『DEATH STRANDING』発売1周年に寄せて
『DEATH STRANDING』発売から一年が経ったので、感想などを書いて見ようと思います。
別の投稿にも書きましたが、私は予約購入し発売日前にダウンロード、その後2週間で66時間かけてクリアしました。当時は完全にのめり込んで生活の中心に『DEATH STRANDING』がある感じでした。何故ここまでハマったのかをまとめて見ようと思います
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その前に、私は『DEATH STRANDING』に対して過剰な思い入れを持っているため冷静に評価することはできません。そこで、ゲームレビューは次回に回すとして、今回は『DEATH STRANDING』に対する私の思い入れについて書いていこうと思います。
始まりは2015年3月
『MGSVTPP』の発売を心待ちにしていた頃、コナミ公式サイトから「A HIDEO KOJIMA GAME」や小島プロダクションのロゴが消されているということがわかり界隈はザワついていました、さらに小島監督の名前がコナミの役員一覧から消え、小島プロダクションが社内別組織に吸収されたことが報じられました。
それだけに留まらず、「小島秀夫は既にコナミを退職している」などの噂も飛び交い私は、制作中の『MGSVTPP』のクオリティは担保されるのか、「メタルギアソリッド」シリーズは5で終わってしまうのか、それ以降は小島秀夫監督の新作ゲームを遊ぶことはできないのか。などと色々気を揉んでいました。
『Silent Hills』中止
コナミの人気ゲーム『メタルギア』シリーズの小島秀夫監督と映画『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督がタッグを組み、海外ドラマ『ウォーキング・デッド』のノーマン・リーダス主演で開発が進められる予定だったホラーゲーム『サイレントヒル』最新作『Silent Hills(原題)』。4月末に突如、開発中止になった件について、デル・トロが胸中を明かした。
(上記記事一部抜粋)
2015年4月末、これも楽しみにしていたゲーム「Silent Hills」の開発中止が発表されました。上記の記事にも書かれているように、小島秀夫監督と、映画『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ監督、『ウォーキング・デッド』のノーマン・リーダスさん主演のゲームになるはずでした。3月に出ていた退職の噂と併せて『MGSVTPP』が小島秀夫監督の最後のゲームになるのでは無いかという絶望がさらに現実味を帯びてきていました。
含みのあるツイート
そして、2015年7月にBOSSこと大塚明夫さんが「コジプロは解散させられてしまった」とツイートし界隈で話題になりました。
少なくとも明夫さんや、明夫さんに解散を伝えた関係者にとっては不本意な解散だったんだろうなということがわかります。また、「これが最期になったとしても…MGSは不滅です!」の言葉通り、『MGSVTPP』以降「メタルギアソリッド」シリーズは作られていません。
『MGSVTPP』発売
不穏な空気は出つつも2015年9月2日予定通り『MGSVTPP』が発売されました、シリーズの流れを組みつつオープンワールドに進化したゲーム性を楽しみ、いつも通り素晴らしいストーリーに魅了され、FOX Engin(小島プロダクションが開発したゲームエンジン)が描く美麗なグラフィックに目を見張りました。機会があればまたやってみたいゲームです。
The Game Awards 2015
『メタルギアソリッド5 ファントムペイン』が「The Game Awards」を受賞したが、小島秀夫監督の授賞式への出席は、雇用契約を理由にコナミに阻まれてしまった。
(上記記事一部抜粋)
優れたクリエーターは世界を変えることができると私は思っています。それだけの能力を持った小島監督が雇用契約を理由に希望していた授賞式に参加できないというのは非常に残念な出来事でした。
2015年は「小島プロダクション消滅」→「サイレントヒル消滅」→「授賞式への参加阻止」の流れの中でコナミ憎しとなったファンたちが「F**K KONAMI」とツイートしまくっていたと記憶しています。
コジマプロダクション設立
2015年12月16日小島監督がコナミを退職し、「コジマプロダクション」を設立しSCEと契約したことが報じられました。
