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300字小説『2962: A Space Journey』

300字小説『2962: A Space Journey』

 二九六二年、空の果てから飛来した宇宙人達(宇宙人と形容しているものの元来地球にいた生命体なのかもしれない)によって、私達は唇をいとも簡単に奪われてしまった。
 宇宙人は人間と殆ど変わらない見た目だが、皆整った顔立ちで美しい男の姿をしており生殖器官が存在しない、ファッションセンスは宇宙的だが、それもある意味彼らの可愛さだと思う。
 だが、優しいキスをくれただけで地球の五割を侵略した彼らも別の上位異

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300字小説『いつか来た道』

300字小説『いつか来た道』

 高校三年の冬に祖父が亡くなった時、俺は大学受験の結果の方がよほど気掛かりだった。葬儀の事もほとんど記憶に残っていない。
 そして今年、大学卒業間近の俺の元に母の訃報が届いた。
 女手一つで俺を育ててくれたのに、俺は就活が終わらずに死に目に会う事ができなかった。
 故郷を離れていた俺に代わり、伯母が喪主を務めてくれた葬式で流れたシーナ&ロケッツの『この道』を聴いて、ふと祖父の葬式を思い出した。
 

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短編小説『先輩以上、友達未満』

短編小説『先輩以上、友達未満』

 放課後、だいたい野球部の準備体操の声が聞こえ始める頃、校舎から離れた図書館に亜庫芽杜(あぐらめもり)は足を運ぶ。
 制服のリボンを着けず、靴下も学校指定の白ではなく柄の入ったものをあえて履き、髪にはメッシュを入れ、先生に怒られても自分のスタイルを貫く、所謂不良である亜庫だが、彼女には小説家になりたいという夢があり、本を読む事は好きだったので図書委員の仕事は真面目にやっている。
 今日は図書館の受

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