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6.『【推しの子】』との比較


「今死ねば推しの子供に生まれ変われるのでは…」

 ――などという、アイドルなどの結婚や妊娠報告の際に言われるネタがある。
 ここからスタートするのが、『【推しの子】』という作品だと言えるだろう。

 それに対して「VTuber転生もの」は、「元々動画配信などの活動をしていた人がVTuberとなることを「転生」と呼ぶ」というある種のネタ(俗語)からスタートする物語と言えるはずだ。

 どちらも「ネタ」に端を発するため、インパクトがある。
 しかし、それ単体では「出オチネタ」感が否めないかもしれない。


 にもかかわらず、少なくとも『【推しの子】』は、アニメ化も噂されるほどの人気を博している。
 では、『【推しの子】』は出オチの後をどのように描いているのだろうか。

 答えは明白。
 出オチネタ一つにすがらず、芸能界の「裏側もの」としてしっかり物語を描いているのだ。
 ネタバレになるので具体例は避けるが、華やかな芸能界の裏側にある闇の部分。現実世界の問題点にもスポットが当てられている。

 対する「VTuber転生もの」も、その大筋はVTuberの「裏側もの」だ。
 配信活動を通じての喜びや苦労をえがき、時には華やかなVTuber界の闇の部分、リアルな問題点にも焦点を当てる。

 だからこそ、私は始めに「VTuberに造形が深い人にえがいて欲しい」と熱弁したのである。
 リアルな「VTuber目線」や「VTuberあるある」は、この物語の肝になる。
 安易な想像やイメージでえがけば、途端に陳腐な“作りものの嘘っぱち”になってしまうだろう。
 それは例え「虚構」であったとしも、「リアル」でなくてはならない。


 では、「転生要素」が活きてくる盛り上がりどころはどうだろうか?
 『【推しの子】』はそこに「サスペンス」を据えて、刺激的に描いている。

 対する「VTuber転生もの」は、そこが弱い。
 つまり、「裏側もの」に並ぶ“出オチネタ”を活かしたもう一つの刃がない。
 ――と、そんな風にお思いだろうか?

 そんなことはない。
 こちらにはトップシークレットAIだからこその「人間関係」の葛藤がある。