小島監督の新作はもう遊べないのかもと言う不安もあったので、一転「PSで小島監督の新作が遊べるんや」と喜んだと記憶しています。ただ、いくらSCEと契約を結んだと言っても、既にハイエンドのゲーム製作には多大なコストかかかる時代になっていたので、製作されるゲームは小島監督が最初のメタルギアでコンソールの制限からステルスゲームを生み出したように、敢えてのドット絵とか、CGの利用量を最低限に抑えながら遊ばせるような、王道というよりは工夫で遊ばせるものになるのではないかと予想していました。
『DEATH STRANDING』ティザートレーラー発表
2016年6月のE3で『DEATH STRANDING』のティザートレーラー(上記)が公開されました。「コジマプロダクション」設立時の私の予想を大きく裏切り、CGの砂や水、ノーマン・リーダスさんが演じる男の表情変化などは当時最高レベルといって間違いなく、驚くと同時にまだ確定とは言えないもののハイエンドの「A HIDEO KOJIMA GAME」がまた遊べると期待しました。また、コレはどんなゲームになるのか???という疑問が浮かんでいました。
The Game Awards 2016
2016年12月、昨年は雇用契約に阻まれ参加できなかった「The Game Awards」にて「INDUSTRY ICON」という賞が小島監督に贈られました。「小島プロダクション」の解散、「Silent Hills」の開発中止そして、参加の叶わなかった授賞式、新会社の設立、半年後のE3でティザー公開という流れをみているファンにとって、受賞のシーンや小島監督のスピーチはグッとくるものがありました、以下がそのスピーチです。
「ありがとうございます。昨年、自分はすべてを失ったと思いました。しかし、みなさんのおかげで何も失わずにすみました。サポートしていただきありがとうございます。ジェフ、そしてThe Game Awardsに感謝しています。自分はゲームを愛し、このアワードを愛しています。そして心からみなさんを愛しています。ありがとうございました。ところで、ホリデーには少し早いですが、ひとつギフトを持ってきました。楽しんでください」
この頃から私は『DEATH STRANDING』と言うプロジェクトに参加しているような気分になっていました。と言っても私にできるのはゲームやグッズを買うことや、それらの感想を呟くことぐらいですが。
参加というのは適切ではないかもしれないので、好きな球団を応援するように小島監督に勝って欲しいと思うようになっていました。
勝つと言っても何かを打ち倒すわけではなく、『DEATH STRANDING』が商業的にも成功することによって、一人のクリエイターの力で、ハイエンドゲームは大きな資本のある会社しか作れなくなっている現状を。クリエイターが会社組織で生きていかなくてはならない現実を、ひっくり返すところを見せて欲しかったのです。
『DEATH STRANDING』ティザートレーラー第2弾公開
上記の小島監督のスピーチの後、新しいティザーが公開されました、不気味な笑みを浮かべるマッツ・ミケルセンさんのイケメン具合も目を引きますが、ファンを喜ばせたのは冒頭から登場するギレルモ・デル・トロ監督でした。
日本語吹き替えのキャスト発表
少し間が空きますが、2018年6月に今までに公開されていたティザートレーラーの日本語版が公開され、さらに小島監督と日本語版キャストが一緒に写った写真がTwitterに投稿されました。
この写真に収められているのは、アニメ「ゴールデンカムイ」で尾形百之助を演じている津田健次郎さん、『メタルギアソリッド3 スネークイーター』でザ・ボス、『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』でサニーを演じた井上喜久子さん、『METAL GEAR SOLID PEACE WALKER』などでパスを演じた水樹奈々さん、そして『メタルギアソリッド』歴代シリーズのスネークを演じてきた大塚明夫さん。
(上記記事一部抜粋)
MGSシリーズではお馴染みの、井上喜久子さん、水樹奈々さん、大塚明夫さんがいらっしゃいます。幻になった『Silent hills』でタッグを組むはずだったノーマン・リーダスさんと、ギレルモ・デル・トロ監督も『DEATH STRANDING』には参加していることもティザートレーラーや、小島監督の発言からわかっています。
『DEATH STRANDING』の起点を2015年と見ると、小島監督が0からスタートして、2015年の状態を超える物語と捉えることもできます。
ティザートレーラーや新しい情報が公開されるたびに、お馴染みの声優さんが参加していることや、新たな才能あるクリエイターと小島監督の繋がりがわかるので、ファンとしては「コジマプロダクション」設立からの『DEATH STRANDING』発売までの5年間は楽しく待つことができました。
