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クックパッドでBtoBオウンドメディアを始めて3ヶ月経った振り返りと今後の話

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マーケや戦略企画等々を担当している、
クックパッドのBtoBオウンドメディア「FoodClip」を始めて3ヶ月が経った。昨日4月までの社内向けレポートを仕上げたところで、一度振り返りと思っていることを書いてみようと思う。

◯やることになった背景

オウンドメディアを立ち上げる話が出たのは昨年の7月頃だったかと思う。
「FoodClip」はクックパッドのレシピサービス部門ではなく、
主に企業の広告/マーケティング予算をいただいている事業部で作っているものになるが、当時の事業部長から相談をされたのが始まりだった。

当時僕は営業だったが、ミッションのフィールドセールスとしての仕事と共に、「マーケ/営業スキームの構築がしたい」と勝手に色々していた。
5月くらいにこういう資料を部長に送りつけたりしていた。

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BtoBマーケの基本というかなんの変哲も無い図なのだが、
向き合う業界自体の特殊さや、この分野の広告としては長年トップでやってきたこともあって、属人化が強めで、こういう考え方はほぼない組織だった(それで売れていたので、仕方ないことだとは思う)。

ただ、昨年1月に入社して以来、
出稿先の選択肢や手法の広がりという出稿主側の状況や、
数社ずつながら徐々に現れるデジタルシフトの流れ、
競合メディア/SNSの台頭による外部環境の変化が起きているのを感じ、
「現状を何かしら変えなければならないタイミングなのかな」と思い、
前職で得たBtoBマーケの知識を絞り出しつつ上記のような形で、
少しずついろいろなことを進めていた。

そういった流れで、ひとまず僕に話が下りてきた感じだったが、
当時進めていたスキーム作りの中でもいずれやるべきではあるが、
まだ早いかな(当時はまだメルマガがやっと効果出だしたかな…くらいだった)と個人的には思っていて、
あと前職が「BtoBメディア」という立場で、どちらかというと企業が内製しちゃうオウンドメディアは売上の阻害要因だったし、
いくつもある正直上手くいっていないものも冷ややかな目で見てきたので、
「やるのか…大丈夫かなこれ…」という気持ちで当時はいたのを覚えている。

◯やるべきだと思った理由

とは言え、状況を考えると「あったほうがよい」と思える理由が明確にいくつかあった

1.Web上に食×マーケティングについての知識を集約した場がない

今後後追いのメディアも出てくるんだろうなと今は思っているのだが、
上記のテーマで今運営しているのは「FoodClip」くらいしかないと思う
宣伝会議やMarkezineなどで食品/飲料メーカー・商品を取り上げることはあっても、 想定読者を業界従事者に絞るか否かで、同じネタでも視点や切り口が違ってくる。
特に小売流通を挟んだ販売構造がベースにある中で、
単純に「商品⇔消費者」だけの関係性で括れないのがこの業界の難しさだと思っていて、それをコンテンツにするにはある程度の「共通言語」が不可欠だと思っており、それが許される場がWeb上に存在しないのが、
以前の記事で書いたように、未だ情報収集の経路の第1位が紙面の「日経MJ」、2位が「展示会」である所以ではないかと思う。

「そもそもWebで見る人はいるのか、いないから無いだけではないのか」という不安ももちろんあったが、課題を抱えているマーケ・広告・販促担当者がいないはずはないと思っていたし、まだないのであれば少なくとも反響は得られると思っていた。

2.自分たちのサービス内容/出来ることが全然きちんと理解されていない

レシピサイトとしては日本最大級のものであることはご存知いただけているかと思うが、それ故に企業向けに提供できる価値がかなり色々とある。
レシピや食材についてユーザーが検索したデータを莫大に持っていることで、その時々の食卓トレンドがわかることはもちろん、規模が大きいゆえに他データとの連携精度が高く、スーパーでの購買データと連携することで、「この商品を買う人はこういう検索をしてる」だったり、
「この広告を見た人がどのくらいこの商品を買ったか」みたいなこともわかるようになっている。
正しく認識してもらえれば、既に有効に使っていただけている顧客もいるのだが、まだまだ広く知らしめることができていないというか、「主婦がみるレガシーなおっきいメディア」位の認識しかないところが大半だと感じる。その啓蒙と情報発信の場として、オウンドメディアの存在価値はあると感じていた。

3.営業以外の顧客との接点開拓

サービス規模に比べて営業の人数がそこまで多くないため、
担当がしっかりカバーできるのが大手の数十社のみという状況があった
そもそも食品/飲料の業界でWeb広告予算が十分にあるところが限られているため、これはわりと妥当というか当然の判断である。
ただ、ここに限らずレガシー業界の広告では、今までやってこなかったところが「デジタルシフト」の号令の下突如方針転換を起こす
というようなことは多々起きがちで、その時に選択肢として想起してもらうための仕込み=情報のインプットのために、営業以外の顧客接点としてできる限り網を張っておくことは絶対に必要なことだと考えていた。

◯ローンチから3ヶ月経ってみて

ここまで偉そうに語っているが、実際今の形にメディアを立ち上げてくれたのはほぼほぼ編集長の渥美まいこさんであり、渥美さん中心にほぼ社内リソースのみで、無事「FoodClip」は3ヶ月を迎えることができた。
色々な不安要素はあったが、概ねよい滑り出しだと思っている。
その理由としてのトピックをいくつかまとめる

●「業務時間中に読むメディア」としての定着

「クックパッド」としてBtoBメディアを作る上で不安に思いつつ、結果一番良かったと思っているのがココだ。
真面目な気質の食品業界の方々が「仕事中に読むに値するメディア」と評価してもらえるのが存在価値であり条件だと思っていたが、
これに関しては早い段階で平日と休日のPVにはっきりとした差が出始め、最近行ったアンケートでも勤務中の閲覧が圧倒的に多くなった。これは本当に安心したし嬉しかった。

