人生の好転は1本のクレームから
秋ごろ発売の予定で、このnoteの記事を再編集しつつ、書き下ろしも加えた新作のエッセイ集を刊行しようという話が進んでいる。
そのため、これまで書きためてきたエッセイを、1本1本読み返しながら、次回作に入れるか、落とすか、という振り分け作業を、今している。
投稿した記事はすでに90本以上あり、1本につき平均2000〜3000字は書いているから、読み返すにはそれなりのエネルギーがいる。
けれどやっぱり、もちろん、とても楽しい。
書いてきてよかった、と素直に思う。
こんなことを思ってたんだっけ、という新鮮な驚きもある。
どんなに強く、ときには激しく自分の内部を覆い尽くした感情も、時の経過とともに薄れ、去っていったことがわかる。
本づくりを通して、忘れかけていた感情にまた出会い直す、という不思議な感覚を味わいつつ、しかしこれらはあくまでも下書きとして、思いきって手を入れながら一つの一つの文章を磨いていきたい。
記事の一覧のなかには、未公開の下書きも数本あって、そのうちの1本に、まだnoteを始めたばかりのころに書いたものの、納得のいく着地点を見つけることができず、お蔵入りしかけていた文章を見つけた。
久しぶりに読み返してみたら、今ならまとめられるかもしれないという気がしたので、もう一度トライしてみることにする。
いつかは書きたい、いや書かないと、と思っていた、読者から届いた1本のクレームにまつわる話だ。
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もう3年以上前の苦い思い出から、話ははじまる。
ある日、わたしのブログの長年の読者だという方から、メールが届いた。
「初めてメールします」という書き出しで始まったそのメールの用件は、その時期、わたしがブログで新刊発売のおしらせを連日していたことへのクレームだった。
「小川さんのブログはもう何年も毎日読んでいますが、本は一冊も持っていません。わたしが読みたいのは小川さんの子育てや暮らしの様子が綴られたブログであって、本には興味がありません。だから本の宣伝にブログが使われることにはがっかりします」
あまりにも驚いて、しばらく頭の中が真っ白になった。
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2021年11月発売のエッセイ集『ただいま見直し中』(技術評論社)に収録されたエッセイの下書きをまとめました。書籍用に改稿する前の、WEB…
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