(取扱説明書)作りに活かします。


失敗したときの環境やサポートの手順、タイミングについて考え、子どもの失敗を未然に防ぐ方向に工夫していくことで失敗を活かすのです。

子どものトリセツ作りは最小限の手間で子どものサポートが行えるようになるだけでなく、デイサービスなど親以外の人が子どもの面倒を見てくれるときの情報提供に役立てることができるのです。







失敗などの実体験をもとに行動を見直す機会は、子どもにとって大きな成長の糧となります。

しかし、そのような機会の多くは幼少期から就学期に限られており、大人になると減少してしまいます。

一般的に、子どもの失敗は周囲に受け入れられやすく、大人の失敗は受け入れられにくいという現実があるからです。



昔、僕の子どもはスーパーで他人の荷物が乗っているカートを間違えて押してしまい、知らないおばさんにこっぴどく叱られたことがあります。

もし同じ間違いを成人になった今してしまったら…

おそらく怒られるだけでは済まされず、場合によっては通報されてしまうかもしれません。

同じ失敗でも大人がやってしまうと、周囲からのみられ方や社会的な意味合いがずいぶん変わってくるのです。



そして今、子どもは福祉就労とはいえ一応働いており、仕事上の失敗はそのまま人材評価につながります。

場合によっては解雇されるかもしれません。

だから子ども時代の失敗の価値はとても貴重で、活かさないのはもったいないと思うのです。






僕の子どもにとって、幼い頃の失敗体験はその後の行動に変容をもたらした大切な宝物です。

そばにいると、学校生活や人間関係の失敗からの気づきが今の生活に生きている、という実感があるのです。



子どもの時はなるべく沢山の失敗をさせ、学習能力に合わせて親が対応することで子どもの行動変容に活かす。

学習が難しいことは子どものトリセツ作りに役立て、親子の快適な暮らしに活かす。

子どもの失敗への向き合い方を整理しておくことが、失敗を上手に活かすコツになるのです。




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