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愛すべき夫妻の秘密(ネタバレあり)

シネマクティフ東京支部さんでやっているPodcastの「Diggin' Amazon Prime Video」というコーナーに参加させて頂いていて、今月のお題になっているのでよろしければこちらもお願い致します。↓

アマゾンプライムビデオオリジナルの配信限定作品。
家での鑑賞だとあまり集中できないのでこういう配信限定作品は吹き替えで観る事が多いのだけど今作は吹き替え版がとても良かった。
主人公ルーシーの実生活でのしゃべり方と、劇中で彼女が演じる「アイラブルーシー」内での過剰におどけたしゃべり方の落差が上手く表現されていたと思う。

巧みな語り口

恥ずかしながらアーロン・ソーキンが関わった作品をほとんどこれまで観たことなかったのだけど、脚本も監督としての腕前もとても素晴らしくて傑作だと思った。

基本的に主人公ルーシーの目線でこの映画は進んでいくのだけど彼女の存在感にグイグイ引き込まれていく。

大きく三つ彼女が闘わなければいけない問題があって、一つは共産党員の疑いをかけられている件、二つ目は自分の妊娠をドラマの中に入れ込まなければいけない件、三つめはデジの不倫の件。

面白いのはこの三つが別々にあるのではなく同時に絡まって語られていく形になっていて、彼女が共産党員の件を話してたかと思うとすぐに不倫疑惑の件に話題が変わったり、初見時はコロコロ話題が変わってちょっと混乱したのだけど、彼女の中ではすべてが繋がっていてこのドラマを続ける為に解決しなければいけない事なので全ての問題を同時並行で片付けようとしている感じが伝わってくる。

監督や脚本家をほっといて自分の考えを主張し撮影現場を支配しているのもそうだし、他者から観ると病的なまでに「アイラブルーシー」というドラマに情熱をかけている。

そしてこの彼女の想いの源泉が何なのかというのもデジとの出会いのシーンでさりげなく提示されているのが語り口として上品で好きだ。
「幸せな家庭」が彼女の夢であるのが分かるんだけど、現実のデジとの暮らしで見つけられず、このドラマをデジと演じる事が彼女にとって仕事以上にセラピー的な役割にもなっている気がした。

この映画でルーシーとデジが最初に交わす会話がデジの言う「ただいま、ルーシー」という言葉で、これがこの映画で最後に交わす会話でもある。
ここの対比がすごく鮮やかで、ラストシーンでその言葉を聞いたルーシーの反応がとても重く響いてくる。
そこから俯瞰ショットで画面が引いていきモノクロになって映画が終わっていくのが、「彼女の夢はそこにしかない」というバッドエンドにも思えるし、でも「彼女の夢はそこにだったらある」という物語があることの希望を描いている様にも思える。この多重的な味わいのあるラストの切れ味にとても感動してしまった。

主演二人の名演

そういうストーリーや演出も素晴らしいけど、ニコール・キッドマンとハビエル・バルデムをはじめとする役者たちの名演技合戦だけでも十分すぎる見応えがある作品。
主演のニコール・キッドマンに関してはアカデミー賞級の存在感だったと思う。特にラスト周辺の色んな事が起こり過ぎて感情が入り乱れる表情の演技が凄まじい。
ハビエル・バルデムもカリスマ的な存在感の出し方が絶妙で、回想シーンの初めで歌を歌ってその場を支配してしまう様な存在感は本当に凄かった。

お酒飲み俳優のJ.Kシモンズの憎めなさも良かったし、助演女優のヴィヴィアンを演じたニナ・アリアンダの色々思う事はありながらも仕事に徹する感じも素晴らしかった。コールソンでお馴染みのクラーク・グレッグをはじめとするお偉いさんメンバーズもみんな良い顔して面白かった。

そんな感じでアーロンソーキン作品、今回が初めてだったけど本当に素晴らしかった。現在またもやコロナの影響で劇場での鑑賞を控えているので、家で過去作のマラソンでもしようかなぁ。


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