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貴方がもう一度筆を持ってくれますように
僕が絵を描くことが出来なくなって早、三年。
時の流れとは速いもので誰も僕のことなんか覚えていなかった。三年前、突如いなくなった画家として、新聞にでかでかと出ていたのに三年という時はやはり長くそして、覚えている人はいたのかもしれないが記憶の片隅にある塵みたいな扱いになるだろう。
ーあの時、突然筆が持てなくなってしまった。妻を亡くしたからなのか、それとも私のことを慕ってくれていたたった一人の友人が火事
Remember with cake
「お疲れ様でしたー。」
私は、誰もいないオフィスに一礼をして職場を去った。現在の時刻は午後20時、冷たい風が自分の頬に強く打ち付けられる。
職場を出てから一気に倦怠感が増した。
「今日は、特に買うものもないしこのまま帰ろう。」
なんて事を思いながら、近道で職場から最寄りの駅まで歩こうとした。細い路地みたいな所を少し早歩きで歩いていると聞き覚えもないような不思議な声で「すみません。」と言われ