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ランボー ラスト・ブラッドの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。
たまたま会社が休みになったので金曜初日の朝イチの回に行ってきたけど、平日なのに結構混んでた。
そういえば「クリード」は1も2もガラガラだった気がするので、みんなロッキーよりランボーの方が好きなのかな。

ランボーシリーズは全作観てはいたけど
前日寝る前に改めて一作目を観てしまったので、ラストブラッドでのランボーの心の痛みがより響いてきて観ていてかなり苦しかった。
本当になんて悲しいシリーズなんだろか、、、。

冒頭、遭難した人を鉄砲水から救うシーンで、結構ヒーロー感を出していただけに今回は軽めのトーンの映画なのかな?と油断していたら、実家の農場に意味の分からない地下迷宮を作ってる所で「この人おかしい、、、」と不安な気持ちになる。
家があるのに地下で精神安定剤服用しながら寝起きしている彼の異常性を見るだに、全然心の傷は癒えてないのが分かる。

要はベトコンのトンネルを再現していて、愛する家族がいても結局過去から抜け出せていない。

彼が父親に会いに行こうとするガブリエラに放つ「人は変わらない」という言葉がずっとシリーズを観てきた人間には重く響いてくる。
「おじさんは変わったじゃない」と言われても、「蓋をしているだけだ」と答えるランボー。
でも人の本質は変わらないからこそガブリエラには清い心のままでいて欲しいと願っている。彼にとって彼女が希望そのものなんだよなぁ、、、辛い。

そして予告でも見ていたガブリエラが人身売買組織に誘拐される展開。

頼りにしていた友達や、父親の本心など、あっけなく彼女が信じていた善意など意味がないのを理解する事になるのだけど、もうその時点では後に引き返せなくなっている。
ランボーも含めてたけど「その人の持つ本質」みたいなものが変わるキャラクターはこの映画に出てこない。脚本を書いたスタローンの世界への厳しい視線を感じる。

ランボーが彼女を助けに行く直前にサラッと(吹き替えだけかな?)「あっちの警察はクソだ」って言ってたけど、その警察が何をしているのか?というのが短いシーンで挟み込まれている所とか、前作から引き続き世界の醜悪さみたいなものを突き付けてくる。

そしてランボーの奮闘も空しく、彼女は人身売買組織により強姦され薬漬けにされ亡くなってしまう。

亡くなる直前の車の中での会話が苦しかった。
「もう終わったんだ、悪夢だったと思って忘れて生きればいい」とランボーは彼女を励ますのだけど、決定的な心の傷は何十年経っても癒えない事を本人が痛い程分かっているのに、それでも前を向いて生きて欲しいと願う彼女への愛情に泣いてしまう。
世界にある「善」を信じる事が出来た、という言葉も彼の地獄巡りを知っているだけに、「ランボー最後の戦場」のラストの後、農場に帰ってきてからの彼女とのやりとりがどれ程救いになっていたのか、、、それすら奪われる世界の残酷さへの怒り、胸が締めつけられる。

そこからマリアを見送ってからの彼の迷いのない戦闘準備シーン。

守るものもないし、自分の命すらもう惜しくない、ただ暴力装置としてのみ稼働していくランボーが戻ってくる感覚にランボーファンとしてはどうしても気持ちが高鳴るけど、同時に「戻ってきて欲しくなかった!」という感覚にも襲われて、自分でもよく分からない涙が出てきた。こんな複雑な気持ちになった戦闘準備シーンは初めて。

暗闇の中に響く銃声、悲鳴、そして最初に拳を固く握りながら聴いていたドアーズの「Five To One」(映画秘宝の情報によると、かつての仲間と一緒に聴いてた曲らしい)これは彼が毎晩見ている悪夢そのものなのだと思う。
つまり敵を苦しませる為にやるのが「俺の悪夢をお前らにも見せてやる!」という恐ろし過ぎる攻撃。
敵の大ボスを見つけて「あいつは元凶だからもっともっと怖がらせて苦しめて殺さないと駄目だ」って殺すのをやめる感じとか完全にホラー映画のモンスターの考え方。(一作目の森の中のシーンと同じだけど、あっちは最初から殺す気ないので今回のと意味合いが真逆だな、、、)

