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映画Mr.children「GIFT for you」の感想とミスチルの思い出

 映画Mr.children 「GIFT for you」を観にいった。素晴らしかった。ミスチルの「映画」。ライブビューイングとも違って、ミスチルのライブ映像の合間に、ミスチルファンの方々の個人的なインタビューが差し込まれているという構成だった。このインタビューに関しては賛否両論あり、純粋に「ミスチルのみ」を楽しみたかった人にとってインタビュー部分が不要だったという。
 僕は、(曲部分はもちろん)インタビューが特に映画の中で好きな部分だった。この映画の魅力を語る前に、ミスチルに対する僕の熱量を書きたい。

 たしか5歳か6歳の時、GIFTをきいたのが初めてのミスチル体験だった。「白と黒のその間に」の部分をずっと「白とクロネコヤマトに」だと思っていた。小5くらいまで勘違いしていたと思う。

 中学生になって、ミスチルが大好きになった。長谷部誠の「心を整える」をきっかけに、どハマりした。(「心を整える」には長谷部選手の好きなミスチルの曲ランキングが載っていた。)幸運なことにミスチルのCDが家に意外とたくさんあったので片っ端から聴きまくった。アルバムi ♡ U やQは特に聴いた。部活から帰ってへとへとなのに、名もなき詩の「成り行きまかせの〜」のところを歌えるように練習したりもしていた。
 僕は、クラスや部活の友達にミスチルを聞くよう喧伝してまわった。かなり多くの友達が狙い通りハマってくれた。(世間ではミスチルなんてメジャー中のメジャーだったが、僕の中学では、音楽はGreeeenとファンモンが中心だった。)

 例えば、今の中学生がvaundyやあいみょん、KingKnuなどの比較的最近デビューしたアーティストにハマったとしても、すぐにサブスクで全ての曲を聴くことができる。しかし、ミスチルは自分たちが生まれるずっと前から活躍していたため曲数が膨大だった。さらに当時はサブスクもなかったため、youtubeでMVをみるか、MVがない曲だとCDをレンタルするしかなかった。何年も前に発表された曲を発見し、友達と共有すること自体が新鮮だった。
 
 「signいいよな」とか「やっぱ終わりなき旅だよな」とか「俺はand I love youかな」とか話すのが、物凄く楽しかった。

 ミスチルの曲は、サビまでが個人的で具体的な歌詞、サビが抽象的で普遍的な歌詞であることが多い。

近頃じゃ夕食の 話題でさえ仕事に 汚染されていて
様々な角度から 物事を見ていたら 自分を見失ってた
入り組んでいる 関係の中で いつも帳尻 合わせるけど
Ah 君は君のままに 静かな暮らしの中で
時には風に身を任せるのも いいじゃない
Oh miss yourself

https://genius.com/Mrchildren-innocent-world-lyrics

これはinnocent worldの2番の、サビまでの歌詞。僕は、いつもこの部分を聴くと、20代後半でバリバリ働いている都会のサラリーマンを思い浮かべる。映像を思い浮かべることができるくらいとても具体的だ。

物憂げな 6月の雨に 打たれて
愛に満ちた 季節を想って 歌うよ
知らぬ間に忘れてた 笑顔など見せて
虹の彼方へ放つのさ 揺れる想いを

https://genius.com/Mrchildren-innocent-world-lyrics

 このようにサビでは、普遍的で抽象的な歌詞が並ぶことが多い。しかし、抽象的だけれどもぼんやりとした感じがしないのは、サビまでの歌詞で具体的なイメージを持たせてくれているからだと思う。「具体からの抽象」、「個人からの普遍」、がミスチルが多くの人を魅了する理由なのではないかと勝手に思っている。

 そして、(歌詞中の)個人の体験から抽出された普遍的なメッセージを聴いた第三者は、抽出された普遍性から、さらに自分の個人的な体験を重ねることができる。「曲に自分を重ねる」とはよく聞く文句だが、ミスチルの曲は特にそれがしやすいのだと思う。曲の中で描かれた具体的な描写はあくまで一例で、「あなたの曲でもあるんですよ」と言ってくれている気がする。

 映画Mr.children 「GIFT for you」はまさに、ミスチルの普遍的な曲が、一人一人にとっての個人的な曲になっていく過程にフォーカスしていた。合間で挟まれるファンの方々のインタビューでは、ミスチルの曲と自分の日常や人生とが重なり合った経験が語られた。

 インタビューで語られたものの中には、微笑ましいものもあれば、凄くセンシティブなものもあった。しかし、それが逆にミスチルの楽曲が肯定してくれるものの幅広さを示していた。ファンの方々が「自分だけの、Any」、 「自分だけの、かぞえうた」を語っているのはとても素敵だった。

 そして、この映画もまた、多くの人の人生に重なり合い、多くの人にとっての「自分だけのの映画」になっていくのだと思う。僕にとっても「noteで2000字も素晴らしさを語ってしまうくらい好きな映画」になった。

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