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短編小説『箕蘭黛家の日常』
家族のルール……というわけでもないが、我が家では決まって、その日届いた新聞や、買った本から貰ったチラシに至るまでリビングのテーブルに重ねて置いておく。
その日一日、置いた本人は部屋に持ち込まず、家族が自由に手に取っていい。
翌日の朝になると、家を出る前に各々部屋に持ち帰ったり処分する。
私、箕蘭黛滾夏がこの家に生まれた時から崩れない習慣だ。
父が置くものは、主に新聞やチラシ、街で配っているティッ
300字小説『2962: A Space Journey』
二九六二年、空の果てから飛来した宇宙人達(宇宙人と形容しているものの元来地球にいた生命体なのかもしれない)によって、私達は唇をいとも簡単に奪われてしまった。
宇宙人は人間と殆ど変わらない見た目だが、皆整った顔立ちで美しい男の姿をしており生殖器官が存在しない、ファッションセンスは宇宙的だが、それもある意味彼らの可愛さだと思う。
だが、優しいキスをくれただけで地球の五割を侵略した彼らも別の上位異
300字小説『いつか来た道』
高校三年の冬に祖父が亡くなった時、俺は大学受験の結果の方がよほど気掛かりだった。葬儀の事もほとんど記憶に残っていない。
そして今年、大学卒業間近の俺の元に母の訃報が届いた。
女手一つで俺を育ててくれたのに、俺は就活が終わらずに死に目に会う事ができなかった。
故郷を離れていた俺に代わり、伯母が喪主を務めてくれた葬式で流れたシーナ&ロケッツの『この道』を聴いて、ふと祖父の葬式を思い出した。