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「眠りの地」の感想(ネタバレあり)

裁判モノの映画でトミーリー・ジョーンズ演じるオキーフが自分が受け継いできた葬儀屋を守る為、大企業と争う事になるのだけど、裁判を決める陪審員が黒人がメインになる事を考慮して、黒人弁護士でノリに乗っていたジェイミー・フォックス演じるウィリーに白羽の矢が立つ。

冒頭の黒人教会での演説だけで彼が人の心を掴む天才であるの示されているしジェイミー・フォックスの演技力で引き込まれる。
あと上手いのがここで黒人教会というのが黒人の人々のコミュニティにとっていかに重要かが分かるからこそ、後半で敵側がそれを利用した搾取がいかに非道であるかも分かる様になっているのでこれを最初に持ってくる構成も素晴らしい。
話す事がいちいち名セリフで面白い。
「クマを見たらハチミツをかぶれ」その後「挑発って意味だ!」って説明されるのが笑える。

その後の裁判シーンも彼が裁判をショーとして楽しませる様な手腕も映画としてのケレンがあって面白い。
吹き替えで観たけどちょっと昔懐かしいオーバーアクションめな感じで素晴らしくてこの裁判の終わりに言う「青信号です。」って言い方とかすごく良くて笑った。

あと裁判を彼に依頼することになるオキーフを演じたトミー・リー・ジョーンズも言うまでもなく激渋でかっこいい。
吹き替えも最早日本ではBOSSのCMでトミー・リー・ジョーンズとセットでお馴染みの菅生 隆之(すごう たかゆき)で安心感が高い。

それを知った敵側もお金をかけてその当時優秀だった黒人スタッフを集めて対抗していくのだけど、この敵側がやっている事がその後も出てくるアメリカの黒人を奴隷にする歴史の負の部分を再現しているみたいでなかなかモヤモヤする。雇われた凄腕女性弁護士のキャラクターがとても魅力的だし、彼女も仕事として誇りを持って請け負ってやっているのだけど、雇い主が明らかに彼女たちを「コマとして使っている」のが伝わってくるので、それに対して人種とか関係なくくしっかり友情で結ばれた主人公二人が闘う姿に胸が熱くなる。

飛行機の機内でお互い正面に向き合って自分のこれまでの生き方をお互いに語り合うシーンが印象的に刻まれる。
ここで語っている2人の顔をカメラがアップでじっくり撮っていて、見つめ合う名優2人の表情とか眼力がとても強いので、ここで心が通じ合っているのがとても映画的に観てるこちらに伝わってくる。ここら辺で既に役者さんへの演出力の高さを感じた。
短いシーンだけど、ここがあるから後の2人の絆が試される様な苦難にハラハラするし、ラストの直接対決の場面で「ここで引かないと後悔するぞ」と脅された時にここぞというタイミングで2人が意気投合したタイミングで流したあの曲を歌い出す所のかましがめちゃくちゃ笑ったし、それでいてめちゃくちゃ熱くて、観ながら「この映画最高じゃん!」って気持ちになった。

悪役であるローウェンを演じたビル・キャンプも素晴らしかった。
同じAmazonプライムビデオオリジナル映画だと「無実の投獄」で主人公側の良い弁護士役をしていたけど、今回は真逆の搾取する側の憎たらしさを素晴らしく体現していた。
後半の黒人教会連盟と提携している事が明らかになってから、法廷での尋問シーンのジェイミー・フォックスとの演技合戦も見応えがあって、最後のにらみ合いの末の「気がとがめた事は?」という質問に対し「ない」という表情も凄いし、その後の取り乱した姿も「ざまぁ」と言う感じで最高。

気になった所で言うと、まあ名優たちの会話劇や演出とかの上手さで観ている間は気にならなかったけど正直、こんな公に悪い事していたのに調べられてないのおかしくないかなと映画を振り返ると思うし、そもそもこれが明らかになった時点で今回の裁判不利になるの敵側も分かっていないのに少し違和感があったりはする。

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