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『殺人狂時代』(1967)マジメとフマジメの間①

院長の掛声精神科は踊る 平畑静塔


注)今作は、古い作品であるために、今では禁止となった言葉が多く出てくるのですが、触れないように記載していくので、肝心なところが分かりにくいかも。                              また、チャップリンの『殺人狂時代』とは関係ありませんので、あしからず。

題名から想像していたものと、大きく違っていた。
あんな仲代達矢は見たことがない。今作の仲代さんは、髪はぼさぼさの無精ひげ。瓶底めがねにヨレヨレスーツ。というなかなか情けない風貌。おまけに水虫持ちで、うだつの上がらない(おそらく)学生に馬鹿にされているであろう、大学講師役。

仲代達矢といえば、印象的なのが目力なのだが、あの爬虫類のような目がどうにも苦手で、長い間、仲代さん関連の作品は見ていなかったのですが、ある日を境に凄い人だったんだあと見るようになった。

今作を、もっと昔に知っていたら、出会いが早まったはずと悔やまれる・・・・・・。

日本人口調査審議会なる組織は、増えすぎた日本の人口を調整するため、秘かに殺し屋を養成し、殺人による人口減少を図っていた。

この殺し屋が、奇抜な飛び道具の持ち主ばかりで、杖の柄に短刀を仕込んだものや、松葉杖型のマシンガンとかはかわいいもので、トランプとトランプの間に剃刀の刃を挟んで投げる奴とかいる。
そして、一番奇抜だったのが、義眼に毒針を仕込んでる女。

で、どいつもこいつも、どんくさいほどに、滑稽に自滅していく。

そして、仲代さん演じる講師ですが、まるでジャッキーチェンのように、偶然だかラッキーだかで、殺し屋たちを亡き者にしていく。

命を狙われている講師は、殺し屋の目をくらませるために、変装というか、パリッとしたスーツ姿になると、本気アクションになるのだが、あの爬虫類的な眼差しは物足りなかったように思う。

今作は、公開直前にお蔵入りになったとか。理由は「水準以下だから」
しかし、7ヶ月経った2月に、突然公開(2月は客の入りが最も少ない時期)となったが、ろくすっぽ宣伝もしていないのだから、全く客が入らない。
結果、東宝始まって以来の不入りだったとか。

それもあって、もちろん作品の面白さもあって、カルト作品として人気となっている。
幾分、同監督の『江分利満氏の優雅な生活』を引きずっている感もあるのだが、奇抜なセットに、奇抜な武器、そして奇抜なキャストは、なるほどカルト的人気も納得なのだ。

そういえば、天本英世さんは、昔好青年役をしていた。『二十四の瞳』とか。今作もそうだが、いつから死神博士みたいになっちゃったんだろうか・・・・・・。


院長の掛声精神科は踊る 平畑静塔

ちょっとどうとらえるのか難しい句。ただこの句の作者の平畑さんは、精神科のお医者さんである。しかしこの句の「院長」は、本物の院長なのだろうかと、ふと考えてしまった。

『殺人狂時代』(1967)
監督:岡本喜八
脚本:小川英/山崎忠明/岡本喜八
原作:都築道夫
出演:仲代達矢/団令子/砂塚秀夫/天本英世

参考文献:「マジメとフマジメの間」 岡本喜八

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