大学受験の時の心構えと今に通じている考え方
こんにちは、メモリーアスリートの平田です。
この記事でも書いたように、僕の価値観や考え方は小学校~高校生の時期に確立されていて、その中でも中学受験と大学受験は大きなきっかけだったように思います。
受験によって「目標があり、それに向かってどう立ち向かえば良いか」というメソッドを体得し、その貯金でメモリースポーツ世界一になれたのかなと思っています。
そこで、大学受験終了直後に後輩向けに書いた「合格体験記」を8年ぶりにPCの奥底から掘り返してみました。その中から当時の心構えと今に通じている考え方をまとめていきます。
※今回は大学受験の時の思い出に限定しています。
体験記自体は45000字以上の超大作でビビったのですが、ほとんどが高校の後輩向けに書いた「〇〇先生の授業をちゃんと聞きなさいな」か「各科目のテクニカルなアドバイス」だったので、「これは今の自分、特にメモリースポーツでも使っている考え方だなぁ」という一般化された項目のみに絞ってお伝えします。
受験の結果
まずは自己紹介と簡単な受験の結果から。
中学受験で渋渋に合格し、大学受験は一橋大学商学部に合格しました。
大学進学後にメモリースポーツという記憶力を競い合う競技を始め、在学中に世界ランク1位になりました。
僕がメモリースポーツで活躍できたのは、「高い目標達成能力」が備わっていたからだと感じています。元々の記憶力のおかげではないです。
目標を正しく決めて、現状の自分とのギャップを把握し、そのギャップを埋める戦略を立てて、愚直に努力する力。受験のプロセスでこれを獲得し、そのおかげで受験もメモリースポーツもある程度成功できました。
特に大学受験では塾や予備校に一切通っておらず、自分で勉強法を考えるところからやったおかげで、遠回りに見えてこの能力を獲得することができました。
一見すると「学力や記憶力があるからメモリースポーツも強いんでしょ」と思われがちなのですが、これは疑似相関だと思っていて、「目標達成能力が高い人は受験もメモリースポーツも強い」が真なのかなという論を持っています。
目標達成能力とは何か、どうやって高めていくのか、というのが今回の記事の主なポイントです。
僕は2016年に大学受験をしているのでセンター試験時代ですし、うろ覚えなところもあるので、現代の受験事情とは異なる部分が多々あるかと思いますがご了承ください。
受験の成績
センター
世界史 94
倫政 87
国語 195 (50/50/45/50)
英語 筆記198 リスニング48
化学基礎 50
地学基礎 50
数学1A 95
数学2B 76
合計圧縮 844/900
私立
センター利用:早稲田商、明治商、立教経営
立教経営
慶應商
国立
前期:一橋商
で全部合格して一橋商に進学です。
数学が少し失敗していますが、概ねうまくいったと思います。
二次の得点は741点で、合格最低点+147点でした。
合格に必要だと考えていた2つの力
受験生時代に意識して鍛えていた2つの力があります。
それは「客観視」と「1回のチャンスをものにする力」です。
客観視
客観視は「本番で最大限のアウトプットを出すための力」として捉えていました。
勉強をしていくにあたって、勉強全体・受験全体から俯瞰して見ることで、自分勝手な勉強をして見当違いな方向に行かないように意識していました。
【勉強方法の客観視】
勉強方法も客観視し、まずは全て疑うようにしていました。
巷で良いと言われている勉強法があったとしても、まずは疑い、「なぜそれが良いのか?」「なぜ自分はそれをやった方が良いのか?」ということを考え、自分で納得してから実践するようにしていました。
例えば、英語の学習で「単語帳を何周もすべき」と言われがちですが、いきなりそれを鵜呑みして単語帳をやるのではなく、「受験に出てくる英語は何を問われているのか?」「その英語で点数を取るために単語力は今の自分に必要なのか?」「その練習として単語帳を何周もするというのは効率的なのか?」と考えていました。
その結果、僕は自分の英語力の特徴を振り返って、受験まで単語帳はほとんど触らないという戦略を取っていました。
このような自問自答を全科目、全単元で行いながら学習を進めていました。目的を常に意識し、「何となくみんなが良いと言っているから」といった理由ではやらないようにしていました。
