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ふくしま移住記録#6 |ざわつきと、思い通りにならない

部屋の明かりを消したとき、静寂と暗闇の中で寝ることが久しぶりだったことに気づく。ベットは朝起きたままの形で、布団がめくれ上がっている。

そろりと入り、目をつぶると、心臓の存在をこれでもかというくらいに感じる。鼓動が聞こえるわけでもなく、締め付けられるわけでもなく、ただ守ってあげたくなるように、心臓がそこにあった。次第にみぞおちまで冷たくなっていく。空腹で寝ることが、ひどく寂しく感じる。

いつもはすぐ寝てしまうから、5分10分寝つけないだけで心配になる。
段々と、森の中に1人取りのこされたような、誰にも見つけてもらえない迷子になったように思う。こういう時は深呼吸でもすれば良いのだろうか。
息とともに不安を吐き出す。そうして今後は耳に神経を集中させる。

風が木々を揺らしている。
時計の針の音が聞こえる。
静寂である音が聞こえる。
だんだんと、心臓とともに気持ちが落ち着いてくる。

最初のざわつきは、心音だったのだと思い始める。心の音と書いて、心音。
ここ最近のわたしは、仕事も生活も、意味があるかどうか、本当に必要なのだろうかばかりを考えていた。これは必要で、これは必要ない。
地方に住み、幸せな瞬間が積み重なる一方で、同時に期待とギャップにも苦しんでいた。全体の数%しか占めないその不安は、認識し始めると考えの大部分を覆ってしまう。

わたしはかなり遠回りをする性格だ。誰かに言われても、実感として湧かなければ(仮に自分をだましだましだとしても)、自分の行動を変えることがなかなかできない。大胆に突き進んでいくのに、壁にぶつかった時にあれこれ悩み、助言をもらい、そうなのだろうかと思いながらも引き続き悩み続け、ある日突然目が覚め、一気に突破する。自分の中で革命が繰り返されている気持ちだが、それがわたしなのだと思う。

これからは心音、という感覚を手に入れたので、耳を澄ましていこう。

この日の夜に食べたメレンゲクッキー

朝はカーテンを開けていたので、光と共に目が覚めた。
いつもと変わらない朝なのに、なんて平和なんだと、そして私は私を信じようという思いが再び沸き起こる。やっぱり光とともに動く人間でありたいと強く願う。この部屋私1人だけなのに、ささやかな癒しを感じていた。

冷蔵庫に残っていたグリーンキウイを思い出す。
キウイを毎日食べていたら、2週間で2キロ痩せたおばあちゃんの話をきいて、迂闊にも手を出してしまった。食べて痩せる、そんなものはこの世に存在するはずがないのに。

でも今は温かいものを喉奥に流してあげたい。いつもより1パック多めに黒豆茶を入れる。香ばしい匂いが一段と、心音を安らげる。

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