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紙ストローは本当に「環境にやさしい」のか?

よく見かけるようになった紙ストロー

近年、至るところでプラスチック製ストローの代わりに紙ストローを見かけることが増えていませんか?
なんとなく、プラスチックよりも紙製の方が環境にやさしい・エコというイメージがありますが、果たしてそうなんでしょうか?

実はこんな記事があります。

この記事の内容を一見すると、なかなか衝撃的な印象を受けるので、本当にそうなのか?疑いたくなる方もいるかもしれません。
私も気になったので、ストローの歴史的な背景から、現状の動きをまとめてみました。
ぜひご覧ください。

歴史的背景

最初の飲料用ストローは麦わらで作られており、農村地域でミルクやビールを飲むために使用されていたそうです。しかしながら、草の味がするため、19世紀後半に紙製ストローが発明されたのですが、水分を吸収して柔らかくなり、使い勝手が悪くなるというデメリットが大きく取り上げられてしまいました。

その後、プラスチック製ストローが登場した際に、柔らかくならず、鮮やかな色やスパイラル形状にできるということで、20世紀半ばにはファーストフード業界の象徴となり、使い捨てプラスチックの消費が加速しました。

潮目が変わったのは2018年。
BBCの番組「ブループラネット」で使い捨てプラスチックの環境への影響が示されたことで、プラスチック製ストローは多くの国で禁止される動きが広がりました。
プラスチックによる一番大きな影響は、マイクロプラスチックの海洋流出です。そこで環境に配慮された代替品として、紙製や竹製のストローが広がり始め、環境問題の解決が期待されることになりました(紙利用により森林伐採につながるという人もいますが、間伐材活用により森林管理・保全につながる利点の方が大きいため、全体的に見て環境への影響は望ましいと言えます)

ただし、本来なら紙製ストローは、水に弱く、濡れると柔らかくなるという特性を持っています。ところが、プラスチック製ストローの代替として普及が進むように、液体を弾き、濡れても柔らかくならないようにある添加剤を使うことになったようです。
それが、PFAS(パーフルオロアルキル化合物)です。

PFAS(パーフルオロアルキル化合物)

冒頭の記事の「永久化学物質」というのは、まさにこのPFASを指しています。この化学物質は非常に安定しており、環境中に長期間残存すると言われており、特に水や油を弾く特性があり、雨具や家具、食品包装などに広く一般に使用されています。しかしながら、健康に悪影響を及ぼす可能性があり、肝臓や腎臓の病気、高血圧、免疫反応の低下、腎臓や精巣のがんなどと関連するリスクも指摘されています。
現在、広く普及する多くの紙製や植物ベースのストローはPFASを含む可能性が高いと言われています(なお、プラスチック製ストローも低レベルながら含まれています)

日本の動き

農林水産省は、2010年から優先的にリスク管理を行うべき有害化学物質のリストにPFAS類を掲載しています。
また、厚生労働省も2009年にPFAS類を水道水の要検討項目としていましたが、具体的な目標値設定は避けてきていました。
しかし、2020年4月に水質管理目標設定項目に位置付けを変更し、暫定目標値をPFAS類の合算値で50ng/Lと定めたそう。
環境省も、PFAS類を長らく水質環境基準体系における要調査項目に位置付けて調査を続けていましたが、2020年5月に要監視項目に位置付け、暫定指針値をPFAS類の合算値で50ng/Lと定めたとのことです。

企業の最近の動き

市場の反応や法規制の動きに伴い、企業も動きを変えてきています。
マクドナルドは1月13日、2025年までに全ての包装・容器から全てのPFASを全廃すると発表しました。同社は2008年に一部撤廃を決定していましたが、今回は全てのPFASを全廃することを掲げたことが注目を集めました。
マクドナルドの決定の背景には、米消費者NGOのSafer Chemicals, Healthy Familiesが2020年8月に、マクドナルドの「ビッグマック」とバーガーキングの「ワッパー」の包装紙からPFASが検出されたと発表したことが大きな契機となったようです。
アマゾンも同様の背景があり、PFAS全般を使用禁止することを決定しています。

さいごに

紙製ストローも、このような背景をみると、一概に環境に良いとは言えないといえます。とはいえ、プラスチック製ストローを完全同意とも言いづらい。

では、我々は何を気を付ければ良いのでしょう。
簡単にまとめてみました。

消費者として
・なるべくストローを使わない(+店舗でストロー利用をお断りする)。
・マイボトルを持ち歩く。
など

店舗事業者として
・ストローを活用しない店舗方針に変える
・成分表示がしっかり開示されている認証済の紙製あるいは別の成分加成性材料のストローを活用する。
・プラスチック製ストローを顧客リクエストに合わせて出せるように少量だけ用意する(ただし、使用済ストローの適正回収と処分に責任を持つこと)


社会のサステナビリティを追求する上では、単純な二元論はあまり多くなく、このようなトレードオフが少なくありません。
思考停止になるのではなく、目の前の取組みや課題の裏で何がつながっているのか、見えないところに影響を与えていないか、アンテナを立てて行動していることが求められますね。

合同会社エネスフィア 加藤直樹
https://enesphere.co.jp/

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