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●コロナウイルスによる食卓変化のトレンド解説を中心に、掲載コンテンツの満足度がかなり高い

ローンチした2月4日以降、コロナウイルスの拡大によりに食卓にも大きな動きがあった。それはクックパッドの検索データにもダイレクトに反映される。
そうした変化を捉え、データを紐解いた解説/予測をした下記のような記事を定期的に更新しており、この辺りを中心に、コンテンツには非常に高い評価をいただけている。


業界関係者の関心事にクックパッド独自のデータや視点を乗っけてコンテンツ化することで、コンテンツの価値を作り出せ始めているかなと思っている。

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●社内リソースの有効登用/運用

先述の通り、ほぼ管理/更新に外部ツールを使っている以外は、運営を社内リソースで行っている。
専任は編集長のみで、記事執筆/編集作業は編集長以外にも、普段CLへの提案を通じて関心事や食トレンドに触れているプランナー/ディレクターが担当し、記事の更新やデザイン面も普段CLのタイアップ制作を担当しているスタッフが行っている。
皆主業務とともに行っているため、リソース、スケジュール管理に留意しつつではあるが、「事業部の持ちもの」としてメディアを共有している状態がある程度できており、記事を書くことでのメンバーのアウトプットの場も作り出すことができている。

●営業数字/事業部への貢献

⇒主業務が営業企画とマーケを兼任しているのでここが主に僕の担当領域であり、お金を稼ぐための事業部で運営するオウンドメディアなので、営業数字への貢献は必須になる。
これはどの企業でも同じことだとは思うが、オウンドメディアを運営する上でここの部分は永遠に課題になる。

ここ3ヶ月で言えば、ちょうど状況が大きく変化したことによって、
営業が顧客から情報を求められる機会も増え、コミュニケーションの手段として「FoodClip」が貢献した部分が多々あったし、
MAツールのスコアリングタグを全記事に入れているので、接触履歴が追え、顧客がどの記事に関心があるのかを把握することも出来るようになり、接点作りには貢献できている印象がある。

またマーケ的な観点でも、メルマガ登録を中心に新規リードの獲得が順調にできている。
仮に外部メディアで食品/飲料系のリードを獲得しようとすると単価が¥30,000~¥40,000になることを考えると、既にある程度のコストは回収できていると言ってもいいくらいは獲得できている。

●読者の定着/ロイヤル化

読者に対する施策として、登録者限定の「NewsLetter」というメルマガを月1〜2回のペースで配信している。
登録者数自体も順調に伸びているが、最近の開封率が50%を超えており(他のマーケ系メールが15〜18%ほど)、
それ以外の数字もかなり異例の数字を叩き出している。徐々に読者の定着や一部のファン化も感じ始めている。

◯今後の課題とやりたいこと

●さらなるグロースのために

色々ポジティブなことを書いたが、PV、UU等は最低限のKPIは達成し続けているだけで、まだ急激な成長は遂げられてない。読者のそもそもの母数が少ないところもあるが、今まで集まっていなかった分、様々なチャネルに点在しているであろうターゲットにしたい読者を、どのように引っ張ってくるかが今後の課題になる。
少し趣向を変えた企画や他メディアとの連携など、考えていかなければならないという課題感がある。

●「専門メディア」と「リード獲得型オウンドメディア」との両立の継続

これもあるあるかなとは思うが、
「食×マーケティングの専門メディアとして読者を獲得していく」という【目標】と、「オウンドメディアとして新規リードの獲得、営業に貢献するチャネルである」という【目的】を、
しっかりと両立させる必要があると考えている。
とはいえ、グロースを目指していく中で一時的にどちらかがどちらかを阻害するように見えるタイミングも訪れるのではないか、と思っている。現状でもTOPバーに自社主催セミナーや媒体資料のDLへの誘導が存在しているが、ちょっと目立たせ過ぎでは、とか、記事内に自社プロダクトの誘導はどの程度ニュアンスとして残すか、とか考えることはけっこうある。

●この先の「ニューノーマル」を予測し、読者と共に探っていきたい

「FoodClip」ではこの3ヶ月で大きく変わったトレンドや状況を、速報性高く伝えてきた。
それは今後も続けていくが、どうやら現状は一過性のものには終わらず、これから新たな価値観や文化、習慣が生まれることが予想される。
メディアとしてそんな「これが続いた先の普通=ニューノーマル」を予測し、先読みし、読者に提示して共に考えていくことが必要だと考えている。

●コミュニティを作っていく

何事も物事が大きくなるには、コアなコミュニティがそれを広げることで起こると思うが、同様に「FoodClip」も読者のコミュニティを作っていきたいなと考えている。
そこでは我々の顧客になるようなメーカー担当者も、たまたま食ビジネスや最新トレンドに興味があり行き着いた主婦の方も一緒になって、
食の話題の議論をできるような場が作れたらいいなと思っていて、
またイベント等出来るようになれば、NewsLetter登録者限定のイベントなども企画しようと考えている。

◯さいごに

けっこう長くなってしまった…。読んでいただきありがとうございます。

FoodClip、本当に最小限のリソースで頑張っている感じなので、
本記事や実際にページを見て、寄稿の希望や何らかお手伝いしたい、みたいな方はお気軽に、下記や僕に直接連絡してくれてもいいのでお知らせいただければ幸いです。

個人的にはこれを始め色々な施策の導入やスキームの構築に色々取り組んでいるので、来年くらいまでにどこかに見つかって事例として取り上げてもらえるくらいになれるように頑張っていきたいと思いますー。
今後もやってることは適宜更新していきたい。

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