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創作集-空想

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2021年7月の記事一覧

悪戯

ある日、箱が届いた。
「箱」が届いた。

最初、実家から仕送りが届いたのかと思ったが、仕送りが送られる時は、必ず前日には連絡をくれるので違う。そして配達員から渡された時、それなりの大きさの箱だったためそれなりの重さがあるのかと思って身構えていたら、拍子抜けするほどに軽く、腰を抜かしてしまった。

奇妙な事に、中を開けると、軽い、どころか何も入っていなかった。

宛名は、「○○株式会社」となっていた

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転機

平凡な家庭に産まれて
平均的な小学校中学校高校大学に通って
それぞれ平均的な成績で出て
クラスでの立ち位置も真ん中くらいで
運動神経も普通で
身長体重も普通、中肉中背で顔も普通
友人も、多くもなく少なくもなく、普通な奴らばっかりで
ファッションは専らユ○クロとか。
初めてのバイトはスーパーの品出し。
初めてのデートは映画。別に浮気とか、トラブルとか、そんなんじゃなく自然消滅で別れて
アホでもなけれ

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旋律

出先で、こじんまりとした良い雰囲気のバーがあったので、そこで少し飲んでいくことにした。
カウンターの奥の方の席に座り、当たり障りのないカクテルを嗜みながらボーッとしていると、隣の席に、お世辞にも綺麗とは言えない身なりのおじさんがどさっと座った。

「見ない顔だねぇ。ここ、初めて?」

いきなり話しかけてきた。常連なのだろうか。
バーには似合わない見た目だけれど。

「あ、まぁ…。仕事の関係でこの辺

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301

空き瓶が、ゴロゴロと床を転がる。

蹴っ飛ばしたら、勢いよくぶつかって、粉々に砕け散った。

窓の外は宇宙。
この部屋の中が地球。
電子レンジが日本。適当。

魚の目玉をくり抜いた時に、私は最強になった。

さっきから聞こえる笑い声が、私の脳から喉から口から発せられたものだと気付いた時には、この世は私1人しかいない、極楽浄土であった。

砕け散った硝子はそのまま溶けて地中に沈み、川を形成した。

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