情報公開の妙(閑話休題)
他のゲームでもティザートレーラーの公開は嬉しいですが、それはゲームの出来栄えや世界観を知らせるだけのものであり、大抵はすぐに忘れられてしまうものです。
『DEATH STRANDING』のティザートレーラーは、本来の役割の他にも、小島監督からファンに出されたクイズ(『DEATH STRANDING』ってどんなゲームだ?)のヒントであったり、小島監督とクリエイターの繋がりを表すものだったので、すぐに忘れられることがなかったのではないかと今になって思います。
さらに、小島監督が巧みなのは、例えばゲームエンジンの選定という、普通公開しても面白くない情報であっても、必ずそこにストーリーを載せて公開するところです。そうすることによって、スーパーの野菜ではないですが、生産者の顔が見えるようになり面白く記憶に残る情報となります。
長期間の開発にも関わらず、『DEATH STRANDING』の情報が公開されるたびに、ファンがポジティブな反応を返していたのは、上記のような仕掛けと合わせて、ファン自身が「発売までの流れ」を2015年を起点としたストーリーに昇華していたからではないでしょうか。(どんなストーリーなのかは、私が書き出すと陳腐になるので書かないですが。)
ついに『DEATH STRANDING』発売!
2019年11月8日に『DEATH STRANDING』が発売されました。予約注文していた私は前日にダウンロードして仕事から帰宅後どっぷりとその世界に浸りました。
またその2日後の日曜日、発売直前から小島監督や出演者スタッフの方達が、世界中を周っていた「World Strand Tour TOKYO」が配信されました。あんまりこういう煽り文句は好きじゃないんですが、この大塚明夫さんのスピーチが好きなのでここに貼り付けます。スピーチの箇所から再生されるので1分程度です、ここまで読まれた方は是非ご覧ください。
『DEATH STRANDING』に対する評価
■The Game Awards 2019
2019年12月12日に開催された「The Game Awards 2019」で『MGSVTPP』の2部門での最優秀賞を超えて、『DEATH STRANDING』は3部門での最優秀賞を受賞しました。
■PlayStation®.Blog Game of the Year 2019
「The Game Awards 2019」から1週間後の12月19日に発表された、「PlayStation®.Blog Game of the Year 2019」で7部門で最優秀賞に当たるプラチナトロフィーを受賞しました。
Playstation .Blogの結果はちょっと偏りすぎじゃない?と思うんですが、「The Game Awards」の結果と合わせれば、『DEATH STRANDING』は十分に評価されたゲームと言えるのではないでしょうか。
結局、『DEATH STRANDING』は勝てたのか?
この文章の中ごろにも書きましたが、『DEATH STRANDING』は商業的に成功して欲しい。と私は願っていました。小島監督の次回作をまた遊びたいというのもありますが、優れたクリエーターは、個人であってもメジャー企業と同じ土俵で戦えるということを顕示してほしいと望んでいました。
結果は以下のインタビューで語られています。
ーーーセールス面ではいかがですか?
「ここまでいけば黒字」というラインは全然超えているので、開発費の回収も含めて「成功」と言っていい数字だと思います。これからPC版もリリースしますし、次に向けて準備ができるだけの利益は確保できていますから、心配はいらないですよ。
(上記記事より抜粋)
私はただ『DEATH STRANDING』発売まで経緯をストーリーとして勝手に消費してゲームを楽しんだ、だけなんですがこのインタビューを見たときには駆け出したくなるぐらい嬉しかったです。
5年に渡る思い出をダラダラと書いてしまいましたが、小島監督の情報発信の巧みさや、抽象的概念を扱う能力の高さからか考えると「2015年を起点とする『DEATH STRANDING』にまつわるストーリー」は始めからではないにしろ、私が応援しようと思い始めた2016年頃からは、小島監督の書いた絵だったのではないかと思ったりなんかして。
次は『DEATH STRANDING』の内容について書いていければと思います。
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