これを自分で考えたかったから塾に行かなかったというのもあります。
目的と目標を意識する、定説に踊らされない、勉強方法から俯瞰して考える、と言った点はメモリースポーツの学習にも大きく役立ったと思います。
【答案作成の客観視】
答案を作成する際も客観性を意識していました。
受験において、自分が書いた答案を自分が採点することはありません。
受験問題の作成者も、答案の採点者も他人です。なので「自分の答案は他人にどう見えているか?」「自分が出題者だったらここで何を問いたいか?」「自分が大学側だったら、どんな受験生を合格させたいか?」というのを意識していました。
国語の記述問題は、単に書きたいことを書くのではなく、出題の意図を考え、傍線部に忠実に答える。数学は自分勝手に式変形を突っ走るのではなく、まずは問題をよく読んで、聞かれている本質を考える。採点者が論理を追えるような展開を客観的に書く。
しかも国語は引用元の文章を書いた筆者と出題者も異なっています。
「筆者が言いたいことはおそらくこれだけど、そのまま書くと問題で聞かれていることとはズレるから、出題者の意図をくみ取ってこう書こう」という風に考えていました。
また、大学のアドミッションポリシーを読み、「この大学はこういう人を求めているんだな、ということは受験でこういう能力を持っている人を取りたいはずだから、その能力が上がるように勉強するし、その能力をアピールできるような答案にしたいな」と思考していました。
これらは全て客観視によるものです。
この客観性を意識して本番で最大限のアウトプットができるように勉強していました。
ただ、どれだけこの力を高めても、本番一発勝負の入試において、その日に発揮しきれなければ水の泡です。
なので、僕は「学力を高める」以外に「本番で確実に力を発揮する」ことも同じくらい重要視して受験に臨んでいました。
1回のチャンスをものにする力
客観視を駆使して学力を高めれば高めるほど、「本番でこの力を発揮できなかったらどうしよう」という不安がありました。
そこで、どうやったら一発勝負で力を発揮できるかというのを研究し、自分の体・脳に合ったやり方を試行錯誤しながら見つけていきました。
【本番に強いのも実力】
本番を運にしたくなかったし、「本番に強い」というのも努力で身に着けられると思っています。
例えば「本番前日に緊張して夜寝られない」という事象に対しても、事前に対策をして、自分の体質にあった方法を取ることはできると思います。そして、この練習はいきなり入試直前にやっても意味が無いので、中高6年間かけて徐々に試していきました。いわば「疑似本番」の機会をなるべくたくさん作り、本番だと思って本気で対策をして、ルーティンを作り上げました。
この疑似本番は模試や定期テストが当てはまりますが、一番大きいのは部活やスポーツなどの大会だと思います。僕自身も部活の本番でどう緊張せず立ち向かうかということを体得し、それをそのまま受験に当てはめました。
・寝られない時は、自分の呼吸に集中し、足の先から鉛がついてどんどん布団にめり込んでいく想像をして、それができたら徐々に頭まで進んでいくと、自然と寝られる。
・それでも寝られない時は、「目をつむっているだけで寝るのと同じ効果がある」という言説を信じて無心で目をつむる。
・テスト開始1分前に手を合わせて指をくるくる回すと集中できる。
・不安になった時は成功した自分の姿を想像する。
など、上記のルーティンを作ることができました。
また、高校の部活でクイズ研究会に入っていたのですが、高2の高校生クイズで全国大会に行き、大量のテレビカメラの前で「1問でも間違えたら敗退」の凄まじい緊張感の中クイズを行ったおかげで、感覚が麻痺して、以降「あの時の緊張に比べれば今は全然大丈夫だ」と思えて本番に緊張しなくなりました。
メモリースポーツでも同様で、生放送で記憶のチャレンジをするようになると、普段の大会や配信では全然緊張しなくなるので、この学びは大きかったように思えます。
また、本番のリスクを最小限に留めたかったので、もし当日右手を怪我した時のために左手で文字を書く練習までしていました。
ここまでやるかどうかはさておき、このくらい本気で「本番に備える」という意識はあった方が良いかと思います。
【本番で力を発揮するための練習での心構え】
