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プロダクトニーズを測る2つの視点と4つのユーザーリサーチ


はじめに

自身のアイデアをベースに起業を目指したり、新規事業を立ち上げて事業化を目指したりする中で、ユーザー(想定ターゲット)の声を聞いたり、ユーザーを取り巻く市場・環境の調査を実施することは重要になります。特にプロダクトマネージャー(PdM)にとって”ユーザーと会話する”ことは、今後どのようにプロダクトを作り上げていくかのインサイトを得る上で非常に重要なプロセスになります。

今回は、このプロダクトニーズを測る上での2つの視点と4つの具体的な検証内容・手法について、述べていきたいと思います。

2つの視点

ユーザーを理解する上で、まずはマクロとミクロの2つの視点から物事を捉えてみることでユーザーの理解がより深まります。マクロ経済学、ミクロ経済学という言葉を一度は耳にしたことがあると思いますが、今回の視点はそこから派生した内容と理解しております。

簡単に意味をご説明すると、マクロ視点というものは「ユーザーやユーザーを取り巻く環境の集計量(TAM・SAM・SOMやアナリティクス分析など)の短期および長期の変化」を指します。また、ミクロ視点というのは「ユーザー個別の行動」を指します。

本章の冒頭でもお伝えした通り、ユーザーを理解する上でこの両面から分析を進めることでユーザーの理解が深まるとともに物事を動かす上での説得力がより強固なものになります。各々の視点におけるいくつかの分析例を以下に記載しておきます。

画像引用:
Innova(https://innova-jp.com/analysis-swot/)
新規事業でのTAM、SAM、SOMの試算方法を徹底解説|新規事業を立ち上げるプロセス
FINCH(ポジショニング分析を効果的に活用するための3つのポイント)
WEB活(アクセスログは宝の山!Googleアナリティクスによるアクセス解析のポイントを知る)

今回は、"事業立ち上げフェーズでまだプロダクトがない状態から事業化を目指すまでの主にミクロ視点でのユーザーリサーチ"について整理していきたいと思います。

リサーチの進め方

アイデアが生煮えの段階からどのように煮詰めていくか、という問いに対してなのですが、基本的な流れとしてはさらに細分化した「仮説」を立てていき、その仮説を「検証」するということの繰り返しになります。仮説に関しては大きく4点あります。この4つの仮説に対して、どんな目的で何をどう検証していくか、という点を詳かにしていければと思います。

ターゲット仮説(顧客の仮説)
ニーズ仮説(課題の仮説)
提供価値仮説(顧客の課題に対する提供価値の仮説)
ソリューション仮説(解決策の仮説)

この4つの要素をさらに細分化したリーンキャンバスというアイデアを可視化するフレームワークがありますが、今回は本件の詳細は割愛させていただきます。

4つのユーザーリサーチ

前章で述べた述べた4つの仮説の検証を進めるにあたり、4つのリサーチ段階があります。そちらが以下です。

ターゲット・ニーズ仮説の検証
提供価値仮説・ソリューション仮説のUX検証
ソリューション仮説のUI検証
ソリューション仮説に対する行動検証

各々のユーザーリサーチについてご説明いたします。

ターゲット・ニーズ仮説の検証

まずはターゲット仮説とニーズ仮説の検証についてです。もう少しわかりやすい日本語でお伝えすると、「誰の何の課題を解決するのか」という問いに対して、「その課題を抱えた顧客は本当に存在するのか」「その顧客は本当にその課題を抱えているのか。また、その課題はどれほど強いものなのか」を検証をする段階になります。簡単ですが、検証目的、検証手法、検証内容について整理しておきたいと思います。

  • 検証目的

    • アーリーアダプターとなりうる顧客が本当に存在するかを探る

    • 「その顧客は本当にその課題を抱えているのか。また、その課題はどれほど強いものなのか」を明確にする

  • 検証手法

    • ユーザーインタビュー

  • 検証内容(確認すべき問い)

    • 想定ターゲットのデモグラ情報、嗜好・悩みについて

    • 想定ターゲットの一定周期(年間、月間、週間、1日)の過ごし方

    • 過ごし方の中で煩わしいと思う部分がどこか

    • 煩わしさに対して現時点どう対処しているか

  • 留意点

    • マーケットインのアイデアには有効な検証プロセスである

    • 顧客の見ている世界を詳らかにする(我々の世界に顧客を引き込むのではない)

    • 強い課題を感じる発話が垣間見えるかを探る

提供価値仮説・ソリューション仮説のUX検証

続いては、提供価値仮説とソリューション仮説のUX検証についてです。「顧客の課題に対してどのような価値を届けるべきか」「価値を届けるための解決策とは何か」という問いに対する解を探索する必要があります。確認方法としては、価値と解決策はセットで考え、ソリューション仮説を簡単なコンセプトシートやプロトタイプ、ストーリーボードなどに起こして、それを想定ターゲットに提示し率直なフィードバックをもらう形になります。

