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技術士の資格を活かすということ

私は大学時代に応用地質学の集中講義を受講して、そこで地質コンサルから来られた先生から「就職して経験を積んだら技術士応用理学部門の資格を取ってください」と勧められました。

石油開発会社に入社して、長く続く海外赴任や長期海外出張の合間を利用して、技術士補試験 (技術士一次試験)、技術士応用理学部門二次試験、技術士総合技術監理部門二次試験を受けて、登録して技術士となりました。

技術者のキャリアパスとしては博士を目指す道もあると思います。
社内には留学制度があり、業務に関連する分野について研究を深め、将来の業務に役立てることを目的に、修士や博士をとるための海外留学を補助する制度があります。

特に博士は、ある分野を深く研究し、その分野に関する研究内容や知見が最高レベルの水準にあること、また最高水準の科学的研究を遂行し、その結果をまとめて成果として公表できる能力を有することが審査によって認められた称号だと思います。

石油開発業界では博士も多く活躍しています。

私自身は、ある分野を深く研究するよりも、現場で操業に深く携わりながら、石油開発に関わる様々な問題や課題を抽出し、それらを解決するために必要なスタディを行ったり、モデルを構築したり、適応できる技術を開発したり、探したり、応用したり、提案・指導する道を選びました。そして長い海外勤務の中でこのような業務を中心に行ってきました。

海外赴任で現場に行くタイミングもうまく私の希望にマッチしていたことも幸いしました。

技術士は技術士法において、「登録を受け、技術士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律においてその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう」と定められています。

まさに私がやりたいと思った業務、やってきた業務は、技術士がカバーすべき内容だったと思います。

技術士は博士とは違って、研究や研究成果をまとめた論文ではなく、技術士試験によって科学技術に関する高度な知識、応用能力および高い技術者倫理を備えているかどうかが試されます。

自分が関与した業務分野以外の知識は試験のために多少整理しなおしたり、補充したりする必要がありました。もちろん、試験で問われるということはその分野の技術士にとっては必要な基本的知識の一部なのだとも言えます。私にとっては知識を整理し、広げるいい機会でした。

ただ、技術士試験の核心は、論文試験と口頭試験によって、過去の自分が行った業務経験を示すことによって、あるいは、試験問題で設定されるある条件や想定の中で課題を把握し問題を解決する能力を示すことによって、技術士としての能力を証明することだと思います。

技術士試験は自分が技術士のレベルに達しているかどうかを試す機会として、自分にとっては良い指標になったと思います。

また、技術士総合技術監理部門では業務全体を俯瞰した技術をベースにしたマネージメント能力が問われます。これらも私が行ってきた業務と非常に親和性の高いものでした。この分野でも自分のレベルを確かめることができてよかったと思います。

ただし、現在のところ、石油開発業界では技術士についての認知度はあまり高いと言えませんし、海外勤務では技術士を明示して働く必要性はほとんどありません。

今後、日本に帰任して、あるいは第二の仕事人生を考えたときに、技術士の資格をもっと活かすことも考えていきたいと思っています。

私は技術士の資格を、自分の能力を試す指標のように自分のためにとったところもありますが、本来は、自分のためにというよりも、私に仕事を依頼する人のために、私と一緒に仕事をする人のために、保持し活用すべき資格だと思います。

技術士法の精神に基づいて、信用失墜行為を行わない、仕事相手の秘密を守る、公共の福祉に質する、そして常に技術士としての資質の向上に努めていくという縛りを自らに与え、安心して私に仕事を頼んだり、一緒に仕事をしたりしてもらえるように活用していけたらと思います。

いずれにしろ、まずは資格よりもなによりも、私自身そのマインドセットを徹底することが重要ですね。

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