ここまで対策したとしても、本番で100%の力を発揮するのは難しいです。それを踏まえた上で、110%の目標を設定したり、練習では110%の時間的負荷・難易度的負荷をかけてやるということを意識していました。
過去問も時間を少し短めに設定する、センターの本試だけでなく追試も過去問を解く、自分が取りたい点数の110%を本気で狙いに行く、などです。
これはメモリースポーツでも全く同じで、全十種目をやるとどうしてもどれかは崩れるので、目標時点では少し高めに設定し、練習ではそれを何度も出せるようにしておきます。
【ケアレスミスをケアレスミスと思わない】
自分はケアレスミスが非常に少ない受験生だったように思います。
計算ミス、問題文の読み違え、マークミスなどはほとんど起こしませんでした。
ケアレスミスを「偶然だ」「仕方ない」「ケアレスミスだ」と捉えているようでは治りません。
もしこういった「簡単なミス」「意識すれば治るミス」が起きたら、本気でどうやったら無くせるか工夫して、考えて、練習で実行して、100回中100回起こさないように意識します。
それが練習で意識的にできれば、本番では無意識にミスをしないで済みます。意識を無意識に昇華しましょう。
これらの項目を意識することによって、本番1回のチャンスをものにする力を身に着け、合格を勝ち取ることができたと考えています。
実際、センター試験も二次試験も模試や過去問を含めて過去最高の出来で終わることができました。
目標の立て方
目標を決めて、ギャップを客観視によって測って、客観的に有効な戦略を立てて、あとはひたすらやり、本番で力を発揮する努力をすれば良いです。
このプロセスの中でも特に目標の立て方は重要だと思っています。
「達成したらめちゃくちゃどうしようもなく嬉しいもの」が目標です。
ちょっと嬉しいなぁ、や、できたらいいなぁレベルではなく、めちゃくちゃ嬉しいもの、です。
これは高校の時に先生にも言われたのですが、例えば志望校を決める時「全ての大学に行けると言われた時、自分が行きたいと選ぶ学校」が第一志望です。先に現実性や妥協で決めない。
そしてその目標を決めたら、達成した時の自分の喜んでいる姿を常に想像しましょう。毎日想像します。僕は通学時間の歩いている時や、お風呂に入っている時、ふとした隙間時間に常にこの妄想をしていました。
今思えば、「受かっている漠然とした想像」より「受かって合格掲示板を見て喜んでいる自分を想像」したのが良かったなと思っています。
これもメモリースポーツでも同じで、自己ベストを達成してガッツポーズをしている自分を想像してからプレイに臨むようにしています。
目標はより達成を現実的にするために、相対的ではなく絶対的なものが良いでしょう。
結局受験は他者も含めて何位だと受かるというものですが、目標設定時点では不確定要素が多いので「何位を目指す」や定期テストで「平均点を目指す」などの他者が介在する目標では、ブレてしまいます。
絶対的なものとして「何点を取る」と決めて、その目標に向かって走った方が確固たるものになります。
まずは全体で取りたい合計点を決めて、そこから逆算して、配分していきます。全体で何点を取りたい、そのために各科目で何点が必要、そのために各単元でどのくらいの理解度が必要、とやるべきことが明確になっていきます。
また、本番で取りたい点数が決まったら、そこから逆算して、練習での取るべき点数も決めていきます。この模試で何点、定期テストで何点、小テストで何点。こうやってブレイクダウンしていきましょう。
自分が本気で喜ぶ目標を決め、それを絶対値に落とし込んで適切にブレイクダウンすることができれば、後はやるだけです。
この目標は常に意識しましょう。
何点が目標なのか、今の自分は何点のレベルなのか、この差分は何によって生じているのか、科目ごと、単元ごとにブレイクダウンするとそれぞれどのくらい差分があるのか、どうやっていつまでに埋めようとしているのか、これらは常に意識しています。
いつ聞かれても即答できる状態でなければ、本気の受験生ではないなと思います。
メモリースポーツでもこの状態でした。一時期は十種競技の複雑なスコアの計算も自然と覚えており、何も見なくても「あと何桁覚えられるようになったら何点上がるから世界ランク何位だな」と言える状態になっていました。
