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「伝え方が9割」は伝え方の本ではなく、想像の仕方の本である

「ハーブをまぶし、ミネラル豊かな天然の岩塩と、粗挽き黒こしょうで美味しくソテーした白身魚か.........、ただのビーフでございます」

映画「ハッピーフライト」の中で、新人キャビンアテンダント演じる綾瀬はるかが機内食を配るシーン。魚料理と肉料理があったのだが、肉料理ばかりが選ばれてしまい、魚が大量に残るというピンチ!そこにベテランの先輩がやって来て、アドバイスをする。アドバイスを受けた綾瀬はるかがテンパりながらも発したユーモア溢れるセリフだ。

極端な伝え方だけど、分かりやすくて面白い。
「伝え方が9割」というビジネス書の中で伝え方の一例として紹介されていた。

コロナの影響で休業期間の延長を受け、めちゃくそに時間が有り余っているので、この際に読みたい本や、読み直したい本を読みまくってやろう!と手に取った本のうちの1冊が「伝え方が9割」だ。

「伝え方が9割」

この本は大学3年の就活時期あたりに1度読んだ覚えがある。実際就活に役立ったかどうかは全く覚えていないけど。最近はTwitterやnoteで発信もしているし、読み直してみるか。と今回再び読むことを決めた。

この本を読んでいると、実際に試してみたくなる伝え方がたくさん紹介されている。現実で使える例が散りばめられていることに加え、なかなか人と話すことが少ない時期だからこそ、余計に試してみたい欲が高まる。

個人的に使いたい!と思ったのは、「選択の自由」という技術。2つ以上の選択肢があると、相手は自然とどちらかを選びやすくなるというもの。

例えば
「よろしければ食後にデザートはいかがですか?」
と伺うのではなく、
「デザートはマンゴープリンか抹茶アイスをご用意してますが、いかがでしょうか?」
と伺うことで、デザートを食べることへの心理的障壁を下げることができる。しかも自分が選んだ!という意識が出来るので、押し付けられてる感が少なくなる。

ビジネスではもちろん、私生活でも役立つ伝え方が様々な切り口から紹介されている。今回はその中の一例を紹介したがほかの細かい技術はぜひとも本書を実際に手に取って読んでもらいたい。

この本の本質はどこにあるのか

僕は本を読む時には、必ずその本の本質、エッセンスは一体どこにあるのかを考えながら読むようにしている。残念ながら僕には1冊の本に書かれた多くの情報を細かく覚えていられるほどの記憶力は持ち合わせていないので、【この本1冊の中で1番伝えたいことはなんなのか】を探す。

本書では序盤の方に「伝え方の超基本の3ステップ」が紹介されている。

①自分の頭の中をそのままコトバにしない
②相手の頭の中を想像する
③相手のメリットと一致するお願いを作る

以上の3つのステップだ。この本は多くの手法、技術を紹介してくれているが、ぶっちゃけこの3つのステップに全てが集約されている。

最初に紹介した機内食の話に関してもこの3つのステップでまとめることが出来る。

まず、キャビンアテンダント側が望んでいるのはお客さんに余っている魚を選んでもらうことだ。ただしここで、

「すみません、魚しか残っておりませんので。」

とそのまま言われてしまうと、お客さんは余り物を押し付けられたみたいで、なんだか食べる気がしない。なんなら人気だった肉がもっと食べたい状態になってしまうかもしれない。不満や批判を生む可能性がはるかに高い。

そこで相手の頭の中を想像する。

どうすれば魚を選んでもらえるだろう?
なぜ、肉を選ぶのだろう?


そこで気づく。お客さんは当たり前だが、美味しいそうだと感じる方を選んでいるのだと。

シンプルに魚と肉の2択だと多くの人は肉の方が美味しそうだと感じるんだ。となれば、魚の方が美味しそうだと思ってもらえれば、魚を選んでもらえることになるぞ。

では、魚の方が美味しそうだと感じてもらうためにはどう提案すればいいだろう?
いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたベテランの先輩がアドバイスをして、新人キャビンアテンダントが咄嗟にとった方法が

「ハーブをまぶし、ミネラル豊かな天然の岩塩と、粗挽き黒こしょうで美味しくソテーした白身魚か.........、ただのビーフでございます」

という提案。魚の美味しさだけを具体的にイメージさせる伝え方だった。ここまで極端だと実際には使えないけど、伝え方を紹介する例としては非常に分かりやすい。

この本から見つけ出した本質は?

他にもたくさんの技術や手法が紹介されているが全てが

①自分の頭の中をそのままコトバにしない
②相手の頭の中を想像する
③相手のメリットと一致するお願いを作る

この3つのステップに集約されている。
そしてもう一歩踏み込んでみる。この3つの伝え方のステップから発せられている著者からの真のメッセージはなんなのか。

僕の結論はこれだ。

「伝え方で最も大事なのは、相手のことを一生懸命に想像することである」

「伝え方」と聞くとほとんどの人が、自分の話す技術だったり、文章の作り方だったり、そういった小手先の技術のことばかりを考えがちだと思う。現に僕がそうだった。

最初の方にも書いたが、この本で紹介された「選択の自由」という技術を使いたい!!になっていた。ただ、著者が本当に伝えたいのは細かい技術ではない。

色んな技術や手法があるけど、まずは相手のことをしっかりと想像すること。これが出来なきゃどんな技術を取り入れようと相手には伝わらんぞ!!と。

著者は本書の中で、様々な手法を「コトバのレシピ」と表現する。これはまさに言い得て妙で、料理もまったく同じことが言える。

素材をそのまま提供するのではなく、相手のことを考えて

あの人は濃い味が好きだから塩加減はこれくらいかな
あの人ウェルダンが好きだからしっかり焼きをいれよう
食べやすいように細かくカットしよう


こんな風に料理を仕上げていく。
コトバもまったく一緒なのだ。

おわりに

現在はコロナ禍で多くの人が家にいる時間が長くなっている。自粛要請から約1ヶ月近く経ち、外に出られないイライラや、フラストレーションが溜まってきているのではないだろうか。

そんな時に、ふと、自分の思ったことをそのままコトバにしたが為に、お互いの歯車がうまく回らないということがあるかもしれない。SNSの中でもそんな様子がたまに目に入る。

伝え方。相手のことを想像する力。
それだけでたくさんの人の気持ちがネガティブなものからポジティブなものに変わっていく。些細なことかもしれないけど、この期間を乗り越えるためには大事な知識の1つなのかもしれない。

今そばにいる人達は、どんなことを考えているんだろう?まずは相手を一生懸命に想像して伝えてみてはいかがだろうか。

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