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お客様は神様ではない

飲食店でのアルバイト

私はコロナ禍の数年前から、ひょんなご縁で飲食店でアルバイトをしている。
こんなうつ病で朝早く起きられない、週五日も働く体力もない人間が、本当にひょんな出会い(再開)から始まり、今でも同じ店でアルバイトをしている。

一度コロナ禍で閉店し、オーナーが変わって再開された店。
再開されてから二年経ってまた戻ってきた。
それは、前に一緒に働いていた仲間がまだその店に居たから。

前の耐えられないアルバイトを12月で辞めてから、少し家の片付け等をして落ち着こうと思ったのだけれど、たまたま連絡をしたその店の知人から「人が足りないから来てほしい」と言われて1月中頃からまたその店で働き始めた。

私にとってこの店は「接客業」を初めてした場所であり、沢山の出会いと経験、そして勉強した場所だ。
実は二年前の夏にアルバイトの面接に行ったんだけれども、その時は新しい会社の人の面接で「どうして再開後すぐに面接に来なかったのか」と言われ、大した返事も出来ず、採用されなかった。

一緒に働いていた仲間は現在その店舗の店長となっていて、店長の知り合いとして入らせて貰った。
なんだ、面接なんてしなくてよかったじゃん、とも思ったけれどもそれはまたあれだろうな、タイミングというか、悪夢のような事務アルバイトも経験にはなったと思うし。

戻るべきして戻ったと思っているから、今はそれでよし。

狭くて慌ただしいお店

私が働いている店は決して広くも綺麗でも無い、お酒は出すけれども居酒屋ではない。
とある料理一品のみの昭和感漂う店だ。
そんな一品を求めて、有難いことに毎日沢山のお客様が来てくださり、休む間もなく働いている。
多分、居酒屋とかなら私は働けなかった。

入った当時でさえ記憶力が超低下していたので
「1番テーブルにこれ持って行って!」
と言われても2番テーブルに持って行くようなヤツだった。

いつも慌ただしいこの店は、何度か来たことのあるお客様だったら理解してくださる方が多く、許されてしまうのもこの店の良い所…なのか?

でもたまに何を考えているのかわからない人や、そこかしこに数少ないメニューを置いてあるのに無いものをオーダーする方もいらっしゃる。
その時は丁寧にご説明するのだが、大抵の方は納得されて改めてオーダーしてくださる。

特にお酒は面倒だ。種類は少ないが、度数の強いお酒等はショットグラスとボトルと水の入ったコップを持って席まで行く。
お客様の目の前で表面張力までショットグラスにお酒を注ぐ。

あと、大柄なお客様がいらっしゃると、動線が無くなる事もあり、向こう側の席まで持って行くのにも一苦労するような狭い店。そんな店の中で何時間も右往左往する。

そんな狭い店だからこそ、お客様全員の状況を把握しやすい。
マスクをつけたり、テーブルに置いていたスマホをカバンに閉まったり、上着を着たりし始めたらそのテーブルの分の伝票をレジに入力したり。
複数人の場合は、食べ終わってもダラダラと飲んでいるお客様も多いので、なかなか精算にまで時間が掛かるが、誰か一人がトイレへ行って、誰かが財布を出したりし始めたら伝票を入力する。

私は何度も「ありがとうございます」を伝える。
「数多あるお店の中からこんな小さなお店を選んでくださってありがとうございます」という意味も含まれている。

お客様への接し方

私はどんなお客様に対しても変わらない対応が出来ていると思っている。

まだそんな変な?喧嘩を売ってくるようなお客様に出会っていないからか?
と思うのだけれども、他の従業員の話を聞いていると「そんな事で怒るか?」
と思う事も多々ある。

素っ気ない態度を取られても、お会計で一万円を投げるように渡されても、レシートを渡して「いらない」と言われても別に何とも思わないし。
以前はお金をトレーに置いてもらっていたのだけれども、小銭をそのトレーへ投げ入れるような人が居たが、そういう人に対しては「腹が立つ」ではなく「誰からもマナーを教われなかった残念な人」だと思うようにしている。
それは飲食店でなくても誰かが買い物をしてお金を出す時にわかる事だけれど。

あと、店自体は前のオーナーのそのまた前からの店として存在しているので歴史は古い。長年来てくださるお客様も多数いらっしゃり「私はもう40年ぐらいここに通っていてね…」等と昔話を展開されるお客様もいらっしゃる。
そういうお客様とは結構会話をするのだけれども、いかんせん忙しい店。途中で配膳したりしながらも話を聞いたりする。
私が知っている限りのこの店の歴史を思い出しつつ、お話を聞かせていただいている。

それだけ長年に渡り、愛されてきたお店だから、私もお客様には美味しく食べて、気持ち良く帰っていただきたい、と思う。

なので、私のメンタル的な面はめちゃくちゃ安定しているのがこの店の仕事中なのだ。
「私はここの店員」という肩書きを背負い、堂々とお客様と接している。

元々人と話すのは苦手な部類だった自分が、唯一楽しくお話を聞くことが出来る場所が職場だなんて最高じゃないですか?

