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クレーム対応に学ぶ

デパートの文具売り場でバイトをしていた時の話。

ある日、とある老紳士が憤懣やる方ないというご様子で私が立つ売り場のレジへ向かって来ている。

嫌な予感しかしない。

しかも、売り場の外で何かあって、ちょうど一番近いこのレジに向かっているという風情。
つまり、この売り場では解決できない恐れがある。まずい。

そうこう考えているうち、一直線に私の方へと進みながら、老紳士はついに不満を爆発させた。

「ここは、なんだ!カードもロクに使えない電話しかないのか!」

令和の世を生きる平成生まれの方にはピンと来ないと思うので解説しますと…

時は西暦2001年、携帯電話の普及がようやく進んできたところ。
ただ、まだご年配の方が携帯を持つのは珍しい時代でした。
この老紳士も、テレホンカードで公衆電話を使おうとしてらした。
それなのに、電話にカードが入らない。それでお怒りでした。

そんなに激怒する前に冷静に問い合わせてくれよ…と心では思いながら、接客のセオリーに従ってまずは謝罪。「申し訳ありません」
その上で

「恐れ入りますが、今一度お話を…」

「用があって電話せにゃならんのに、エレベーターの脇の公衆電話にカードが一向に入らない!どうなってる!」

右手のカードをかざして怒りに震える老紳士。

しかし、私は気付いてしまった。

老紳士が手にしているのが、キャッシュカードだということに…

話のスジはわかった。
原因もはっきりした。

あとはどう伝えるか。

さて、問題です。

この時私は老紳士にどう伝えたでしょうか?

チッ

チッ

チッ

チッ

はい、では正解です。

「恐れ入りますが、あの〜、お客様〜、あの、そのカードは〜…」

会話に戻ってみましょう。

老紳士「〜〜どうなってる!」

私「大変申し訳ありません。ただ〜、あの〜、恐れ入りますが、あの〜、お客様〜、あの、そのカードは〜…」

老「え⁉︎(怒)…え?(驚)…あれ?(恥)あれ!(照れ笑い)いやぁ、耄碌してしまって、いけませんなぁ(ポリポリ)」

私「とんでもございません(笑顔)」

はい、一件落着です。

解説すると、

・間違ってるのは完全に老紳士
・だからといってはっきり指摘すると角が立つ
・でも伝えないと終わらない
・結果、下手に出て気付いてもらう作戦に

ということです。

接客のセオリーである「お客様からクレームが入ったらまずお詫び、対応はそれから」を守った結果、丸く収まったんだと思います。

これ、日常の人間関係にも応用できるのではないでしょうか。

相手の怒りの感情に対しては真正面からぶつからず、相手の尊厳をなるべく損ねずに、穏やかにいなす。

「押さば引け」ということでしょう。

知らんけど。

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