飛び込み営業に入った旅館で、たくさんの手が出てきた話
怖さ:★★☆
以前、職場でお世話になった後輩から聞いた話です。
彼女の元カレは、しばしば不思議な体験をしていた方だったそうです。はっきりと幽霊の姿形が見えるというのではないけれど、なんとなく奇妙な空気を感じるとか、もやもやしたものを見るとかはよくあったようです。
そんな元カレが、電気(照明器具?)の営業をしていた時のことです。飛び込み営業でいろいろなお店などに入っていたそうです。
中でも旅館は当時、照明のLEDへの切り替えをまだしていないところもあり、切り替えをするとなると部屋もたくさんあるし大口の受注が取れると、特に力を入れて営業に回っていました。
ある日、元カレは同僚とともに、ある旅館に飛び込みで入りました。
古い大きな旅館で、LEDに切り替えたら売り上げも大きいと考えたのでしょう。担当者が来るまで少し待っているようにと大広間に通されました。
ところが、待てど暮らせど担当者は来ません。大きな部屋で同僚と待っていました。
と、突然、バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタッと音がしました。
びっくりして音のする方を見たら、窓ガラスが変です。白い手の跡がべたべたと、びっしりついていました。
窓の外をのぞいて見ると、そこには崖があって、崖の下に川が流れていました。
誰かがいたずらをしようにも、窓の外に人が居られるようなスペースはありません。
真昼間からそんな変な現象が起こるなんて、絶対やばい!
元カレとその同僚はLEDの売り込みをあきらめて、急いで旅館を後にしたそうです。
担当者がなかなか現れないということは、その旅館では照明の切替工事など望んでいなかったのかもしれませんが。怪奇現象で飛び込み営業を追い返すとは、とても斬新な断り方ですね……。
話し手:20代 女性
採取時期:2022年3月
採取場所:東京都内
旅館となんか怖い話
怖い話がお好きな方も、あんまり得意ではないという方も、楽しんでいただけるよう、取材しています。 よろしければ、サポートしていただけると嬉しいです。