ユニクロがミラノにやってきた! ユニクロ・イタリア1号店、2019年9月にオープン
1. イタリア初のユニクロ、ミラノにオープン
ちょうど1年前の2018年9月、スターバックスがイタリア・ミラノに1号店を出店し、賛否両論、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。
そのスターバックス1号店(Starbacks Reserve Roastery Milano)の真向かいに、今度は、世界を代表するカジュアルウェアを展開するブランド・ユニクロが、2019年9月13日にオープンした。
(左がスターバックス、右がユニクロ)
こちらは、筆者が撮影したオープン当日の店頭の様子。
オープン当日には、和太鼓のパフォーマンスやファーストリーディング代表取締役会長兼社長の柳井正氏の挨拶、先着200名へのカシミア100パーセントのストール(49.9ユーロ)プレゼント、さらに来店者全員にイタリア人アーティストのオリンピア・ザニョーリ(Olimpia Zagnoli)がデザインした扇子プレゼント、さらに数量限定で50ユーロ以上買い物した人に同じくオリンピアがデザインしたトートバックプレゼントなど、様々なイベントが開催されたこともあり、店の前には長蛇の列。
当日入ることを諦めた筆者は後日、このユニクロに赴いた。
1949年、ファーストリーディング現社長の柳井正氏の父・柳井等氏が、山口県宇部市において開業した紳士服専門店が、ユニクロの前身となっている。
1984年に、この紳士服専門店が、ユニセックスカジュアルウェア店「ユニーク・クロージング・ウエアハウス」(UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE)となり、今のユニクロが生まれた。
その後、ユニクロは、アメリカやヨーロッパの主要都市(パリ、バルセロナ、ベルリン)やアジアなど、約2234もの店舗を展開したが、ここイタリアには今日に至るまで一つも店舗がなかった。
イタリア1号店のオープンに際し、柳井社長は次のようなコメントを残している:
「世界のファッションの中心であるここイタリアには、フェラガモやプラダのような世界的ブランドがある。
我々は、グローバルなブランドとして、イタリアのあらゆるブランドと肩を並べることができるようなブランドを提供する。
我々の服によってあらゆるブランドと勝負することができる、これは、日常着の真髄である。」
ユニクロのデザインは、凝り過ぎているということもなく、限りなく基本に忠実である。
その上で、質と色にこだわった商品が展開されている。
色のバリエーションを活かしたディスプレイも、日本では当たり前かもしれないが、来店者を目で楽しませる効果がある。
また様々なアーティストや企業とコラボしたUT(Tシャツ)や、フランスのデザイナー・クリストフ・ルメール(Christophe Lemaire)とコラボレーションしたラインなど、ユニクロでしか手に入らない商品があるのも魅力。
基本はシンプルであるがゆえに、様々な「遊び」ができるところがユニクロの強みである。(キティちゃんのように)
2. ユニクロ・ミラノ店の見どころ・売れ筋
ここで、実際にオープン間もないミラノ店で、目に付いた商品3つを紹介しよう。
まず一つ目は、UTシリーズである。
ミラノ店のUTコーナーは大きく4つのブースに分かれており、そのうちの一つには、日本の浮世絵を使ったTシャツが並べられていた。
日本土産で良くあるようなゆるい感じのものではなく、葛飾北斎や東洲斎写楽の浮世絵を大々的に紹介するディスプレイを見ていると、本格的に日本の伝統をアイコンとして売り出そうとしている姿勢を感じる。
またメンズのブースでは、ポケモンや、
80-90年代のゲームのキャラクター(スーパーファミコンの画質のようにカクカクしているのがポイント)、
尾田栄一郎作の人気漫画『One Peace』シリーズや、
ニューヨークを拠点として活躍するアーティストカウズ(Kaws)がデザインしたシリーズなどが並ぶ。
そしてレディースのブースでは、セーラームーンTシャツや、
日本の製菓メーカーとコラボしたポッキーやアポロ柄のものなど。
キッズのブースでは、メンズのブースよりも、カラフルなポケモンTシャツが並んでいた。
筆者がイタリアに住み始めた時、キャラクターものは子供が持つものという住み分けがなされていることに驚いたことを思い出した。
例えば、日本のように大人の女性がマイメロのポーチを持ったり、大学生がフリルのついたスカートやソックスを身につけたりというような光景はほとんど見かけることはなく、イタリアの成人女性の服装は、カジュアルかつセクシーなものが多い印象を受けた。
また男性にしても、時々変な漢字(例えば「秘めたる力」とか)のタトゥーが入ってるのを見ても、日本モチーフのTシャツといえば外しアイテムであるように見えた。
このような状況に対し、幼い頃から漫画やゲームに親しんだ私たち世代が、これらのUTをどのように日常的なファッションとしてミラノでは受け入れていくかが見ものである。
