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ステージ

自分を何とか集団に落とし込もうと必死になっている様が滑稽で、相応の苦しみが透けて見えるところが痛々しくて、それを遠巻きに見るのが好きだった。

ストーリーでサークルの人たちがカラオケに行っているのを見た。必死でLINEを見返すけど[今からカラオケ行くよー!]の文字は見当たらない。
Zenlyを見る。河原町のジャンカラに6人ほど。全員にスタンプを送ってみたけれど、誰からも返信はなかった。インスタのストーリーにも返信した。既読すらつかない。
その日は寝れなかった。なんで誘われなかった?私何かした?これまで誘われてきた遊びにはほぼ参加してきたし、突然の呼び出しにも応じてきた。その度にフッ軽とほめられてきたのだ。
好かれるためにタバコも始めた。喫煙者というだけで他の子とは違う繋がりがあると思ってた。吸いに行こうと先輩に誘われる度に優越感を感じていた。引き出しを増やそうとして、先輩が吸っている銘柄はすべて吸った。こいつめっちゃヤニカスじゃんwといじられるのも他の子と差別化できてうれしかった。
私を拒否したサークル。とたんに怒りが込み上げてきた。金を使わせるだけ使わせて簡単に捨てて、最悪な集団。全員ゴミだ、死ねばいい。思い返せばくだらない話しかできない、脳みそのやつらだった。こっちが合わせてやってたんだ、無理に付き合う必要ない。
バイト先に入ってきた新人の1回生にそのサークルを紹介した。すごくいいサークルだよ、先輩みんないい人だし面白いし、仲良くて遊びもめっちゃあるよ、アー私はちょっとお金が厳しいからやめるけど、ほんとはやめたくないんだよね、ねえ入ろうよ!その子はすぐにサークルに入った。大学に相当夢を抱いているようで、キラキラ生活を求めているようだ。はっきり言って可愛くないしノリもよくない。絶対にすぐハブられる。私と同じ目に合え。いや、この私がだめだったのだから私より酷い目にあうだろう。合ってしまえ。ああ、勧誘してきた先輩もこんな気持ちだったのか。

誘われなくなったということは、もうお前はいらないと全否定されているのと同義だ。それは非常に辛いことで、自我を保つために都合のいいように解釈して無理に嫌いになろうとしていただけだというのは、今になってわかる。そして犠牲者を増やすことで自分だけではないのだと安心したがった。そこで選ぶのも、成功しそうな子ではなく、自分より格下だと思う子。
多くの人は大学生活に夢を抱き、キラキラしたステージに上がりたがる。しかし、舞台袖ではドロドロとした戦いが行われていて、みんなステージから落とされないように必死なのだ。私はもうステージの上には上がりたくはないが、ただ必死に頑張って頑張って、それでも蹴落とされた人の落ちていく様を観客席で見ていたいと思う。

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