僕はこういった状態を「仕上がっている」と表現するんだと思います。
仕上がっている受験生・選手は強いです。並大抵のことでは折れず、高い目標を達成できるんだと思っています。
もちろん、この仕上がった状態に加えて、先述した「本番で力を発揮する能力」も鍛えておけば完璧です。
その他意識していたこと
あとは体系立っていないですが、いくつか意識しておくべきマインドや心構えが残っていたので列挙します。
・分からない場所の最前線を探す
問題への向き合い方として意識していたのはこれです。
数学でも、国語でも、英語でも、どんな難問でも全てが分からない訳ではなく、どこかから分からなくなるという分岐点があるはずです。
この分からない場所の最前線を探していき、自分が躓いている箇所を特定し、解決してできることを増やしていっていました。
例えば古文の読解をしていて、最初の1文は何を言っているが分かるが、途中で何の話か分からなくなる時が来ると思います。
ということはどこかで分からない場所の境界線があるので、そこまで読み解いていき、分からない場所を精読していきます。
それでも分からない場合はそこの知識が足りなかったということなので、勉強するべき部分はその知識です。
基本的に問題は解かせるためにあるもので、解けるようになっています。なので、分からない場所の最前線を突き止め続け、その境界線を進んでいけば、おのずと必要な問題は解けるようになっていきます。
・人の2倍の質で3倍の量をこなす
質と量どっちが大事か、という問いはあまり意味が無く、どっちも大事だと考えています。
ただ、勉強法や受験業界にだけ詳しくて、実際に問題が解けない頭でっかちになっては本末転倒だなと思い、意識的に量は増やすようにしていました。
他の人より高い質で、圧倒的に量をこなすという意識でした。
うだうだ言う前に、悩む前にまずやる。
もちろんその前提として適切な目標、戦略は立てた上ですが。
やる、とにかくやる。
高3の夏休みは40日間で581時間勉強していました。
・再現性を意識する。
問題を解けた時、それが偶然できたのか、意識してできたのかで同じ点数でも全く意味が異なります。
次も、入試本番でもその問題が解けるのかが変わってくるからです。
自分が根拠を持って答えたのであれば、再現性があり、本番でも答えることができると思います。この知識、論理の量を増やしていくイメージで勉強していました。
自分がいつどんな状態でも答えられる再現性を持つこと。
この判別をするためにも、チャレンジの回数は多くした方が良いと思います。捨て問を作ってしまったり、諦めてしまっては、「そもそもそれを自分が解くことができるのか」が分からなくなってしまい、対策のしようがありません。
多くの問題に挑戦して、自分の限界を探る。その限界を超えていき、「どんな状態でも答えられる」という再現性を高めるのが重要と思います。
最後に
これらのことを意識していたら、大学に無事合格することができました。
そしていつしかこれが無意識に昇華され、メモリースポーツでも活躍することができました。
文章にするとストイックな人、なように見えますが、自分ではそうでもないかなと思います。ジャンルによってはサボるし、やる気も出ないし、全般に対してストイックに頑張れるわけではありません。
ではなぜ受験とメモリースポーツはうまくいったのかと自分で振り返ると、「楽しんでいたから」に尽きると思います。
夢中、熱中に勝るものはありません。
僕はなぜか塾無しで受験に挑むということを楽しめていて、高い点数を取ること、勉強の中で好奇心を満たしていくこと、自分が成長していくことに喜びを感じていました。
メモリースポーツも同じです。
好きだし、楽しいからたくさんやるし、自然と高い目標を掲げて突き進めるのかなと思っています。
「努力しないと」と思っている時点で、夢中にやっている人に追いつくのはかなり難しいと思います。
なぜ受験を楽しめるようになっていたのかは複合的な要因があるし、個人差があるのでここでは書きませんが、まずは自分の好きな科目でも、単元でも良いので見つけて、磨くのが良いのかなと思っています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
需要があれば各科目で意識していたことや、中学受験についても書こうと思います。