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「Saltburn」の感想(ネタバレあり)

「プロミシング・ヤング・ウーマン」のエメラルド・フェネル監督最新作で、Amazonプライム・ビデオオリジナル配信限定作品。

監督前作「プロミシング・ヤング・ウーマン」に引き続き主人公の企てがどう展開していくのかがハラハラしたし、どこまでが計画なのか?観ているこちらをも欺くクライマックスに痺れる。

とても映画的な演出があるし、役者の微細な表情の変化とかが重要な作品なので映画館で観れるのが一番だとは思うけど、すぐもう一度再生出来るというのが配信であるメリットにも思えた。
もう一度観てどう感じるか?というのが結構楽しめるタイプの作品なので、「最後にこう言ってたけど実は違うんじゃないか?」とか、観終わった直後に色んなシーンを、すぐ観返す事でより多重的に面白さが増してくると思う。

冒頭から主人公オリバーが大学生活になじめず、勉強は出来るのに常に生き辛さを抱えている様な描写が入ってくる。
ここでのボンクラ青春大学生的な展開から見応えがあった。
ライバル的な存在になっていくファーリーの明らか下に見ている態度や、実力ではなく出生で人を判断している様な教授、自分と同類だと思い友達と言いつつ子分にしようとしてくる奴、等、早速あまりに嫌な大学描写の連続で結構笑ってしまった。

そんな中で大学で一番輝かしい存在であるフェリックスにオリバーは惹かれていき、彼との友情から彼の実家の「ソルトバーン」へと招かれ、彼への愛情や嫉妬を入り混じる交流を通してオリバーの生活が一変していく、、、というお話のレールが見えてくるのだけど、ラストにどんどん予想し得ない方向に転がっていく物語の作り方が本当に巧みだった。

役者の演技の演出も相変わらず素晴らしくて、今回は何と言っても主人公オリバーの完全には掴みきれない複雑な魅力を見事に体現していたバリー・コーガンの演技力が圧巻だった。

その場その場で主人公オリバーと近い境遇の人が必ず出てくるのだけど、それをオリバーがどんどん否定していくような物語になっているのが面白かった。
初めは大学の友達が居ない数学が得意な男、フェリックスに振り向いてもらえない女の子、ソルトバーンに行ってからは家に居ついているキャリー・マリガン演じるパメラ、何とか家にしがみつこうとしているファーリー等、彼のその時の境遇の同類とも思える人間がいるのだけど、結局その誰とも相容れようとしなかった。

そんな中フェリックスだけは彼にとって特別な存在だったのだけど、その愛憎入り混じる執着が本当に異常で、それがまた面白い。
仲が良くなって心から彼の為を思ってフェリックスがしてあげるサプライズがおそらくオリバーの順調だった計画を壊すきっかけになってしまうのが皮肉だし、フェリックスにとっては命取りになってしまったのが本当に切ない。

結局オリバーは誰とも相容れないまま映画が終わっていくのだけど、その孤独を誇る様にも見えるラストの裸ダンスシーンが何かを演じ続けた彼の剥き出しの本性を示しているみたいで、ハッピーエンドとも言えないけどとても爽やかだった。

なかなかにサスペンスフルだし、観てて嫌な空気感だなぁと思うシーンばかりなのだけど、それが笑えるバランスになっているのも絶妙。
特に後半フェリックスが亡くなって、その直後に家族の体裁を必死に取ろうとしている食事場面とかめちゃくちゃ悲劇的で観てるこちらも衝撃的なのだけど、同時にそれがめちゃくちゃ滑稽にも見えるのが意地悪で笑える。泣いてるファーリーと普通に昨日のパーティーの会話をしてる父母、ドボドボドボドボの姉とか本当に面白い。
あと2回観るとここでのオリバーの異常さが改めて際だつ感じで凄かった。

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