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【無料】【努力は才能を超えられる】「X」の過去⑥~妊娠・結婚編~


経営者は

何故、頑張ることができるのか。


それは「愛する従業員の笑顔」を守り抜くため。



では、既婚者は

何故、頑張ることができるのか。


それは「愛する女の笑顔」を守り抜くため。


男は劣化品。

承認欲求、マウント、アホさ。

少年の頃からずっと変わらない。


そんな僕たちが頑張るには
「自分」のためだけでは足りないみたいでさ。


――――


前作はこちら


ーーー



正直、

困惑した。


当時、遊び散らかしていた
ぼくの心の中では、


3人いる彼女の中で

もし誰かが妊娠したら
その子と結婚しよう。


これもきっと運命だから。



神のみがぼくのこれから、

いや、“ぼくたち”のこれからを知っている。

そんな“厨二病っぽいこと”を考えて
避妊しない快楽というよりは

天に身を任せる気持ち。


3人の彼女。


だれ一人として、
全く避妊してなかった。


そして、
奇跡的に

3人目の彼女だけ
妊娠したようだった。



うん。



、、、




全て、


ぼくが望んだことであって


2人の会話の中で

結婚の話も出ていたし
別にいやではなかった。


、、、


けど、心の何処かで、

前向きになれないぼくがいた。


――――


「本当に2カ月も来てないの?」
「うん・・・」


この時のことを思い出すたび

今も思うけど、


「わかった。
俺が全部何とかするから、結婚しよう」って。


その時、
すぐに言ってあげられなかったこと。


妻には
申し訳ない気持ちでいっぱいである。


どこか

自己保身に走ってしまうのは、悪い癖。


そこから
「とりあえず病院で検査しよう」
ってことになった。


夜も遅かったから、

今夜は
うちに泊まっていくことに。


こうして


はじめて“3人”で眠る夜が


ぼくの人生にも急に訪れた。



―――



翌朝。


彼女は隣に居なかった。


「あれ・・・」


眠たい目をさすって
起き上がると、

少し遠くから女性のうめき声が聞こえた。

彼女がトイレの前で倒れていた。


「どうした!!!大丈夫か?」
「う、、、だめかもしれん」



ぼくは
急いで救急車を呼ぼうとした。


「あれ、、えっと、、」



咄嗟のことで

救急車の電話番号が分からなかった。


生まれてはじめて

救急車の電話番号を
Iphoneで調べた。

そこで初めて知ったのだが、


救急車に電話する前に
この病状が救急車を呼ぶに値するかを確認する
「#7119」というサービスがあるらしい。


そこに電話をした。

妻の症状を聞かれ、淡々と答えた。

完全なる救急車案件だった。

自分でも思ったより
冷静に対応していた。

お金と水をもって
救急車の到着をまった。


「俺がおるから、大丈夫だからね」
「うん・・・」



――――


数分後、
家の周囲に救急車の音が響いた。


家の電気やエアコンを消して、
お金と水と
必要になりそうなものをもって
彼女を背負って連れて行った。


いつもは家を出るときに
電気とかは
彼女が消してくれていたんだけど。


生まれてはじめて
救急車に乗って病院に向かった。


隊員さんたちが
本当に優しかったし、


こうした医療に携わる人って
本気でカッコ良いなって思った。


救急隊員さんに
彼女との関係性を聞かれて
「旦那」です、って答えた。


ちょっと恥ずかしかった。


ぼくは、

救急車で移動しながら、
彼女の小さな左手をずっと握っていた。


――――


病院



彼女は
裏口のようなところから
隊員さんたちと、病院の中に入っていった。


男は
通常入り口から入るらしく


そこで彼女とは一旦お別れに。


入り口を探して
手続きをして入った。


全く何処に行って良いか分からなくて、
とりあえず案内のひとに


「さっき救急車で運ばれてきた女性の
付き添いの男ですけど」
「あ!旦那さん!はやくこっち!」



その病院では
ちょっとした有名人みたいだった。


そして階段をのぼって
彼女が診察を受けているだろう
診察室の前で待つことになった。


こんな長い数分間。


おなか空いたときに待つ、
カップラーメンの3分間を軽く超えてきた。


