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「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」の感想(ネタバレあり)

インディ・ジョーンズシリーズは映画鑑賞を本格的な趣味にしだす前から追いかけていたシリーズだったので、自分の中で結構大事な映画だったりする。
特に小学生の時、初めて観た「魔宮の伝説」がインパクト大で猿の脳みそや生きたまま心臓を取り出される生贄のシーン等にビクビクしながらも、最後まで楽しく観れて子供ながらに大人の映画に入門出来た喜びがあった。

ジェームズ・マンゴールド監督

監督のジェームズ・マンゴールド
相変わらずスピルバーグの後釜という大役を担うに相応しい手腕を発揮していたと思う。
やはり重厚さとエンターテイメントのバランスが良いし、それでいて新しいインディ・ジョーンズシリーズのツボを外さない感じでしっかり面白くなっていた。
冒頭のナチス潜入シークエンスとかハリソン・フォードの見た目がCGで若返っているせいで本当にスピルバーグが撮っているみたいで、しっかりインディ・ジョーンズを味わっている感が凄くて、ここで既に結構感動してしまった。
あとこの冒頭のシークエンスで、いかにもインディらしいアクションシーンもすでに沢山あり、流石は職人監督ジェームズ・マンゴールドという感じ。
特に乗り物から乗り物へ敵と闘いつつも移動して、どんどん派手なアクションへと繋がっていく流れが凄くインディ・ジョーンズシリーズっぽくて楽しい。

あと音楽のジョン・ウィリアムズがやっているのもかなり大きいと思う。
インディが何か乗り越える度にお馴染みのテーマ曲が流れる事で、「今インディ・ジョーンズを見ている」という感覚が蘇ってきた。

インディ

前作クリスタル・スカルのラストで一作目のヒロインであるマリオンと、実の息子であるマットとちゃんと家族になってハッピーエンドで終わっていたのだけど、そこから息子の死によって前以上に孤独を抱えているインディの姿が観ていて辛い。

最初の宇宙飛行パレードの中、1人だけ暗い顔で働いているシーンから、世界は未来を見ているのに彼は歴史を教えていて仕事でもプライベートでも常に過去を見ている感じで、コミカルさもありながらも生きる場所が無い寂しさを表現していて、後半の展開を考えると出だしから切ない。

そんな心の時間は止まっていた彼が、再び熱い冒険によって自分のアイデンティティを取り戻していく感じなのだけど、タイムホールを抜けて過去に行って、そこに留まりたいと言いだす所で実は彼の孤独が悪化している様に見えた。

これまで歴史に敬意を持って冒険を続けてきた彼が、痛みしかない「今」から歴史に逃げこみながら死んでいこうとしているのがとても切実に見えたし、観ながら泣きそうになってしまった。

だからこそラストに妻との再会からの一作目の名シーンを踏襲して映画が終わっていく流れがまあ号泣してしまう。
レイダースの時はお互い若くある意味セックスシーンにいく為の繋ぎみたいなシーンだったと思うのだけど、ハリソン・フォードも80歳になりすっかりおじいちゃんになっているからこそ、あそこからの残酷な時間の流れと失ったものの大きさをヒシヒシと感じるし、でもそこからあの日の精神はまだ変わらずにここに残っていた、と二人の人生を肯定しているみたいで重い感動が押し寄せてきた。

ヘレナ

一見お金の為の様で亡くなった父親と折り合いをつける為に、ダイヤルを求めているという人物なのだけど、正直彼女の背景の説明はサラッとしていてあまり何の為に来ているのか?分かりづらい気もする。

ただ演じたフィービー・ウォーラー=ブリッジはとても魅力的だった。
これまで出てきたヒロイン像は踏襲しつつも、どちらかというと若き日のインディと重なる描き方になっていて、向こう見ずな性格もそうだし、相棒にしている男の子との関係は「魔宮の伝説」のインディとキー・ホイ・クァンとの関係を連想した。
女性版インディが当たり前にいる感じがやっぱり今の映画のバランス感覚だと思う。

悪役チーム

マッツ・ミケルセンのインテリで冷徹な悪役はやはり最高。007カジノロワイヤルの時も似たよう役をやっていた気もするけどあの頃より渋みが増している感じでとても味わい深い。
ナチスやり直しの野望とかはマジで馬鹿っぽいけど、ラストのインディの敵として相応しい気がする。

あと僕の大好きなボイド・ホルブルックが相変わらず軽薄な悪役を楽しそうに演じていてこちらも最高。
ジェームズ・マンゴールド監督的には「ローガン」のアイツとほとんどキャラクターが一緒だけど、この軽薄悪役感のバランスがやはりベストだ。

最後はタイムスリップを失敗して、絶望しながら死んでしまう訳だけど、墜落寸前のこの2人の表情がめちゃくちゃ切なくてそれ故に笑えて本当最高だった。

と言いつつ中盤はちょっと鈍重に感じる所も多かったし、今回インディに関わったせいで殺される事になる何の罪も無い人達がかなり気の毒過ぎて観ながら気になってしまったり、完璧なバランスの最終作という感じはしないけど、ただそれを引いても感動的過ぎるラストシーンが本当に素晴らしかったので大好きな作品になった。

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