犠牲ってなんだろう

犠牲ってなんだろう

2020鑑賞感想038 サクリファイス

脚本を読みながら観たい映画だな、と思った5回目の鑑賞。クラウドファンディングのリターンの1つに脚本があったら、喜ばれたんだろうな、とも思った。

調べれば分かるのだが、この作品は立教大学の映像身体学科の篠崎教授からのゼミの課題で、3・11をテーマにした脚本を書くことからスタートしている。

だからなのか、地震についてしっかりと調べているのだろう。そして、そこに出てきた生き物や状況から、発想を生んだものもあるのかもしれない。

ただ僕が今現在気付いたのは、地震の前兆で出てくる「もの」だけであり、きっと僕自身が地震のことを調べればわかることなのかもしれない。そして、たぶん地震のことをもっと知れば、この作品のことも知ることが出来るのかもしれない。

そう思ったのが、漣と翠とのやりとりだった。ここのシーンはカメラワークもカット割りも、話の内容も、印象が変わるくらいなシーンである。しかし、自分にはまだ理解がしきれていない部分が強い。

そこからの全と翠のやりとりで「犠牲ってなんだろう」って思ってしまう。たぶん『サクリファイス』というタイトルにもつながっていくところ。

漣と全が入ることによって、物語が核心につながっていくのは。きっと少年少女だけでは世界は変わらない。どこかで大人が必要なんだと思ってしまっている部分があるからなのかもしれない。

壷井濯監督の以前の短編『殺し屋シュウヘイ』を観て、今回『サクリファイス』を観たのだが、「夢」という言葉が好きなのかな?と思えた。「夢」と「現実」の境目。「現実」と「虚構」とはまた違った解釈・考え。それはそうだ、「夢」と「虚構」はまた違ったものだ。「夢」とは「予知夢」もあるが、実際に視たもの・体験したものを処理するためにみるものである。「夢」僕もこの言葉が好きだ。寝ている時にみるものも、将来を見据えていうもののことも。

「犠牲」。色々な意味があるが「ある目的のために損失となることをいとわず、大切なものをささげること。また、そのもの。」というのが、他のどの意味にも関わっているものだと思っている。「大切なもの」、それは「愛」という感情によって生まれるものである。とそう信じている。

そこで僕が思ったのは「犠牲」という言葉は、「愛」という感情がなければ生まれてこなかった言葉なのではないか、いうこと。
「犠牲」とは「愛」の1つであるのではないか、ということ。

それを、『サクリファイス』を観て改めて思った。

そして、それを思ったことによって、この作品は、青木柚が主演というよりも、翠を演じた五味未知子なのではないか、とも思うようにもなった。

元々青木柚が主演といわれているが、主演ぽくないなあと思っていた。どちらかというとトリプル主演な感じにもみえていた。そして今回で、五味未知子が主演のように思えた。

たぶんどこかで、ちゃんと青木柚が主演にも見える時がくるのだろうとは思っているが。今日僕が観た『サクリファイス』は、僕にとっては五味未知子が主演だった。ただ、それだけの話でいいと思うんだ。

舞台挨拶で出た「東日本大震災は、希望・喜びの踏み台ではない」という言葉に、どこかグサリと来た自分がいた。

また違った作品を観ているようだった。元々この作品はスルメ映画だとは思っていた。味わえば味わうほど味深くなる。噛みどころを変えればまた別の味わいがある。今日は一瞬で終わった気さえした。

噛みどころはいっぱいあって。観る席や。場所、体調、瞬き。なので、全く同じ『サクリファイス』はないのだ。明日、別の『サクリファイス』が楽しみである。

また明日は『暁闇』の阿部はりか監督の登壇。柚トークが気になります。むしろ混ざりたい笑。楽しみです。

ジャンル:映画
作品名:『サクリファイス』
監督・脚本:壷井濯
出演:青木柚 半田美樹 五味未知子 藤田晃輔 櫻井保幸 矢﨑初音 下村花 三坂知絵子 草野康太 三浦貴大 他
公式サイト:https://sacrifice-film.com/
場所:アップリンク吉祥寺
鑑賞日:2020/03/07(土) 20:30-
物語
かつて新興宗教団体〈汐の会〉で東日本大震災を予知した少女・翠は、今は陸上部に所属する女子大生としての日々を過ごしていた。
同じ頃、大学周辺では三つの事件が起こっていた。神崎ソラという孤独な学生の死。三一一匹殺されるまで終わらないとされる猫殺し。若者を戦争へ駆り立てる団体〈しんわ〉の暗躍。
平凡な毎日を忌み嫌う塔子は、同じ学部に通う愛想の良い青年・沖田が猫殺しの犯人ではないかと睨み行動を共にしていた。やがて彼が、キャンパス内で神崎ソラと接触を持っていた唯一の人物であることを知り、猫殺しだけでなくソラの殺害にも関与しているのではと疑い始めるが……。
東日本大震災から九年、「死の物語」の中を若者たちが疾走する。

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