うん。
ぼくは“そういうひと”なんです。



――――


産婦人科に
男女で来てる人は
ぼくたちしかいなかった。


いや、正確には
周りのことをそこまで覚えてなくて

そうだったんだろうと
勝手に記憶が
すり替えているのかもしれない。


「〇〇さん!」


ぼくは
彼女と医者、看護師さんの待つ
診察室に入っていった。


医者は、
ロボットみたいに淡々と説明を始めた。


「あぁ、これねぇ、ほら、はずれてるわ。
だいたい3回に2回くらいこんな感じなるんよ。
お薬出しておくね。」



だいたいこんなことを言ってた。


そう。



彼女は、流産だった。



―――



彼女は泣いていた。


話によると


今朝の、「だめかもしれん」ってのは
流産したってことを
“なんとなく”の感覚で分かったとのこと。

医師の説明では、


子宮の中ではなく
子宮の外で受精してしまっていて

こういう流産は、
結構な確率で起こり得るものらしい。


ただ、
そんな理由はどうでも良かった。


彼女は本当に悲しそうな顔をして、
ずっと、ずっと泣いていた。


ぼくも
そんな彼女をみて
悲しかった。


ただ、
正直なところ、
「まだお父さんにならなくて良いんだ」って。


ちょっとだけ

ほっとした気持ちがなかったと言えば噓になる。


けど、やっぱり悲しかった。


しょうがないことだけど

ぼくのことを良くしてくれている女性を
泣かせてしまったこと。


たった一人の女性の笑顔すら守り抜けなかったこと。


愛してくれていた母が突然倒れた、

あの日の景色が、
走馬灯のように蘇ってきた。


男として
最高に不甲斐ない昼下がりだった。


いくら可愛い子に囲まれてたって


たった一人の女性を

最高に愛せないなら
男としては三流以下。



自分のレベルの低さを痛感した。


―――



病院で処方箋を貰って
近くの薬局まで薬を貰いに行った。


彼女には
病院で休んでてもらって。


外は雨が降っていた。


当然、傘なんか持ってないから、
走って薬局にいった。


もらう予定の薬が
傷付いた子宮をケアするものであった。


その薬が
ぼくの妻が
流産したことを示すものであることは

薬剤師さんの表情からも明らかだった。


そうして、

本当は欲しくなかった薬をもって
ぼくは彼女のもとに帰った。


ここでへんに明るく振舞っても嘘になる。


一緒に悲しんだ。
けど、しょうがないよねって。


近くにファミリーレストランがあった。

朝から何も食べていなかった。


「まぁ、ファミリーもクソもねぇよな?」って。



こんな笑えない冗談でも
彼女は受け入れて笑ってくれた。


この子の素敵さ

心の広さ、純朴さに、今まで気付けず、


女の子をほぼ見た目だけで
判断していた自分の弱さを思い知った。


―――



そうして、
ぼくたちは結婚した。


結局のところ、

子どもは授かってなかったけど
この日の出来事を経て、


「この子の笑顔を守るために頑張れそう」


って、心から思えたから。


ちなみに豆知識。


妊娠したかもって思って
産婦人科に行くときは


必ず薬局で検査薬を買って、
自宅で事前に検査薬を使ってから行くこと。


なぜなら、


事前に検査薬を使わずに
産婦人科で検査することになると
めちゃくちゃ高くなるから。


思ったよりお金が掛かって

本当にびっくりした。


もちろん、

彼女の身が安全で
何よりではあったが。


―――


経営者は

何故、頑張ることができるのか。

それは「愛する従業員の笑顔」を守り抜くため。


では、既婚者は

何故、頑張ることができるのか。

それは「愛する女の笑顔」を守り抜くため。


男は劣化品。
承認欲求、マウント、アホさ。

少年の頃からずっと変わらない。


そんな僕たちが頑張るには
「自分」のためだけでは足りないみたいでさ。


そんな気持ちもあって。


いや、


正直、
ちょっとかっこつけたかっただけ。



Xは、アホだ。



アホで
カッコつけで
見栄っ張りで。


それでも
何処か可愛げがあって
憎めないやつ。


それを自覚してるところが
また白々しい。



いずれにせよ、


ぼくたちは結婚することになった。




(つづく)






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