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イヴ・サンローラン美術館パリ(Musée Yves Saint Laurent Paris):モードの帝王の創作の場を垣間見ることができる美術館
前回、2023年現在開催中のイヴ・サンローラン美術館の特別展 「Yves Saint Laurent, Shapes & Forms」を紹介したが、今回は常設展のブースを紹介していきたい。
なお常設展については、過去のnoteでも2018年2月に訪問した時の写真をもとに触れているが、その時とは若干展示の内容が変わっていたところもあるので今回改めてまとめ直す。
参考:
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1. 2017年、パリ・マルソー通り5番にオープンしたイヴ・サンローラン美術館
かつて1974年から2002年まで、パリのマルソー通り5番(5 avenue Marceau)にはイヴ・サンローランの本社が置かれており、モードの帝王イヴ・サンローランもここで創作活動に励んでいた。
2002年以降、この本社は閉鎖されていたが、15年以上の沈黙を経て、2017年にはイヴ・サンローラン美術館として一般の人々にもその門が開かれることになった。
この白く美しい建物は、ピエール・ベルジェ・イヴ・サンローラン財団の本部でもあり、その450平方メートルものスペースでは、常設の展示に加え、企画展が開催され、財団の豊かなアーカイブを惜しみなく公開してくれている。
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アルジェリアのオラン(Oran)に住んでいた17歳のイヴ・サンローランは、雑誌から切り抜いた11対の人形のワードローブをデザインすることで紙のファッションハウスを作ることを思いつき、創作に耽っていた。
その後、パリに移ったサンローランは、カール・ラガーフェルドなど後に有名になる若手のデザイナーがこぞって参加した国際羊毛事務局(International Wool Secretariat)コンペティションに参加し、1953年にはドレス部門、1954年にはドレスとコート部門で入賞した。
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この時、審査員として参加していた『ヴォーグ・パリ』の編集長ミシェル・デ・ブリュノフ(Michel de Brunhoff)へ、サンローランはファッションイラストを送った。
サンローランの絵がクリスチャン・ディオールの絵に似ていることに心を打たれたデ・ブリュノフは、すぐにディオールにこの若者を紹介し、1955年よりサンローランはディオールのアトリエで働き始めることとなった。
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そのわずか2年後の1957年10月、クリスチャン・ディオールが亡くなったことから、弱冠21歳の青年であったイヴ・サンローランがディオールのアーティスティック・ディレクターに就任した。
1958年1月、初のコレクションを発表したサンローランは、大喝采を浴び、以降、華やかなキャリアを築いていくことになる。
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参考:「Karl Lagerfeld & Yves Saint Laurent at the Wool Secretariat」『An Other』(2013年10月17日付記事)
2. 時代を切り取るファッション写真コレクション
イヴ・サンローラン美術館パリは、13万点以上のプリント、ネガ、ポラロイド、スライド、コンタクトシートなど豊かなファッション写真のアーカイヴを所蔵している。
このアーカイブは、イヴ・サンローランがディオールに在籍していた初期から、1961年に自身のファッション・ハウスを設立し、2002年に最後のコレクションを発表するまで、イヴ・サンローランの全キャリアを網羅するものである。
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その中には、メゾンの広報がショーの際に撮影したもの、広告のために撮影したもの、国内外のプレスからの依頼で撮影したものなどがあり、これらは、イヴ・サンローランのイメージや個性を伝える上で重要な役割を果たした。
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また2023年後半の特別展「Yves Saint Laurent, Shapes & Forms」の開催に合わせ、その写真アーカイヴの中から選ばれた、特に服のカットや構造が際立つ作品が展示さている。
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これらの写真を撮影したのは、ピエール・ブラ(Pierre Boulat;1924-1998)、トム・キュビリン(Tom Kublin)、クロード・アズレイ(Claude Azoulay)、ジャンルー・シーフ(Jeanloup Sieff;1933-2000)デヴィッド・ザイドナー(David Siedner;1957-1999)などと20世紀に活躍したフォトグラファーたちである。
イヴ・サンローランの感性に共鳴した彼らは、その時代を切り取り、今に伝えてくれている。
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3. イヴ・サンローランのスタジオ
イヴ・サンローランが、日々製作に励んだ場であるスタジオは、鏡張りの壁を特徴とする、明るく、静かで、ニュートラルな空間であった。
クチュリエは、鏡に映るモデルをもとに、自分がデザインした衣服がどのように見られるかを観察しつつ、必要な距離感を探った。
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スケッチがこのスタジオに渡されると、各アイテムは、洋服を作る前にデザインやサイズを確認するために試験的に縫製された仮縫いの白い服であるトワル(toile)として制作された。
モデルたちは、この試作品であるトワルを着てサンローランの前でウォーキングをした。
サンローランは、実際に女性の体の上で動く服を見て、全体的なプロポーション、カッティング、そしてシルエットをチェックした。
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またこのスタジオの本棚には、サンローランのインスピレーション源となった数々の本も収められている。
さらに旅もサンローランにとっては欠かせない想像力の源であった。
その旅の思い出のかけらとして、各国や各地域の工芸品や土産物が机の上には置かれている。
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最後になるが、この美術館の開館にも深く関わり、公私にわたってイヴ・サンローランを支えたパートナー ピエール・ベルジェ(Pierre Berge)について触れておこう。
イヴ・サンローランとピエール・ベルジェは、1958年に出会って以来、創作活動に打ち込むサンローランをベルジェは経営の面でしっかりと支えた。
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2002年1月のオートクチュールコレクションをもってイヴ・サンローランはデザイナーとしてのキャリアに幕を下ろしたが、2004年にはピエール・ベルジェ=イヴ・サンローラン財団が設立された。
2008年にサンローランは死去したが、残されたベルジェは、財団のために奔走し、2017年9月8日にこの世を去った。
イヴ・サンローラン美術館が公開されたのは、その死からわずか3週間後、2017年9月28日のことであった。
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二人によって命を吹き込まれた「イヴ・サンローラン」というブランドは、大きな組織に成長し、ファッションの都パリで揺るがない地位を築いている。
おまけ:ミュージアムショップ
パリのイヴ・サンローラン美術館は、扱っている本も多いので要チェックである。
また簡単に購入できるものとしては、カラフルなポストカードも。
筆者は過去にこのカードを購入したことがあるが、ちょっと日本の官製葉書よりはサイズが大きいが紙がしっかりしている印象。
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美術館オリジナルデザインのスカーフも40-60ユーロとイヴ・サンローランのブティックで売っているものに比べたらかなりお手頃かもしれない。
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過去の特別展の図録もあり。
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ファッションに興味がある方がパリに訪れた際には、ぜひお勧めしたい美術館である。
イヴ・サンローラン美術館(Musée Yves Saint Laurent Paris)
住所:5 avenue Marceau, 75116, Paris, France
電話番号:+33 01 44 31 64 00
開館時間:11:00-18:00(最終入館は17:15まで、金曜日は21:00まで開館)
休館日:月曜日、1/1、5/1、12/25
※12/24と12/31は、16:30まで
公式ホームページ:museeyslparis.com
入場料:一般 10ユーロ 割引 7ユーロ(学生、教員、10-18歳) 無料 (10歳未満、美術史・服飾史専攻の学生、失業者、障害者と付添人、記者など)
※要証明書
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