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ヨシダナギの強かさ

西武百貨店池袋店『ヨシダナギ HERO&QUEEN展』。

ヨシダのライフワークであるアフリカや南米の少数民族を撮影した「HERO」と、近年取り組んでいる、ドラアグ・クイーンたちのポートレイト「QUEEN」。両シリーズを一挙90点以上展示している。とにかくエネルギッシュな内容で、見終えたあと、僅かな興奮と確かな幸せを覚えた。

木々の緑、空の青、土の色に、カラフルな民族衣装を纏った少数民族たち。極彩色で、一度見たら忘れられない鮮烈な印象を与える作品だが、それらをていねいに見ていくと、ヨシダナギの「強かさ」にあらためて圧される。

「HERO」の作品たちは、民俗学的にも価値のあるものだと思うが、ヨシダはそういったアプローチは一切しない。彼らの生活風景を切り取るのではなく、ヨシダの思う「美しさ」のみにフォーカスする、言ってみればモード写真だ。その感性は、偏愛とその強度に支えられている。

対象への「モード写真」的アプローチを「民族」ではなく「人物」に展開したのが「QUEEN」。NYで、パリで、大阪で、今度はドラアグ・クイーンたちがチャーミングに躍動する。

これは極私的な感想で、同意は得られないかもしれないが、つくづく「言葉の人」だなあと思う。写真が説明的であったり過度にメッセージ性が強いということではない。本人も写真の意図などあえて説明していない。ただ、被写体への興味と愛がほとばしる感じ。好奇心を突き詰めて、さらに超えた何か。それを裏打ちする言葉の力を感じるのだ。

ヨシダは「自分は写真が下手」と著書などでは述べているけど、「写真とは何か?」を考えるときに、ヨシダの作品の「強かさ」は比類のないものだ。対象にまっすぐであることとその距離の詰め方。そんな強かさに魅力を感じるし、見ていてとても元気をもらえるのだ。


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