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【第3回】講義概略

第三回なにものゼミにお越しくださりありがとうございました。
第三回の講師ゲストは、重度知的障害を伴う自閉症のお子さんを育てながら浦安市議会議員をされている毎田潤子さん。『障害者家族』や『政治』を始め沢山のお話をして頂きました。

今回の更新は、お越し頂けなかった方向けに講義の概略をまとめていきたいと思います。


自分の子どもに障害があるということ

 「自閉症」、この言葉が頭をよぎるようになったのはいつからか。1歳半健診での問診、必死だった。名前を呼ばれると振り向くこともある、言葉を話すこともある、指差しをすることだってある。
 だましだましで答えた。自分の子どもに障害があるとは認めたくなかった。

 もしかしたら、とは何度も思うが認められない。一方で、本やネットで自閉症については調べ、不安になる。
 藁をもすがる気持ちで怪しい民間療法にも手を出した。何をしても息子がよくなることはなかった。

心のオアシス

 心身ともに疲労を感じていた時に出会ったのが「簡易マザーズホーム」。同じ悩みを持つお母さんたちとの交流や情報交換は心を軽くした。週に1回、2時間の母子分離の時間が唯一、自分の時間だった。

 だが、明るい感情だけで過ごすこともできなかった。子どもの障害を受け入れられずに自ら命を絶ってしまったお母さん。「育てられない」と児童福祉施設へ入所させられた子ども。不慮の事故や病気で亡くなってしまう子どもたちもいた。

 同じ悩みを持つ親同士のはずなのに、

「うちの子のほうがあの子よりも軽度だわ」

という、見えない黒い感情も渦巻いていた。

涙の帰り道

 思春期になった息子の体格はどんどん良くなっていった。それにつれて新たな悩みが出てきた。

 止まらない「激しいもの壊し」だ。息子には行動障害がある。182cm、83kgの大きな身体で繰り出されるパンチや蹴り。家の壁を蹴る、殴るは日常茶飯事だが、車の窓ガラスを蹴破られたときにはさすがに驚いた。どうして息子が怒っているのか分からなくて泣いたこともある。
 
 ある日、暴れる息子に応戦しようとして手首を骨折した。初めて、市役所に助けを求めた。

「一日に数時間でいいから、息子を預かってくれませんか。私たち家族はもう限界なんです」

 そこで愕然とする事実を知る。息子のような重度障害者は、生まれ育った浦安市で一生暮らし続けることができない。息子の終の棲家がこの街にはない。近い将来、息子が直面するだろう浦安市の現状に、涙しながら一人歩いた。

転機、挑戦、そして苦悩

 「市議会議員になってみないか?」

 当時の市長からの突然の誘いにびっくりした。話がうまい、ということで声がかかったが本気にはしなかった。
 議員になろう、そう心が決まったのは選挙直前。障害者施策を柱にほんの少しの支援者と人生初の選挙活動をし、奇跡的に初当選した。

 その後、2期目を目指した。障害者施策は自分の強みだと思えるようになっていた。初めての選挙活動とは打って変わり、多くの支援者とともに闘い、再当選。当時の写真は今でも自分を奮い立たせる宝物だ。

 
 障害者の親だからこそ分かるものがある。
 
 
 議員になり、浦安市内に重度障害者の受け入れが可能な福祉施設を作った。重度障害者の終の棲家を浦安に作る、息子のためにと願ったことがやっと叶った。
 だが、申し込み者数は予想をはるかに上回っていた。

 市民を想い、議員ゆえに息子がこの施設へ入所することは諦めた。

私はなにもの?

 息子のために始めた議員の仕事、それなのに息子が不利益を被っていないか。自分の子どものことでさえ分からないのに、市民の期待に応えられるのか。今でも常に葛藤は付きまとう。
 
 それでも思う。

「私がやらねば誰がやる!」

 あたりまえのことをあたりまえに。障害があってもなくても、すべての人が生まれ育った場所でその人らしく生き、人生を終えていけるように。

 今日も変化していける。自分にはできることがまだまだあるような気がする。なにものでもない。いつでも何にでも変われる。それが自分だ。


あの子の母親、それが私

 司会者からの「生まれ変わっても息子の母になりたいか」、という質問にこらえきれず涙があふれた。

「なりたいんでしょうね、きっとね。なりたいんだと思います。これは強がりとかじゃなくて、今の私がいるのは多分、息子がいたからなんですよね。」

 無難な人生を歩み、障害者の親になるとは一切思ってもいなかった。障害者の子どもが生まれて、やらなきゃいけないと思って議員になった。
 今の人生にすごく感謝して満足しているのは息子が「普通」の子じゃなくて、障害者だったからこそ。あの子がいたからこそ、今の自分がある。

 そう、思えるようになった。

 障害が無ければと思ったことも、ものすごくあったけれど、本当にあの子がいなければ、今の私はなかったし、今の家族もなかった。
 だから、感謝。



次の更新では、この講義の運営裏側などこぼれ話を投稿します!
お楽しみに!

次回の講義は、12月1日 17:20〜

HSP専門カウンセラーの武田友紀さんをゲストにHSPについて語り合います。

皆様のご参加お待ちしております!


第5回①

参加フォームはこちら
https://docs.google.com/forms/d/1SPvfsRhH6u-pxXbeckSuwbtKYicnsYvONVB_61fAvG0/edit


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