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フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli)生誕100周年を記念した特別展がミラノ・スカラ座にて開催:Zeffirelli, gli anni alla Scala

1. ゼフィレッリ、スカラ座での日々(Zeffirelli, gli anni alla Scala)

『ロミオとジュリエット』といえば、美しい黒髪につぶらな瞳のオリビア・ハッセーがジュリエットを演じた1968年の映画を思い浮かべる方もいるのではないであろうか。

そんな名作を撮った監督フランコ・ゼフィレッリ(Franco Zeffirelli;1923-2019)の生誕100周年を記念して、ミラノ・スカラ座ではゼフィレッリ、スカラ座での日々(Zeffirelli, gli anni alla Scala)と題し、彼の生涯とその作品を辿る特別展が開催されている。

今回のnoteでは、ミラノのスカラ座でも数々のオペラを演出・監督し続けたゼフィレッリの生涯を振り返りつつ、スカラ座での特別展を紹介していきたい。


2.ゼフィレッリとオペラ

半世紀以上にわたり、スカラ座に限らず、ウィーン国立歌劇場、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場、ロンドン・ロイヤル・オペラハウスなどでも、作品を生み出し続けたゼフィレッリ。

そんなゼフィレッリは、ルキノ・ヴィスコンティの助手を務め、映画監督として活躍しつつ、ミラノのスカラ座で数々のオペラや演劇の監督・演出を行うようになった。

(Otello, 1976, Zeffirelli e Piácido Domingo durante le prove)


ゼフィレッリがスカラ座での初仕事は、1953年3月、ロッシーニ作曲の『チェネレントラ』を演出であった。

この時、ゼフィレッリは30歳の若者であった。

(Cavalleria rusticana, Costumi di Anna Anni, Lola e le paesane il giorno di Pasqua/ Fonale, Una piazza in un paese di Sicilia)


ゼフィレッリの演出するオペラの優雅さや色の組み合わせ、大規模な舞台装置は、評判を呼び、次々と作品の演出が彼に依頼されることとなった。

特に1963年に上演されたプッチーニの『ラ・ボエーム』(La bohème)での壮大で詩的なパフォーマンスは、高く評価され、スカラ座のみならず世界中の劇場で繰り返し上演された。

またゼフィレッリは、指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)とともに、1965年にはこの作品を映画化したのであった。

(Aida, 1963, costumi: Anna Anni)


この『ラ・ボエーム』や『アイーダ』(Aida; 1963)の上演を経て、ゼッフィレッリは、ますます壮大で豪華絢爛、映画的リアリズムを帯びた演出スタイルを確立していった。

また写真からも分かるとおり、ゼフィレッリは綿密な調査のもと、オペラの衣装も丁寧に、そして華やかに作っており、今でもその目を見張るような鮮やかさと精巧さは私たちの目を釘付けにする。

さらに1976年12月7日、スカラ座のオープニングとしてヴェルディの『オテロ』(RAIテレビで初めて生中継)を監督し、1983年12月7日にはプッチーニの『トゥーランドット』を演出した。

この毎年12月7日のスカラ座のシーズン開幕の日には、今後の公演のラインナップなどが発表され、世界各国からこのオープニングの舞台を見ようと様々な要人がスカラ座に駆けつける。

そのためこのオープニングでの上演は、スカラ座の一年の中でも特に重要な意味を持っているのである。

(Il turco in Italia, 1955, costumi: Franco Zeffirelli, Fiorilla (Maria Callas))

その後もゼフィレッリは、1992年にはヴェルディの『ドン・カルロ』、2006年には新版『アイーダ』でスカラ座のオープニング公演の指揮を取ったのであった。

こうして2019年にローマで96歳で亡くなるまで、彼は精力的に活動を続けていた。



3.舞台に生きたゼフィレッリ

幼い頃から劇場に出入りしていたゼフィレッリにとって、舞台や劇場は家のような存在であった。

彼は、アンナ・マグナーニ(Anna Magnani )やマリア・カラス(Maria Callas)などの歌姫のみならず、大道具やお針子、電気工、エキストラの人々とも親しく付き合った。

彼の親やすく、温かな人柄は、それぞれの人材に対して、自身の能力を最大限に活かすことができる環境を提供したのであり、彼は常にその喜びや苦労も劇場にいる全ての人々と分かち合っていたのであった。


ミラノのスカラ座博物館では、ゼフィレッリの特別展のほか、常設展やボックス席の中も見学することができる。

筆者が訪れた時にはちょうどオーケストラと合唱団のリハーサル中であった。

参考:



スカラ座から出てしばしの間、ミラノのガレリア内のクリスマスツリーを鑑賞。

ミラノでは毎年12月の2週目から翌年1月の第1週目くらいまで、クリスマスツリーやクリスマスマーケットが大聖堂を中心に設置されているので、クリスマス気分を味わうにはうってつけである。

また来年もここで煌びやかなツリーが見れると良いなと思いつつ、帰途についたのであった。



Zeffirelli, gli anni alla Scala, a
cura di Vittoria Crespi Morbio

 会場:スカラ座博物館( Museo Teatrale alla Scala)

住所:Largo Antonio Ghiringhelli, 1, 20121 Milano, Italy

開館時間:9:30-17:30

会期:2022年11月8日から2023年8月31日まで

公式サイト:museoscala.org

参考:
「演出家 フランコ・ゼッフィレッリ氏逝去の報を受けて」『新国立劇場オペラ』(2019年6月17日付記事)

「フランコ・ゼッフィレッリ:生誕100年を迎える2023年」『NBS』vol. 455(2022年10月5日付記事)

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