つい数ヶ月前、メチャクチャ忙しい時に、何度もオーダーされるお客様二人組がいらっしゃった。お酒も何杯も飲むし、追加オーダーもあるし、薬味持ってきてくれと何度も言われてそれに全て一人で対応していた。
勿論、他のお席はいっぱい。
配膳、ドリンク作り、食器洗い、調理場の人とお客様の様子を見ながら、一人で慌ただしく動き回っていたからか。

その二人組の方のお会計の時。
「なんや忙しいのに色々言うて、対応してくれてありがとうな、おつりでジュースでも買ってな!」
と、お釣りは200円ぐらいだったけれども、ちゃんと見てくださる方もいらっしゃるのだと思ってとても嬉しかった。

初めてのお客様にはシステムが良くわからない方もいらっしゃるので、簡単に説明してからオーダーをとる。
特製の調味料の説明や、あまり居酒屋とかでは見かけないお酒の説明まで、知っている限りは丁寧に対応する。

別に何の努力もしていない。知っている知識を答えているだけ。丁寧に。

相手も同じ人間

「お客様は神様」では決してない。同じ人間。
だけど「サービスする側」「サービスされる側」、「お金を払う側」「お金を頂く側」に分かれる。そこを人間と神とで分けるなんて大袈裟だ。

もし何か問題があったとしても、同じ人間だったら、同じ言語で伝わるのなら大丈夫だと思っている。
その「大丈夫」とは根拠のないものではなく、自分がお客様に対しての誠意ある接客を常にしていると自負しているからだ。
(たまに忙し過ぎてミスをすることはあるけれど)

他の従業員が「嫌な客だ」と言う人のパターンを聞いていると
・従業員を人として見下している
・飲食業自体をバカにしている
そんな横柄な態度が顕著なお客様こそ従業員に嫌われているような気がする。
でも私はそんな事は気にしない。そんな人はどこにだっているし、立場が逆になったら「こんな事は言わないようにしよう」と勉強になる程度だと思っている。

どうしてキレないのか(私のルーツ)

同じ人同士、あれだけ昨年の「死にたい」にまで繋がりそうな職場で沈黙の4時間勤務だった事を比べると、体は疲れるけれども今の店は天国にしか思えない。
という比較もあるのだけれども、この店に数年前に入った頃から自分のお客様に対する態度は全く変わっていない。
それは何故か。

「やっぱりあんたも商売人の血を引いてるんやねぇ」

生前、母が言った言葉。
初めての接客業でバイトを始めた私が、仕事から帰ってきてその日お店に居たお客さんの話を母にはずっと話していた。

実は、父は私が生まれる直前までスナックの店長をやっていたり、母は若い頃ゴルフ場のレストランで働いていた事もあったりと、接客業には長けた両親だった。
人当たりが良いのは両親の態度を子供の頃から見ていたからだと思う。知らない人に対してもこう対応するのが当然だ、と思っていた。

そして、母の祖母(私からだとひいお祖母さん)は、長崎で有名な「大村寿司」と言う押し寿司のお店を一人で切り盛りしていた。母は子供の頃からお祖母さんの仕事っぷりを見て育ったと言う。
「朝は早くに具材を一つずつ味付けして、大きな釜でご飯を炊いて…一人で全部やってたんよ。私がもう少し早く生まれていたら継ぎたかったなぁ」
と良く話していた。
お金が無いお客さんには咎めもせず「また今度持ってきて」と言って何度損をした事か、と言う話も聞いたけれども、ひいお祖母さんの気持ちもわからなくは無いなぁ、と思ったり。

今の店も私が作ったわけでは無いけれども「美味しかった!ごちそうさま!」と言われると本当に心から「ありがとうございました!」と声が出る。とても気持ちの良い言葉を毎回聞いて、気持ちよくお返事出来る、それだけでも私にとっては最高のお仕事。

今日も働いて良かったなとか、疲れたけれどお客様が笑顔で帰ってくださって良かったなとか。
そう思うと本当に有難い経験をさせて貰っている。
メンタルは安定するわお給料は頂けるわでこの上なく有難いお仕事です。

こうしてお仕事の話をつい書いてしまいましたが、そんなお仕事に最近振り回されており、なかなか長文noteも書けず。
今日も夕方から出勤です。寝違えて首が痛いけど頑張るよ。

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