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技術士応用理学部門受験と私の対策

大学の時、応用地質学の集中講義で地質コンサルタントの先生の授業を受けたことがあります。その先生は当たり前のように、就職して経験を積んだら技術士応用理学部門の資格を取ってくださいと話されていました。

地質コンサルタント業界では当たり前の資格なのかもしれません。授業を受けた当時、私はまだどんな職業を目指すかも決めていませんでしたが、社会人になったら技術士を目指すものなのだと漠然と思っていました。

その後石油業界に入り、周りを見回してみると、少なくとも社内ではほとんど技術士とは縁がない世界だということがわかりました。なので、自分でいろいろ本などを買ってきて、技術士になるためのプロセスや試験の内容などについて調べて受験準備を始めました。

一次試験は応用理学部門を選択しました。応用理学部門は 物理及び化学 / 地球物理及び地球化学 / 地質 が含まれています。地質、地球物理、地球化学なら大学でも社会人になってからも多少は関係していたので何とかなるかもしれません。
しかし、大学生レベルの物理や化学と言われると全く自信がありませんでした。なので、とりあえず数日間にわたって高校の物理と化学の参考書に目を通しました。久しぶりに週末図書館に通って、学生気分 (学生の時は図書館で勉強なんてしませんでしたが) を味わいました。

二次試験になると、各部門の中に選択科目というものがあります。応用理学部門には、「物理及び化学」、「地球物理及び地球化学」、「地質」の3つの選択科目があります。私の専門に近い「地質」が選べますので、部門全般にわたる必須科目があるとはいっても、選択科目が選べる分、幾分負担感も少ないかなと感じていました。

選択科目の「地質」の部分を読みますと、以下のような内容を含むと書かれています。

「土木地質(道路、鉄道、ダム、トンネル、地盤等)、資源地質(鉱物資源、燃料資源等)、斜面災害地質、環境地質(水理、水文、地下水等)、情報地質(リモートセンシング、地理情報システム等)、地熱及び温泉並びに防災、応用鉱物、古生物、遺跡調査その他の地質の応用に関する事項物理探査、地化学探査、試すいその他の探査の応用地質学的解釈に関する事項」

選択科目の「地質」には資源地質も含まれていましたので、石油関係でも通用しそうであるということはわかりました。ただ、過去問題をみてみると、土木地質、環境地質、物理探査などの問題も含まれていて、これらを全く避けては通れそうにないということがわかりました。したがって、ちょっと幅広く勉強しておこうと、共立出版の「応用地学ノート」という本を購入して一読しました。

二次試験は筆記量が多くて大変ですが、とにかく問題の題意を正しく理解すること、そして覚えている知識を吐き出そうとするよりも、自分の専門 (私の場合、資源地質、石油地質、石油探査技術等) と関連づけて、技術士にふさわしい立場でなるべく自分の土俵で回答するようにしました。

専門とは違う土俵で回答用紙を埋めるのはなかなか厳しいものがありますが、自分の専門に関連付けることができれば、意外にすらすら解答用紙が埋められます。いずれにしろ、題意から外れないように回答していくことが重要だと思います。

たとえば、選択科目IIIで、「土木施設や建築物の工事等で設計とは異なる地盤状況が確認され、工事の中断あるいはやり直しが必要になることがある」という問題の前提文があったとします。
「土木施設や建築物の工事」は私にとってはあまりなじみがありませんが、そのあとに「等」ということばがあるので、例えば「石油井の掘削中に掘削・仕上計画時とは異なる地質状況が確認され、掘削の中断あるいはやり直しが必要になることがある」と読み替えたとしても、その後の問題で出題者が本当に聞きたい、技術士としての問題解決能力及び課題遂行能力を示すことはできますし、問われている題意を外さずに回答できると考えました。

私はこのようにして自分の回答しやすい土俵になるべく近づけて回答を試みました。題意に沿っているかどうかはあくまでも自己責任で気を付けて判断してください。

口頭試験の準備では、想定問答のようなものを事細かに一言一句覚えるのではなく、「こんな質問には少なくともこのことだけは言いたい」ということを、キーワード的に書き出して眺められるようにしました。結局書き出しただけでほとんど見直すことはしませんでしたが、書き出すだけでも結構頭の整理にはなるものです。

自分のアピールしたい業務経験は、社内でも社外のシンポジウム等でも何度も発表していて体にすっかり染みついていたので、むしろ、技術士の義務とか責務とか、技術士らしい視点での答え方だとか、ロジックだとか、そんなことを気にしながら、頭の中でいろいろな質問を出してはそれに対して頭の中で答えることを繰り返していました。

アピールしたい業務経験については、これまでも技術的な自問自答を何度も繰り返し、周りの方からの質問、疑問、反論を受け、荒波を乗り越えながら実施し、達成してきたものだと思いますので、愛着とプライドをもって、今まで通り相手からの質問に的確に応えられれば十分だと思います。

もし自分の業務経験があまりそのような批評にさらされる機会がなかったのであれば、改めて他人に聞いてもらったり、自問自答したりしながら、あらゆる疑問に答えられそうか、答えられないとしたら今後何をすべきか整理しておくことをお勧めします。ロジックが成り立っているかどうかが非常に重要だと思います。

どんな試験にも人には向き不向きがあると思います。アドリブがある程度効く、記憶にあまり頼る必要のない技術士の記述式の試験は、私にとっては向いていたのかもしれません。一方で当時あった必須科目の択一式問題はちょっと苦手でした。

石油会社で、特に海外赴任してしまうと、技術士の資格を明示する機会はほとんどありませんが、幸い私が技術士の資格を取る少し前から、社内で資格報奨金制度みたいなものが始まって、技術士資格が最上位の資格としてリストされたこと、その後社内でも資源工学部門などで技術士をとる人が出てきて認知度が高まってきたことなど、モチベーションが上がる動きもありました。

大学時代の友人には地質コンサルなどで技術士資格をとってばりばり活躍している人もいましたし、業界は違っても、「応用理学部門」での自分の専門能力のレベルを確認してみたいという気持ちもありました。いずれにしろ、自己研鑽のためのモチベーション、そして年齢が上がって自分の業務と関連が深くなってきた総合技術監理部門取得への一歩につながったと思います。

技術士は資質向上の責務がありますので、今後も自己研鑽を重ねながら、世の中の役に立つよう努力していこうと思います。

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