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充電式で、生きていく。双極性障害の暮らし【10】カウンセラーの友人と行動療法1

 病気のことは、親しい友人には正直に話していた。

 予想に反して、ドン引きする友人は、ただの一人としていなかった。みんな心配し、散歩やお出かけ、旅行など、いろいろなところへ連れて行ってくれたり、ただただ話を聞いてくれたり、ご飯を食べたり、一緒に居てくれたりした。

 なかでもカウンセラーの友人は、病気のことをよく知っているのでさまざまお世話になった。
私のパワハラ上司と会ったことのある友人は、私が不調を打ち明けたとき「あまみさん、あの人と2人体制の仕事って大変じゃない?大丈夫?」と言った。会った時に、すでに性格や特性を見抜いていたのだ。
 
 特性のあるパートナーにより、うつ状態になってしまうカサンドラ症候群の本を薦めてくれた。買って読んでみたら、当てはまることばかりで驚いた。
 
 当時の勤務状況は1部署に2人きりのようなもので、1対1で上司・部下の関係では相手が支配的になるのもうなずけた。自分ルールに振り回され、病んでしまうのだなあと得心した。
 
 休職すると、友人はまず「良かったらうちの家族と旅行に行こうよ!」と誘ってくれた。誘われなければ、ただ家に引きこもっているだけの日々だったと思うが、隣県への1泊旅行に連れて行ってくれた。
 
 家族旅行のお邪魔になるかもと思ったが、友人家族はとても暖かかった。長時間にもかかわらず車を運転してくれ、美術館や観光名所を回った。混むシーズンだったので家族のお部屋に一緒に寝かせてもらう形だったが、他の家族が寝た後も夜中まで友人と語り合えて良かった。
 
 元気な子供たちと、ご家族が「あまみさん疲れてるだろ、ちょっと静かにしろ!」と子どもたちを諭すまで車中で喋りまくったり、大きな美術館で心ゆくまで名画を観たり、へっぴり腰で吊り橋を渡ったり、地元グルメを堪能したりした。
 
 普段出歩かない生活だったので帰宅後は疲れから寝込んだが、充実した旅行だった。顔に出ていたかわからないが、とても楽しかった。
 
 友人は、たびたび私を誘ってくれた。ランチの時もあれば、お茶だけの時もあった。
 ニュートラルな目線で話を聞いてくれ、専門職ならではのアドバイスを貰えるのがとてもありがたかった。
 
 いろいろ話す中で、「弁証論的行動療法をやってみたら?」と言われた。  
 認知行動療法なら聞いたことがあったが、聞いたことのないものだったので友人にいろいろ話を聞いた。
 
 その頃はうつ状態がひどかったせいもあり、とにかく自分を責めがちだった。思考のはざまというか、考えが途切れるや否や、嫌なできごとや言葉が脳裏に蘇り、後悔や不安、自責の念にひどく駆られた。
「あの時なんでああできなかったんだろう」
「もっとうまくやりたいのにできない」
「こんな自分は居ない方がいいんだ」
と、泣くこともしばしばだった。
 
自傷・自死は実行しなかったが「自分には生きている価値がない」という感覚がすさまじく、毎日苦しみに押しつぶされていた。
 
友人が教えてくれた弁証論的行動療法は、認知行動療法を内包するような療法のようである。一緒に大きな書店に行き、友人が薦めてくれたワークブックを買った。

「この本を一緒にやろう。絶対治るよ」と友人が言ってくれ、勇気づけられた。

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