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短編脚本「おかえりなさい」(一人芝居)

仕事で疲れて帰った時に「おかえりなさい」と言ってくれる人がいる。そういう【幸せ】を求めて、私は彼を家に迎え入れた……。

脚本:たかつかな
上演時間:20分程を想定
登場人物:佐藤
……女性でも男性でもそのほかでも可、一人称は男女ともに使う「私」としていますが、人物像に合わせて変えていただいて構いません。
※関西弁で書いていますが標準語等への変更可。
※対象を彼にするか彼女にするかもご自由に設定してください。

2020年、フィジカル・ディスタンシング(物理的距離)を取れる創作脚本として、一人芝居の物語として描いたこちらの「おかえりなさい」を公開することにします。


「おかえりなさい」

暗闇の中に人物が浮かび上がる。仕事帰りの疲れた様子。手にはカバンとスーパーの袋。
電車に乗っている、階段を上っている、そういう音や動きに混ざって心の声が零れてくる。

佐藤「おかえりなさい。そう言ってくれる人がいる。それが私の憧れやった。幼いころから誰もいない家に帰るのは当たり前で。ほんでもう家族のいない私にとって、「おかえりなさい」と言ってくれる人がいること。その温かい色が、【幸せ】の形にも思えた。私は人づきあいがへたくそやし、きっと一生一人なんだろうなとも思っていて、だから余計に、余計に「おかえりなさい」は【幸せ】やった。落ち込んだり嫌なことがあったりして、「ただいま」と玄関を開けると、薄暗い闇が私を飲み込もうとしとるみたいに感じることがある。このまま消えても誰も気が付かんやろうな、私ははそれっぽっちの人間なんやな、と。誰でもない私自身が私を攻撃してくる時に「おかえり」って誰かが言ってくれる。それだけできっと私は救われる。ような気がして。「おかえり」って言ってほしくて。せやから。せやから私は、彼(彼女)を家に迎え入れたんかもしれん。」

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