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よく読み、よく味わう(33/100日)

連休中、子どもと一緒にブックオフへ行った。そこで見つけたのが、『西の魔女が死んだ』(著/梨木香歩)だ。

タイトルは、もちろん知っている。ただ、読んだことがあるような、ないような。記憶が定かでなかったし、つい先日、子どもの教科書に「おすすめの本」として紹介されていたこともあって、購入した。

読み始めてすぐに、「ああ。この話は知っている」と思ったけれど、細部までは思い出せなかった。だから新鮮な気持ちで、はじめからじっくり読んだ。

驚いたのは、ものすごく細かな情景描写だ。おばあちゃんが住んでいる家の中や、その周りの庭。どんな花が咲いていて、飼っている鶏はどんな動きをするのか。資源ごみとして出されている雑誌が、湿っている様子。その湿った感じが、主人公にとってどんなふうに感じられたのか。

そんななにげない、それでいて物語の世界を形づくり、彩るパーツの一つひとつが、とても細かく丁寧に書かれている。まるで、読み手の目の前にその光景が浮かんでくるみたいに。景色が見えるだけじゃなく、においや、音や、温度を感じられるほどに。

全体を通して、この小説には、こうした繊細な情景描写が散りばめられている。それは単純に景色を伝えるものであったり、シーンを通して人物の心情を表現していたりもした。

「感情を書かずに、情景(シーン)を書く」これはここ最近、ずっと頭の中をぐるぐるしている言葉でもある。この間、ライティングゼミで教わったのは、読み手を惹きつけるインタビュー原稿の書き方として、だった。

シナリオライティングも行うわたしは、「記事」のライティングと「シナリオや物語」のライティングは別物だと考えていた。が、めざす文章によっては重なる部分も大いにあるのだと知った。

今までわたしは、書くときも読むときも、ぼやーっとした視界でその世界を見ていた気がする。要は、雑だった。けれど「感情を書かずに、情景(シーン)を書く」手法を学んでからは、文章を読みながら「あっ、ここにシーンが書かれている」と気付けるようになった。文章をより深く読めるように、味わえるようになったと感じている。

ゼミは仕事のために受講した。けれど小説の世界観により浸れるようになったという意味では、人生そのものが前よりもうんと豊かになった。

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