  • 検証目的

    • 顧客の課題を解決するための解決策が受容されたかを探る

    • 解決策のどの部分に価値を感じたかを探り、仮説との整合をとる

  • 検証手法

    • コンセプトシートやプロトタイプ、ストーリーボードを用いたユーザーインタビュー

  • 検証内容(確認すべき問い)

    • 想定ターゲットのデモグラ情報、嗜好・悩みについて

    • デモを実践する前のターゲット・ニーズ仮説に対し、興味関心、共感を感じられるか。

    • デモの内容(ソリューション仮説)に対して、利用意向(使ってみたいという気持ち)があるか。その理由。

    • 有償の場合でも使ってみたいか。使ってみたい場合、いくらまでなら払えるか。

  • 留意点

    • コンセプトシートやプロトタイプ、ストーリーボードによるデモンストレーションが前提となる

    • ターゲット・ニーズ仮説に対する興味関心、共感のリアリティを探る。(その課題に対して先日ちょうど関係者と議論してました、などの発話があると受容性が高いと見做すことができる)

    • 利用意向(有償利用意向)の真剣度が垣間見えるかを探る。(いつ使えますか?前払いでもよいので払います。みたいな発話があれば、かなり受容性が高いとみなすことができる)

ソリューション仮説のUI検証

ソリューション仮説のUI検証については、仮説として立てた解決策がUXとして受容されたという前提において、その使用性(使いやすさ)を検証するプロセスになります。確認方法としては、コールドモック(厳密には、コールドモック同士を実際プロダクトと同じように紙芝居的につなぎ合わせたもの)などのようにプロトタイプをできる限り実際のプロダクトに近づけていき、想定ターゲットに触ってもらいながら、使いづらい部分がないかを探る形になります。

※コールドモックの一例(Figmaのプロトタイピング)

  • 検証目的

    • ソリューション仮説に対して、使いやすさの観点でボトルネックがないかを探る。

  • 検証手法

    • コールドモックを用いたユーザーインタビュー

  • 検証内容(確認すべき問い)

    • 想定ターゲットのデモグラ情報、嗜好・悩みについて

    • 機能毎に実際に操作いただき、目的を果たすことができるか。目的を果たす中で迷った部分がないか。

    • (サービス全体を一通り操作した上で、)トンマナを受けての印象はどうだったか。

    • (サービス全体を一通り操作した上で、)使いやすさの観点で引っかかる部分がなかったか。

    • アプリをダウンロードして自らが日々操作をするとした場合に、どのような流れで操作をするか。

  • 留意点

    • ユーザーに操作いただいている間は可能な限り助言をしない。(操作が滞った時に「今何を考えているか」「何で困っているのか」を伺い、そのサポートをする)

ソリューション仮説に対する行動検証

プロトタイプ段階でのUXUI検証を経た上で、次はユーザーのニーズを満たす最小限の機能が詰まったプロダクトを活用し、ユーザーの声だけなく行動を見ていく検証プロセスになります。確認方法としては、MVP(最小実用可能製品)を構築し、そのプロダクトを想定ターゲットに一定期間操作いただいた上で、期待した行動が見られるか、プロダクトを利用いただいた上で価値を感じるか、などを探る形になります。

  • 検証目的

    • MVPを実際に操作いただくことによって、より確度高くサービスに対する価値が受容されたかを探る。

  • 検証手法

    • MVPを一定期間利用いただいた上でのユーザーアンケート・インタビュー

  • 検証内容(確認すべき問い)

    • 想定ターゲットのデモグラ情報、嗜好・悩みについて

    • プロダクト使用前後でギャップがあったか。

    • 違和感なくスムーズに利用ができたか。

    • どのようなサイクル、流れでプロダクトを活用していたか。

    • プロダクト使用前後でどのような変化をもたらしたか。その背景。

    • プロダクト全体、各機能に対する満足度がどの程度か。その理由。

    • サービス公開された場合の利用意向。その理由。

    • 有償の場合でも使ってみたいか。使ってみたい場合、いくらまでなら払えるか。

    • サービス公開された場合、想定チャネルにおいて、どんなメッセージになら目が止まりそうか。

  • 留意点

    • ユーザーの声に留まらず行動に目を向ける。

    • 顧客の課題が解消されたか(解消される兆しが見えたか)を探る。

    • 利用意向(有償利用意向)の真剣度が垣間見えるかを探る。

まとめ

今回は、主に事業立ち上げ、起業などのアーリフェーズにおけるプロダクトニーズを測る上での2つの視点と4つのユーザーリサーチについて述べさせていただきました。

冒頭の繰り返しになりますが、プロダクトマネージャー(PdM)にとって、プロダクトの真のニーズを推し量る上で”ユーザーと会話する”ことは非常に重要です。

そのことを念頭において、ユーザーリサーチの設計を進めていただければと思います。



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