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博士課程進学を考えている学生さんへ


はにです。

過去に、博士課程進学と就職とを悩み、相談しに来てくれた学部生・修士学生が数多くいましたので、
博士課程の研究生活のリアルをご紹介し、どういった考えで進学すべきか、民間企業とアカデミアの違い、就活の違いなどを書いてみました。

X(旧twitter)アカウントの方では、個別相談も受け付けていますので
お気軽にお尋ねください。
@A_P_Hann


1.博士課程進学のメリットとデメリット


博士課程進学を希望する皆様、なぜ博士課程に進みたいと考えていますか?
私は、「今取り組んでいる研究をもっと追求したい」といういたって単純な理由でした。
単純であっても、博士課程への進学には具体的な目的意識が必要です。
「修士の就活がうまくいかなかったから博士課程に進学する」
という同級生も周りにいました。正直、そもそもこういう考えを持つ人だから就活もうまくいかなかったのでは?と思いましたが。
しかしながら案の定、その人は博士論文を書き上げられずに今も博士課程で博士論文の研究に取り組んでいます。
ここでは、進学の目的を具体的に定めるためにも、博士課程に進学することで得られるメリットとデメリットについてお話していきます。

メリット


1. 博士号が取得できる
博士号取得のための課程なので当然ではありますが、博士号の魅力はご存知でしょうか?
博士号は、世界に通用する資格です。アメリカで研究したくとも、博士号を持たない者には人権がなく、雑用ばかりさせられるという話は有名です。
対して博士号を持っていると、アメリカではかなり重宝されるだとか。
医師免許なしに医者になれないというのと同じです。
また、日本は世界で最も(は誇張しすぎかもしれませんが)簡単に博士号が取得できる国だそうです。
博士号を持っていないとなれない職業もあります。
例)教授、准教授、講師、助教などの大学院の教員、海外の研究所の研究者など
先々も研究活動を続けたいという方は、博士号の資格は持っていて決して損することはありません。

2. 自由に好きな研究ができる
修士課程を修了し、企業へ就職する学生がほとんどかと思います。
研究職に就職する方は、卒業後も研究活動に取り組むことでしょう。
しかし、企業の研究は当然ながら研究テーマが具体的に定められ、興味の有無を問わず指定された研究内容に取り組まなければなりません。
さらに、企業の研究は具体的な期限も定まっているため、期日に間に合うような研究スケジュールで取り組まなければなりません。
出された指示通りに動く方が好きだという方には、企業への就職は向いていると思います。
一方、博士課程は所属する研究室の分野内であれば自分の好きな研究に自由に取り組むことができます。スケジュール調整も自身で自由に決められます。
「研究結果が出たけど、次何したらいいかわからない」という学生を多く見てきましたが、そういった学生は指示通りに動く企業就職が向いていると思いますが、何でも自由に考えて自分の好きな研究に取り組みたいという学生は、博士課程の研究がまさにそうなのでおすすめです。

デメリット


1. 28歳新卒による遅れ
修士卒の同級生が社会人4年目に入る頃に、博士卒は社会人になります。
収入差は後に何とでもなるかもしれませんが、社会経験の差はある意味デメリットと言えるでしょう。
しかし、就職先が企業(博士採用)であれ大学院(ポスドク、助教)であれ、入った先の周りは同期か上司になりますので
仕事環境の中では特に社会経験の差等は気にならないかもしれません。
また、女性は若いうちの結婚・出産を望んでいる方が多いと思われます。博士課程進学によりそれらが遅れてしまうこともデメリットの1つです。
パートナーとの意見が合えば、博士課程の間の入籍は可能かもしれませんが、出産はどうしても遅れることになります。
28歳でやっと給与を得る経済的な問題と、博士課程と博士課程以降の多忙さによる時間的余裕の問題が絡むからです。
アカデミックの世界は、就職後さらに激戦区へと足を踏み込むことになりますので、
結婚・出産を重視及び優先される方は企業就職をお勧めします。

2. 教えてくれる人がいない

最上級生であることや博士という学年から、基本的に教える立場にあるため、専門分野であれば知っていて当然という見られ方をします。
研究室や教授によるかもしれませんが、少なくとも私や私の周りの博士は、調べた上で、自分の意見を持って「相談」することはあっても、安易に教授に質問しにいくことはありませんでした。
博士課程では、自分の意見を常に持つことは重要となってきます。

2.私の博士課程のスケジュール


全学府の博士課程において共通ではないと思いますが、生命科学系博士を修了できた私のスケジュールをご紹介いたします。

図1. 博士課程スケジュール

簡単ではありますが、図1のようなスケジュールで過ごしました。
博士課程は、当然ながら3年時に提出および発表する博士論文の完成に向けて研究に取り組みます。
私の学府では、「論文1報分のボリュームが1チャプターで、基本的なチャプター数は3チャプター以上」という博士論文構成が当たり前となっており、参考にさせていただいた過去の先輩の博士論文全てにおいて5チャプター以上書かれていました。
私は論文執筆が間に合わず、博士論文の執筆を優先しましたが、何とか5チャプター書き上げることができました。
博士課程を卒業し、次の研究室先で助教として博士論文の内容の論文を執筆し、投稿しました。

