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「ウィズアウト・リモース」の感想(ネタバレあり)

Amazonプライムオリジナル作品。
プライムビデオはオリジナル作品がネトフリに比べるとまだまだ少ないけど、今回は明らかにヒットを狙いに来ました!って布陣でとても楽しみにしていた。

まあ元々はパラマウントが劇場公開予定だったのがコロナで延期を繰り返し最終的にAmazonが配給権を買い取る形になったらしく、劇場で観れないのは残念ではあるけど。

「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」のコンビ!

脚本はテイラー・シェリダンで監督はステファノ・ソリマという事で傑作「ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ」のコンビ。

原作はトム・クランシーで日本語タイトル「容赦なく」という作品らしいけど、これだけタイトルに相応しい脚本、監督コンビ居ないんじゃないかな。

同時多発的に人が死んでいく前半の暴力描写が怖い。
予告でどうなるかは分かっているけど、段々と主人公にその影が近づいてくる感じにドキドキしてしまう。
最初の犠牲者が車に轢かれる所の無機質感と後から聞こえて来る悲鳴が本当の事故映像みたいでヤバい。

「最後の追跡」や「ウィンド・リバー」など最近のテイラー・シェリダン脚本作品のドスンと切なさを引く様な後味はなく、結構軽い終わり方をしたのはちょっと肩透かしだったけど、あくまで娯楽作品としてシリーズを続けていく気満々っぽいので次作もこの布陣で続けて欲しい。

容赦ない暴力描写

主人公が大怪我から目覚めて、やるのが情報を引き出す為に元FSBの大物を拷問して殺すというあまりに真っすぐ過ぎる作戦。拷問スタイルも「この後殺すけど吐けよ」と言って痛めつける感じで相手からすると相当嫌。

しかし車で突っ込んでガソリン撒いて燃え盛る車のなかで敵の名前を聞き出すシーンは絵面的にはカッコ良いし、むちゃくちゃ過ぎて笑った。あんなの見た事ない。こういうあっと驚く絵面のケレン味もとても良い。

しかしそういう主人公の私怨による暴力性が、自分ではどうしようもない大きい組織というか国そのものの暴力性に立ち向かうような構図になっていくのが熱いと思った。

「これから行くぜ!」と思った瞬間に容赦なく飛行機を墜落させられるシーンや、仇だと思っていた相手が自分と同じ駒と分かる絶望感、そのまま四面楚歌で囲まれている大銃撃シーン、など主人公がどう動こうと大きい思惑の歯車の中で無慈悲に巻き込まれていく暴力性みたいなものがとても怖い。
ラストの銃撃シーンは観ているこちらも「もうここから助かるのは無理では、、、」と思う絶望感が凄くて、この辺は「ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ」のラストとかとも通じる予想が出来ない感じ。

それをもかいくぐり主人公が仇に対し、「妻の名前を言わせて殺す」という一個人の怒りの執念が大きい暴力性に勝つ様なラストはとてもカタルシスがあった。

マイケル・B・ジョーダン力

僕は生涯ベスト映画1位が「クリード/チャンプを継ぐ男」だったりするので大体マイケル・B・ジョーダンが出ていると人より高評価にしがちなのだけど、まあ今回も好き。

「クリード」シリーズでロッキーの魂を引き継ぐ男を演じてきたけど、今回はランボー的な殺人マシーンを演じていて、本気でスタローンの後継者を狙っているのでは?という気すらしてきた。

ただ今回の彼はスタローン的な「舐めていた相手が殺人マシーン」みたいないかにもジャンル映画的なキャラクターではなくて、マイケル・B・ジョーダン本人の優等生的な佇まいもあり普段優しい人が一度キレると誰も手が付けられない「気の毒殺人マシーン」系の映画だったと思う。

身体はめちゃくちゃムキムキで強い事に説得力があるのだけど、顔つきが優しい好青年という感じで軍人っぽくないのが観ていて辛い。
もう少しで別の人生が待っていたのに、、、。
「ブラックパンサー」のキルモンガー役でも感じたけど、本当は優しいのに闘いの中に身を置くしかない男を演じたら絶品だ。

家でのシーンでさりげないチェスの駒を動かす演出の入れ方が上手くて、彼自身の運命を不穏に予感させる。

彼が襲撃を受け目を覚ます所、恋人も赤ん坊も亡くなった事を聞かされて、心電図の音が一旦乱れるのだけど、すぐ呼吸を整え正常のペースに戻し、現状分かっている情報をすぐに報告しだす所で彼が激しい怒りと悲しみの中でも冷静に次の一手を導き出せる殺人マシーンという事が分かる。

観ていて気の毒さと同時に「この人ちょっとやばくない?」という不穏さも漂ってくる。こちらも静かながらとっても上手い演出。

おしっこと酒の匂いでアル中ホームレスになって近づく作戦は最初「なるほどー」と思ったけど、あれだけの狙いなら遠くから監視するだけで良かった気が。でも酔っ払いの顔から振り返った瞬間、目がギラギラしだす演技はカッコ良い。その後のぶっこむ為に乗ったトラックに「トライガン」に出てきそうなでっかい十字架の武器みたいなのあったけどあれは何だったのか気になる。

他のキャストも素晴らしかった。

黒幕の正体とかは、その雰囲気のガイ・ピアースが良い奴な訳ないだろという感じなのだけど、この人のいい人面した下衆役は相変わらず観ていて面白い。ジョンの行動をどこまで予想していたか分からないけど、臨機応変にどうしてもロシアと戦争させたい執念が凄い。

まあ「戦争した方が国の為になるじゃん!」みたいな最後の方の独白は似たような映画の悪役のセリフで何百回も聞いた感じなので全く新鮮味はなかったけどガイ・ピアースの迫真のテンパり演技でそれなりにちゃんとしてる気がした。

あとジェイミー・ベルとは「ファンタスティック・フォー」以来のチームものでまた集まれて良かったねという印象。

気になったというかちょっと残念だったのは、冒頭の遠くから敵を狙撃して小さい窓越し敵が倒れるのを確認するシーンが分かりづらかったり、明らかに大きいスクリーンで観た方が効果的な所も多くてやっぱり映画館で観たかったなぁ。

ラストのレインボー結成からこれからも続ける気はあるみたいだし、次作があるなら映画館でやって欲しい。

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