14.9ユーロのUTは、おしゃれな日常着としてジャケットの下に着るものになるのか、それとも面白Tシャツとして部屋着になるのか。
二つ目に、スーツを着たイタリア人男性に大人気のコーナーがあった。
それは、スーパーノンアイロンのシャツ(Camincia Super Non Iron)のコーナーである。
筆者がユニクロに訪れたのは、オープン間もない平日の昼時ということもあってか、昼休みのコーヒーを飲むついでに訪れた近くのオフィスで働く大人たちの姿が目についた。
価格は、オープン限定価格で19.9ユーロ(通常価格29.9ユーロ)とイタリアにしてはかなり安めの値段であろう。
スーツ姿のまま、シャツコーナーに殺到し、手に取り、家族に電話をかけながら買い物をする男性を多数目にした。
(あまりに次々と人が訪れるので、斜めからしか撮ることができなかった店内写真)
極め付けは、購入したシャツが入った紙袋を片手に、店前で自撮りをするスーツ姿の男性も見かけた。
しばらくは、ミラノのオフィスワーカーの間では、「本当にアイロンいらなかった?」ということが話題になるのであろうか。
三つ目にジーンズコーナー。
こちらは、ミラノ店としても大々的に売り出すつもりか、ジーンズの制裁作工程を説明したオブジェなどが展示されていた。
日本ではのん(能年玲奈)さんのCMが記憶に新しいカーブパンツも、イタリア版広告では、こんな感じに仕上がる。
ユニクロのジーンズは、その工程において、従来よりも99パーセントもの水を節約して生産されているとのこと。
ここでは、「水は、金より貴重である」(Water is more precious than gold)というスローガンのもと、スポーツウェアを中心としたセレクトショップOne Block Downが、ユニクロの持続可能性という理念に賛同する形でインスタレーションを設置している。
またミラノ店では、買い物袋を0.1ユーロで販売したり、日本と同じように着なくなった服の回収を行ったりするなど、環境問題に取り組む姿勢が前面に押し出されていた。
その他、筆者が個人的に気になったものは、次の2点。
まず、イタリア人の姉妹デザイナー、カミッラ・ベントゥリーニ(Camilla Venturini)とジュリア・ベントゥリーニ(Giulia Venturini)によるバッグブランド・メディア(MEDEA)とコラボレーションしたコーディネート。
こちらは、1964年にイタリアで誕生したインテリアブランド・セレッティ(Seletti)によるオブジェ。
その他、マルニ(Maruni)やロッシニョリ(Rossignoli)といったイタリアにゆかりのあるブランドとコラボレーションしたディスプレイを店内に置くことで、ミラノの文化と歴史に対するオマージュを表現するというのが、ユニクロの狙いのようである。
確かに、高価なメディアのバッグともユニクロのコーディネートはマッチすることを効果的にアピールしているようにも思われる。
3. ミラネーゼはユニクロをどのように取り入れるか
こちらは、店内の一角にて、オリンピアのイラストが描かれた壁。
2019年9月現在、ミラノのユニクロでは、彼女がデザインしたカラフルな図案がプリントされた紙袋が使われている。
今、イタリア・ミラノにおけるユニセックスなファストファッションというと、若者に人気なZARA やH&M、年輩の方からも人気なユナイテッド・カラーズ・オブ・ベネトン」 (UNITED COLORS OF BENETTON)があげられるであろう。
また、日本ブランドとして根強い人気を誇るMUJI(無印良品)も、ここイタリアにおいて衣料品を扱っており、シンプルで良質なものを好む人に人気である。
これらの強豪たちと、ユニクロは、いかにして差異化を図り、人々の生活に入っていくのであろうか。
まだまだイタリアにおけるユニクロはオープンしたばかり。
流行に敏感なミラネーゼたちのスナップを見ると、ZARAや& other stories、COSといった手頃なアイテムと、バレンシアガ、グッチ、クロエ、サンローラン、ドルガバといったハイブランドのアイテムを組み合わせるのが実にうまいと感じる。
ユニクロは彼・彼女たちのコーディネートにどのように使われていくのか。
ますますファッションスナップを見るのが楽しみになるのであった。
参考:
・milano.repubblica.it(2019年9月13日記事)
・MILANO. IVENTS. it(2019年9月10日付記事)
・marieclaire.com(2019年9月12日付記事)
ユニクロ コルドゥーシオ広場店(Uniqlo Piazza Cordusio)
住所:Via Cordusio, 2, 20123 Milano, Italy
営業時間:10:00-20:00
公式ホームページ:uniqlo.com/it
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