修士論文は、「このような実験に取り組みましたが、何も変化が見られませんでした。」というような、結果でなく過程を執筆して良いとされています(学府や研究室によるかもしれませんが、私の学府ではそうでした)。
しかし、博士論文はそうはいかず、必ず結果を記さなければなりません。
つまり、博士過程の研究は3〜5以上の結論が得られる実験および研究量が必要ということです。
運良くスムーズに結果が得られれば良いですが、「運良く」と申したように、約2年間でそれだけの結果を得るためには相当な仕事量が必要ということです(最短3年で博士課程を修了することを考えた際、博士論文の執筆の時間、就活の時間等を考慮すると、実質実験や研究に割けられる時間は2年です)。
さらにそこに、後輩指導や教授の研究のサポート等の仕事が入って来るので、博士課程はかなりのハードワークと言えるでしょう。

3.博士課程の就活について


1. 民間企業の就活


民間企業の就活に関して、私は興味のある企業が本当に少なく、しかし現実問題好きなことばかりしていたいというわけにもいかないので、2社ほど就活しました。
結果、モチベーションの低さや準備不足により、2社とも落ちてしまいました。
ここからは、私の先輩や同級生から聞いた民間企業の就活についてお話します。

まず、博士課程の民間企業の就活情報について、民間企業は公開しません。
修士課程の就活は、4月に就活開襟があったり、マイナビ等でインターン情報が提示されたりと修士生への情報公開が活発です。
しかし、博士生への就活に関する情報通知はなく、企業のマイページでいつの間にか早期選考が開始しています。
つまり、早い段階から自分自身で企業のマイページに登録し、随時選考情報をチェックしなければならないのです。
私はその話を、他研究室の博士の先輩より博士課程1年の終わりに聞き、調べてみると知らないうちにインターンも開催されていたことを知りました。
博士課程修了後に、民間企業への就職を希望する方は十分に注意してください。

今後どうなるかはわかりませんが、私の代では博士課程の民間企業の就活は博士1年の秋から博士2年の秋までありました(図1参照)。
周りの同級生を見ていると、修士生のように何十社も応募するような博士はいなかったので、この一年中就活だけに時間を割くようなことにはならないと思いますが、博士論文の研究との両立が必要となってくる精神的にも少々しんどい時期となることでしょう。

2.アカデミアの就活


アカデミアの就活は、主に2パターンあります。

1つ目は、「ツテ」です。
こちらの方が非常に有効で、ほとんどの教授方が口を揃えて大半がツテによる就任であると仰っていました。
私自身も、実際は所属研究室の教授の紹介によるものでした。
では、どのようにしてツテを得るのか?
所属する研究室の教授が顔が広く優秀な方であれば、教授に頼って良いと思います。
しかし、残念ながらそうでない場合、アカデミアに進むことを目指す博士学生のとっておきの就活の場は、学会です。
コロナが落ち着き、今では対面の学会が増えてきています。
学会発表に積極的に取り組み、他大学の教授方に顔を覚えてもらいましょう。
民間企業就職を希望する方も、学会には企業の研究者方も出席し、そこでのヘッドハンティングも多いと聞くので、それを狙って積極的に参加することをおすすめします。
学会に必ず伴うのが飲み会ですが、こちらも可能であれば積極的に参加してください。
教授方は飲み会が大好きな方が多く、飲みの場こそ顔を売る絶好のチャンスです。
とにかく、色んな先生方に良い意味で顔を知ってもらい知名度を上げておきましょう。

2つ目は、一般公募に応募することです。
「JRECーIN」という研究職求人サイトが有名ですが、こちらのサイトには全国の大学、民間企業、研究機関の研究職公募が掲載されています。
そもそも大学の公式ホームページでも、公募情報が公開されることがほとんどなので、直接公式ホームページから応募することも可能です。
助教公募について、私は助教枠を狙って就活をしていたので、ポストドクター枠はわかりませんが、教授の話によると大学の助教は基本的に内部(ツテ)採用がほとんどのようです。
つまり、求人サイト等に掲載される公募というのは形だけに過ぎないパターンが多いようです。
よっぽど業績が優秀な博士生などは稀なパターンで外部から採用されることもあるようなので、業績に自信がある方は挑戦してみて良いと思います。


いかがでしたでしょうか?
まだまだ伝えられていない博士課程の特徴があるかもしれませんが
本記事が博士課程進学を悩んでいるすべての学生さんたちに
選択する上での材料となれると嬉しいです。

他に聞いてみたいことなど、ご希望がありましたら
重複になりますが、X(旧twitter)アカウントの方で
お気軽にお尋ねください。
@A_P_Hann

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