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2021年5月の記事一覧

『茜色に焼かれる』—石井裕也監督インタビュー書き起こし

『茜色に焼かれる』—石井裕也監督インタビュー書き起こし

 石井監督に対する映キャンのインタビュー(2分少々)を書き起こした。

––––ご自身の思いを映画に綴ったということで、コロナ禍でとても大変な思いをしているシングルマザーの女性を尾野真千子さんが演じた作品になります。石井裕也監督、この作品を譬えるとしたならば、どんな言葉が。
石井)まさしく尾野真千子さんそのものの映画だと思います。
––––それは尾野真千子さんを起用した意味っていうのもプラスで出て

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『茜色に焼かれる』完成報告会書き起こし

『茜色に焼かれる』完成報告会書き起こし

 4月27日、石井裕也監督の最新作、尾野真千子さんが主演を務める映画『茜色に焼かれる』の完成報告会が行われた。最初は試写会と舞台挨拶の予定だったのだが、緊急事態宣言発出に伴い、急遽無観客での「報告会」という形に変更された。それでも監督はじめ、尾野真千子さん、オダギリジョーさん、永瀬正敏さん、和田庵さん、片山友希さんが登場し、濃密なトークが繰り広げられていた。その模様がYouTubeでノーカット公開

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「ナメられる」ことへの抗戦—映画『茜色に焼かれる』を見て—(ネタバレあり)

「ナメられる」ことへの抗戦—映画『茜色に焼かれる』を見て—(ネタバレあり)

 昨日、待ち焦がれていた『茜色に焼かれる』を見てきた。素晴らしかった。映画の紹介では、主人公の境遇や仕事、ちょっと不思議に見える口癖などに焦点が当てられていたのだが、実際に見たら、主人公をはじめとする登場人物の振る舞いにはすべて「一本の筋」が通っており、何らの矛盾も感じなかった。これは石井監督の脚本と、主演の尾野真千子さんの演技力(監督の言葉を借りれば「化け物級の演技」)、他のキャストの力量に依っ

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良子さんの「お芝居」—映画『茜色に焼かれる』を見て その2(ネタバレあり)—

良子さんの「お芝居」—映画『茜色に焼かれる』を見て その2(ネタバレあり)—

 『茜色に焼かれる』を見てまだまだ余韻に浸りつつ、とりとめもないことをあれこれと考え続けている。ここではその一つ、良子さんの「お芝居」について考えたい。 

 「田中良子は芝居が得意だ」映画はこの一文から始まる。けれどそれ以上の言及は何もないままに物語が進む。途中、亡き夫の命日に集まったバンドのメンバーから、純平は良子が「アングラ劇の女優」だったことを聞かされ、「情念」だの「すげえ芝居をする」だの

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タイトルの意味するもの—映画『茜色に焼かれる』を見て その3(ネタバレあり)ー

タイトルの意味するもの—映画『茜色に焼かれる』を見て その3(ネタバレあり)ー

 『茜色に焼かれる』を最初に見たのが公開日の5月21日、以来この映画は私の頭の中に住みついてしまい、日々この映画のことをあれこれと考えている。今日はこのタイトルについて、ちょっとまとめてみた。 

 映画の中で、茜色はさまざまなところに差し込まれている。事故のシーンで画面の手前に映る柱、神社の鳥居、良子さんがデートで身につける服、純平くんのTシャツと自転車、熊木くんといよいよ関係を持つことになるシ

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