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Q

マスクを外すと春のにおいがした

暫く、心地よい様な気がして
桜並木の遊歩道を歩きながら
人間らしい散歩なんてしたのは何時ぶりだろう、なんてぼうっと考えてしまい

人間らしい?
ではこれまでは何だったのかと問いかけ

はっと我に返った

春に騙されちゃいけない

春に連れていかれたら終わりだ
春に飲み込まれてしまったら戻れない

そんな事すら忘れてしまっていた

うららかな日差しの中でまっすぐ、まっすぐのびる住宅街の
一本間違えたら永遠に帰れなくなる何の変哲もないアパートや戸建ての並ぶ一種低層住専を歩いているとき
ふと、角を曲がって開けたずうっと先に山が見えて
その手前に線路が見えて
平日の昼だからひとけもなく
世界と私だけになったような永遠に続く住宅街をあるいていて
線路に吸い込まれそうになるとき
それは春の仕業である

大人になってから気づいたのだけれど
死にたい、って思うのは
自分が生きてるってことに気づいてしまっているからでしょ

生きているかわからなければ
生きていてつらいだの楽しいだの
そんな事象はそもそも起こり得ない訳で

数学で出てきた「点P」というやつ
PはpointのP、は解るけれど
じゃあQは?と聞いたら
Pの次だから、と

なんていい加減なんだろう

生まれてきて、わたしが点Qだったら、
辞めちまいたいと思うに違いない

生きている、っていう単語
生きるという単語
習わなければきっと自殺者なんて出ないよ

作ったものなんかに支配されてはならない


春のにおい

雨の日はノスタルジックだけれど

自分がどこまでかわからないようなあたたかな晴れの日がいちばん、
心地良いような気になってしまう時がいちばん

春にのみこまれかけているんだ

気をつけて

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