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技術士総合技術監理部門のリテラシー

技術士の資格は広く科学技術の分野をカバーしているため、21の専門分野に分かれています。さらに技術士の資格を取るための技術士第二次試験では部門ごとに複数の選択科目が設定されています。

公益社団法人日本技術士会 技術士制度について (令和4年4月)

https://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1680_2.pdf

例えば 「17 応用理学部門」の中には「17-1 物理及び化学」、「17-2 地球物理及び地球化学」、「17-3 地質」の3つの選択科目が設定されています。

21の専門分野の中で「21 総合技術監理部門」は試験も含めて他の専門部門とは違う特殊な部門です。上記日本技術士会の「技術士制度について」には「総合技術監理部門」の必須科目として以下のような記載があります。


必須科目〔択一式;試験時間/2時間 及び 記述式;試験時間/3時間30分〕
総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力
⇒ 必須科目の内容は、次のⅰ~ⅴの事項について問う問題です。
ⅰ 安全管理、ⅱ 社会環境との調和、ⅲ 経済性(品質、コスト及び生産性)、ⅳ 情報管理、ⅴ 人的資源管理
技術士としての実務経験のような、高度かつ十分な実務経験を通じて修得される照査能力等に加え、業務全体を俯瞰し、業務の効率性、安全確保、リスク低減、品質確保、外部環境への影響管理、組織管理等の多様な視点から総合的な分析、評価を行い、これに基づき論理的かつ合理的に企画、計画、設計、実施、進捗管理、維持管理等を行う能力とともに、万一の事故等の新たな課題に対し、拡大防止、迅速な処理等の具体的かつ実現可能な対応策を企画立案する能力が問われます。


他の専門部門の必須科目については「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの、とシンプルに書かれているのに比べ、まったく別な能力が求められていることがわかります。

ちなみに、総合技術監理部門の選択科目は、他の技術部門の必須科目と選択科目を合わせたものとなります。他の部門に合格する能力に加えて、総合技術部門の必須科目に合格する能力が必要となります。

総合技術監理部門の必須科目には他の部門の試験にはない択一式の問題が含まれています。これについては総合技術監理に必須な5つの管理技術 (ⅰ 安全管理、ⅱ 社会環境との調和、ⅲ 経済性(品質、コスト及び生産性)、ⅳ 情報管理、ⅴ 人的資源管理) に関するキーワードを理解し、記憶することが必要です。人によっては聞きなれない言葉もあると思いますので、苦労する面もあるかと思いますが、勉強の仕方にはそれほど悩まないと思います。

一方、記述式問題は、私の場合は発想の転換にやや苦労しました。

私を含め、総合技術監理部門を目指す多くの方は、すでに他の技術部門の技術士、または技術士を目指せるレベルの専門能力のある技術者だと思います。そのため、私の場合、ついつい自分の専門部門の技術で課題を解決しようという発想になってしまうのです。

また、総合技術監理には5つの管理技術 について、これらを使いこなすということを意識するあまり、5つの管理技術のバランスや、重点項目、トレードオフなどに目が行き届かなかったのです。

技術の仕事では、いろいろなレベルで部分最適化と全体最適化が必要となる局面がありますが、総合技術監理部門の試験に関して言えば、5つの管理技術の部分最適化とそれを統合しバランスを考える全体最適化に意識が向き、組織やプロジェクト全体としての生産性や持続性の向上、リスクの低減・回避、機会創出を考える必要があったのです。

この点がしっかり根づいてくると、どんな記述式問題でも、口頭試験の質問でもあまり答えに苦労しない感覚が生まれてきました。総合技術監理のリテラシーが身についてきたといえるのかもしれません。

また、総合技術監理のリテラシーが身についてくると、自然と業務の中でもその発想が出てきて、私にとっては非常に良かったと思っています。

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