3.あらすじ②
VTuberデビューを目前にして、急性心不全で“かえらぬヒト”となってしまった主人公――。
だったのだが。
この世で再び、主人公の意識が覚醒する。
しかしそれは、生身の人間としてではなく、人工知能(AI)としてであった。
主人公が採用された大手VTuberグループの運営は、バーチャルテクノロジー系のベンチャー企業であり、その技術開発の一端でAIの研究開発も行っていた。
そして、実は既に「人間の知能をほぼそのままAIとして再現する技術」を確立していたのだった。
しかし、倫理的な問題など多くの問題があったため、その事実は重要な社外秘として伏せられていたのである。
そして今回、VTuberデビューを目前にして死んでしまった主人公の意識を、運営が秘密裏にAIとして復元させたのだった。
運営はまず、勝手に主人公をAIとして復元したことを謝罪する。
しかし、その後、彼らは主人公に驚くべき提案をする。
「このままAIとしてこの世によみがえって、予定通りVTuberになってみませんか?」
突然の信じられない事実と誘いを前にして動揺する主人公。
しかし、一度復元された意識を消去されるという自殺のような選択をする気にはなれず、どうせAIとして生きていくのなら……と、最終的には運営の誘いを受けようと決意したのだった。
こうして、元配信者の主人公はVTuberに転生した――。
(ちなみに、VTuberになる前に動画配信などの活動をしていた人がVTuberとなることを「転生」と呼び、そのような場合、演者(中の人)のことを「転生前」と呼んだりする)
【蛇足】
“かえらぬヒト”の「かえらぬ」は「(死んでしまって)帰らぬ」と「(VTuberとして)孵らぬ」がかかっています。
また「ヒト」の表記は「生物としてのヒト」と「AIとしての人(人格など)」という対比を強調する意を込めています。