串刺しになってほとんど死んでる敵に対し執拗に銃弾を撃ち込んで殺す感じとかも病的。
ここの大虐殺シーンはカタルシスはあるし、なんならブラック過ぎて笑ってしまうのだけど、同時に彼の地獄を追体験している意味もあるので、個人的にはとても悲しいシーンにも感じる。

ラスト、父親のロッキングチェアに座りながら確かにいたガブリエラや、戦場での仲間や、家族との記憶、それを忘れない為、地獄の底にあるかすかな希望を頼りに生きていく事を誓うラストにまた泣く。辛い。

ランボーという男

冒頭の遭難者助ける所でも助けた女の子より、助ける事が出来なかった夫婦に対して申し訳ない気持ちになっているのが切ない。
これまでも救った命はあるはずなのに救えなかった方に想いを馳せてしまう損な生き方をしていて不器用な人だなと思う。

ガブリエラにレターナイフを大学祝いに送るシーンの「どう見ても殺傷能力が高すぎる、、、」感じとかも本当に不器用。たぶんロッキーの方のアドニスとかなら「おい!正気かよ!」と普通にツッコミそうだけど、ガブリエラちゃんはいい子なのでドン引きつつ受け取っていて偉い。

バイオレンスシーンの手加減の無さは前作から引き続き。
ガブリエラを攫った男への鎖骨を引っ張り出す所とか、ラスト心臓を取り出す所とか、素手での拷問シーンが凄く印象的。
前作の喉笛を引きちぎるアクションのパワーアップ版。
彼の暴力性の異常さを示す素晴らしいシーン。

そういえばスタローンのもう一つの当たり役であるロッキーとランボーは全くベクトルが違うキャラクターなんだなぁと改めて感じた。

「クリード炎の宿敵」のロッキーの最後と、今作のランボーの最後を比べるととても味わい深い。「家族の元へ帰った男」と「故郷へ心が帰ってこなかった男」。
この二人のキャラクターでアメリカの光と影を象徴していると、よく言われるけど最後に関しても本当にその通りだと思う。

気になった所

気になった所。
最初の偵察シーンであっけなく見つかり半殺しにされてしまう所は正直いくらなんでも無茶過ぎるぞランボー!と、天国のトラウトマン大佐もツッコミを入れていたのではないかと思う。
その後ジャーナリストに助けられる所もかなり都合良くてちょっと冷めてしまった。

あと敵側も簡単に逃がすなよ、というかこの敵兄弟がなんで喧嘩してんのかよく分からなかった。
二人とも役者としてはめちゃくちゃ上手いし顔つきも素晴らしくて良いキャラクターなのは分かるのだけど、仲が良いのか悪いのか微妙だし、ドラマとして描きこみ方が中途半端。
ラストはお兄ちゃんが弟を亡くして悲しむシーンか、実は弟を邪魔に思っていたから清清したシーンとか、なんでも良いのでお兄ちゃん側の反応が欲しかった気がする。
しかしお兄ちゃん、ただのチンピラかと思ったらバリバリ戦闘員としても闘えるのとかは都合良くてびっくりした。
まあカッコよかったし良い。

あとより悪いのはどっちかというと弟の方だと思うので弟の方をランボーが拷問して殺すシーンをしっかり見せて欲しかったかな。
首を車の窓から投げるのもまあスッキリしたけど個人的にはもう少し欲しかった。
あと、どうでもいいけどシャワー中のタイミングでランボーに襲われたと思うのだけど死体はしっかり服着ていたし一度服を着させてから殺したのかな?何の為に?よく分からんけど怖い。

という感じで言いたい事もあるのだけど、ランボーという男の悲しい生き様をしっかり描ききっているし僕は大満足だった。最高です。


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