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記事や投稿、作品について思ったことなど
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2023年10月の記事一覧

小川哲著『君が手にするはずだった黄金について』を読んでの感想

表題作の『君が手にするはずだった黄金について』がかなり刺さりました。私にはなんやかんやあって神を自称するに至った同級生がいるのですが、そのなんやかんやにはこの話に出てきた片桐のように、自分の価値を外からの認識に頼り過ぎたというか、外に意識が向き過ぎていたことが関係してるんじゃないかと思ったりしています。 彼は、薬効の怪しい歯磨き粉を同級生に売りつけようとしたり、イカしたホテルライフ()をインスタに投稿したり、神を名乗ったりしていて、控えめにいって誤認で飯を食っているわけです

共助の社会とマシンガンズ西堀さんの話

本日の日経新聞で、日本のセーフティネットについて考え直す短期連載の2回目が載っていました。私なりに内容をまとめると、「現代の分断社会から、セーフティネットを充実させることで連帯共助の社会に移行するのだ」という主張に見えました。著者は以下のように書いていらっしゃるので、上記の記事は最終的な落としどころの提示と言うよりも、社会はどうあるべきかの色合いが強いように感じました。 ただ、あるべき論を戦わせようというのであれば、分断から共助へという流れに反対はし辛いのでは?と思いますけ

「ゆるブラック」と言う言葉に思ったことなど

「ゆるブラック」と言うのは、仕事が緩すぎて成長機会を見いだせない職場を表す言葉のようです。我々は言葉だけで物事を理解するわけではありませんが、このように新しい言葉が生まれることで、新しい問題意識が形成されることが多々あります。 『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』という映画の公開が2009年で、2chにスレッドが経ったのは2007年だと考えると、00年代の後半あたりには「ブラック企業」という言葉は一般に認知されていたのだと思います。そして、上記記事によ

小川哲著『ユートロニカのこちら側』を読んで

ニートという生き方にも、向き不向きがあると私は感じています。私は比較的ニートに向いているので、社会に出てから特に理由もなく合計3年半ほど働かず、学ばず、何かを修めることもなく過ごしていたことがあります。 私は他人とコミュニケーションすることで疲れやすいタイプです。例えば、ある言葉に対して持っている概念が違うからそこからすり合わせするのは面倒くさいなぁと感じたり、この人の見ている世界ではそうなのであろうなと思って何も言えなくなったり、私の言い方が悪く伝わってないなぁとか、さっ

2023年9月に読んだ本まとめ

9月は何と言っても、17年振りに発売された百鬼夜行シリーズ新作『鵼の碑』が非常に印象に残りました。いやぁ、最高でしたよ。さらに、伊坂幸太郎さんの殺し屋シリーズの最新作『777 トリプルセブン』もエンタメしていてよかったです。10月には小川哲さんの『君が手にするはずだった黄金について』が発刊されるので非常に楽しみです。 また、今週末で試験勉強にひと段落が付くので実用書や、人文書なんかも読んでいきたいところです。読書の秋なので。 文芸書京極 夏彦著『邪魅の雫』 陰摩羅鬼もそ