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『阿蘇の大鯰(ナマズ)』伝説メモ

 今月は東日本大震災から10年で多くの報道がありました。九州では熊本の地震から来月の4月で5年になりますのでその関連で調べたものを記しておきます。

 「日本伝説体系 第14巻 南九州編」荒木博之、有馬英子、堂満幸子(みずうみ書房)に収められてある79の伝説の一番目が「阿蘇の大鯰」(熊本)で、国土創成と区分されています。

 熊本の地震で耳にする『益城郡』なども地名そのもの言い伝えられており、『益城郡鯰村』という地名や蛇が死んだ『同郡(詫磨郡)竹宮原ノ蛇塚』など、鯰と蛇が含まれており気になるので引用します。

○伝承地 熊本県阿蘇郡一の宮町
 土俗伝云往古阿蘇大神数鹿流ヲ蹴透シテ阿蘇湖ヲ乾シ給フ時湖主大鯰アリ流出テ此所ニ止ル故ニ地名ヲ鯰ト称スト云。
(『肥後国誌』下巻 上益城郡)

 この本は、ただ伝説を取り上げるだけでなく、さまざまな類話も豊富に記載されているのが特徴的で、他の伝説本では見かけない調べ物をする者にとっては非常にありがたいまとめられ方になっています。

[類話]
○阿蘇郡一の宮町-黒川…鯰川ともいう。阿蘇大明神が湖水を乾したとき、中に棲んでいた鯰が水の引くのにつれて下りてできた川であるという。それで、鯰は大明神の眷属だから、阿蘇人は食すべからずと伝える。
(『阿蘇郡誌』)
[文献]
○上益城郡-川芥云往古明神阿蘇ノ湖水ヲ乾カス可シトテ初メ蹴リ給フニ山崩レス二重也トテ今ノ須軽ヲ蹴透シ給ヒシ時一ノ大鱝干此留ル故名ツクト云今詫磨郡ノ小山ハ其崩レタル土ニシテ同郡竹宮原ノ蛇塚ハ其時流レシ蛇ノ死セシ所ト云益城郡鯰村ハ流レ出シ鯰ノ留リシ当郡津久礼村ハ蹴透シ給フ山ノ壌止リシ所ナリ杯里俗今ニ云習ハセリ
(『肥後国誌』巻之五 合志郡)

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