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アーティストはどこへ行くのか(in NY)

賃貸市場の回復と家賃の高騰

NYの家賃が高いことは有名ですが、先日以下のような記事がニューヨークタイムズに載っていました。NYで何かを成し遂げた、と思うことの一つは一人暮らしをかなえることだそうで・・・賃貸市場が回復してきたことで、急に家賃が更新時に2倍になったり、家賃高騰でシェアに後戻りしたなどの話が出てきます。

この記事が面白いのはコメント欄で、「自分の親が来たときは月20ドル(!?)の家賃だった」とか「自分はレント・ステービライズ(家賃安定策)の住宅に住んでいるので、気の毒に思う」とか、「自分は2000万くらいでマンハッタンに家を買えた」などのコメントが並んでいます。

つまり、早くからマンハッタンに居住している人は安定していた不動産市場の恩恵を受けているわけです。マンハッタンは「これから来る人」にもはや優しくないまちになってしまったと言えます。

これって、若い世代、特にアーティストなどが新しく住むことができない状況ということで、マンハッタンがこれまで培ってきた文化を失う状況が生まれつつあるのではないでしょうか
(そういう意味で分譲は高止まりしていますが、新しく来た人にも賃貸は手頃なものが見つかる東京は今後も文化の中心地となり得るかも・・・もっとも、マンハッタンは島で拡がりようがないということがありますが)

アーティストはどこへ行ったのか

では今や超・高級ショッピング街となったSOHOにいたアーティストたちはどこへ行ったのでしょうか。
数年前にNYの研究者から、ブルックリンが高級化したことで、アーティストはウィリアムズバーグ(ブルックリン・マンハッタン側)からもさらに外側に移動して、ブッシュウィック辺りにうつっているよ、と聞いていました。ただし、治安的においそれと一人で行くような場所でもなさそうで・・・今回はフルブライターの友人が一緒に行ってくれました。

ブッシュウィックは、ブルックリンの近年開発が進む川沿いからさらに東に入っていたところにあります。

カラフルな壁画が並ぶブッシュウィック

これらの壁画は「The Bushwick Collective」として、「オープンエアの芸術が並ぶまち」と言われています。地元出身の一人の男性がいろんなアーティストをよんで、壁画を描いてもらう活動を2011年から始めたそうです。(下記サイト参照)

シアターがかつて牛乳工場だったところに新しい拠点を作ったり、ブッシュウィックは雰囲気そのまま、文化的な活動を受け止める場所ともなっています。

タダでものを交換できるコーナーなど、自由な感じです

古着屋さんやカフェ、カジュアルなレストランもたくさんあるし、きっと若い世代やアーティストが住みやすい場所なんだろうと思いきや・・・streeteasyで調べてみたら最も安い賃貸が1bedroomで1700ドルでした。かつ、平均賃料は$3,233/月とのこと。
もちろんマンハッタン(平均$4,265/月)よりは安いのですが、ここでもそれなりに高止まりしているようです。やはり地下鉄で30分でロゥアーマンハッタンに着くという立地のせいなのでしょうか。
雰囲気としては、川沿いのブルックリンが失ってしまった自由な雰囲気が残っていて、道を歩いている人や食事をしている人も若い世代が多いです。
そのこともあって、ブルックリンの中では第2位の人気だとのこと。

壁画に象徴されるような、自由なまちの雰囲気は家賃高騰の中で、ブッシュウィックでもいつまで保たれるのでしょうか。人気が出たのは自由な雰囲気によるものですが、人気が出れば賃料は上がっていきます。

次の場所として、さらに東に行くクィーンズにすでに移りつつあると思いますが、クィーンズもブルックリンの家賃高騰を受けて、波及効果でジェントリフィケーションがすでに始まっているようです。

迫力ある壁画が中心部の景観となっています