朝井リョウさん『正欲』を読んで。
この本の中で一貫してあるフィロソフィーには、浅田彰さんが『構造と力』で残した「ノリつつシラけ、シラけつつノる」と共通する部分が見られた。人間は社会の構造によって生かされていると考えるのが「構造主義」であるが、浅田彰さんは、構造主義における象徴秩序に組み込まれていないカオスな部分が人間の社会にはあると述べている。そこに焦点を当てているのが本書であると感じた。私たちは最近よく多様性という言葉を耳にしたり、実際に使ったりしているが、その「多様性」という言葉自体も、象徴秩序の枠の外