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コメ書房オープン

話は2017年の春にさかのぼる。

その年の秋頃にブックカフェのオープンを考えていた(結果的にずれ込んだが)私たちは、まず、新たな古本イベントの形態としてすでに全国的に定着していた一箱古本市に参加してみることにした。「コメ書房」の屋号でお客さんに本を販売したのはこのときが初めてだった。

出店したのは2017年3月19日(日)に開催された「第43回金沢一箱古本市」。一箱のみならず、この日の夜に同じ会場で催されたトークイベントも参加する動機となった。トークのゲストは当時開業前だった松本市の「books電線の鳥」さん、前年に開業していた小杉の「ひらすま書房」さんで、「古本屋さんを始めます!」がテーマとなっていた。もちろん、そのときの私たちがタイムリーに聞きたいことだった。

第43回金沢一箱古本市

いま思い返せば、コメ書房というプロジェクトが具体的に始動したのは、この日からだったような気がしている。本屋としてのデビュー戦だったから、というだけではない。このときに横並びで本を販売していた一箱のメンバーや、出会ったお客さん、プロ枠で出店されていた諸先輩方のなかには、今でも店に遊びに来てくれるような人たちがたくさんいる。今年二月の閉店発表以降には「お店がなくなってしまうことが悲しい」と直接伝えに来てくれた方も多い。

トークイベントに登壇していたひらすま書房店主のMさんは、今では私たちの悩みを聞いてくれる(こちらもちょっと聞く)貴重な先輩であり仲間だ。電線の鳥さんのお話を聞いたことからの流れで、この年の秋には松本一箱古本市にも参加した。主催のあうん堂Hさんからは、開店前にブックカフェ商売のいろはを出し惜しみなく教えていただいた。また、一箱古本市やトークイベントに参加していたなかには、私たち以外にも、その後それぞれの店を開業した人たちがいた。いろいろな可能性の種があの場所に集まっていた。私たちはあの日、あそこを起点に芽をだしたのだ。

お気づきいただけただろうか…背景がムギであることに…

さて、この金沢一箱古本市に出店するにあたり、私たちは看板を作ることにした。屋号はもう少し前に決まっていたと思う。納屋にしまってあったたくさんの年季の入った木材の中から、特に風合いのよいものを選んだ。下書きなし、筆ペンで一気に仕上げる、一発勝負だった(いや、二枚くらいは書いたかもしれない)。

とりあえず作ったこの看板を携えて、その後もイベントに参加していった。次に出店したのは、2017年6月3日(土)に開催された「第5回BOOK DAY とやま」の一箱古本市コーナーだった。秋以降くらいでオープンしたいなあと、すでに準備を進めていた私たちは、多くの人の目に触れる機会をうまく利用すべく、ショップカードもとい「オープン予定カード」を作ることにした。

芋ハンコのコメ書房

デザインは看板のそれが気に入っていたので(手前みそだが胚芽の部分がとてもキュートだ)、同じ内容で芋ハンコを作り、オープン予定カードに押してお客さんに配れるだけ配った。わりと好反応をいただけたのではなかったかな。

その後、店のオープンが具体的になっていくのと並行して、ロゴをどうするかという話が持ち上がり、すぐに「あの芋ハンコのやつで決まりでしょ」ということになった。それで、芋ハンコを押印したものをスキャンしてPCに取り込み、Illustrator だかphotoshopだかで細かい部分を修正し、デジタル化した。といっても、ある種のイモっぽさは残したかったので、オリジナルからさほど手を加えてはいない。木板→芋ハンコ→PCで完成と、無駄な経路を辿っている様が、これはこれでDIYと言えるような気もするがいかがだろうか。こうして店のロゴが完成した。

現在のショップカード

ちなみにその後、催事(古本即売会など)出店時の看板がほしいということになっため、知人である黒部の染色家Kさんに布の看板を作っていただいた。ロゴだけでデザインは変わらずだが、風合いが最高なので、もし今後イベントでお会いする機会があれば、ぜひご覧になってみてほしい。

布看板の風合い

ぐっと時間が進んで、2018年の春、オープンを控えたコメ書房。店の看板をどうしようかという段になり、「前から使ってる手書きのあれでいいんじゃない?」ということになった。野良だった木片が異例の出世だ。雨風をしのげるようニスをたっぷり塗り、入口の横に打ち込んだ。最初の一箱から使っている思い入れのある看板だ。愛があるのだ。あまりインスタ映えしなくて申し訳ないが、愛はおしゃれじゃないのだ。

入口横の看板が完成

これで準備は全て整った。とは言えない部分も多々あった。けれど、何かあったならば、よりよいと思う方向に変化していけばいい。コーヒーは毎日淹れるから、当然上手くなるだろう。カレーはお客さんの反応を見つつ試行錯誤を重ねよう。努力を続け、変化を厭わない、流動体でいい。それが私たちのスタンスだ。

三月末の地元地域向けプレオープンを経て、農村の納屋を改装したブックカフェ「コメ書房」は2018年4月5日(木)に正式にオープンした。

2018年4月オープン

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